マッチングアプリで、マッチングしたけれど会えなかった人のこと

会《わ》なかったのではない。
会《え》なかったのだ。
あえて
そう表現したい。
会いたかったから。。。


その日の前日、私は夕方から喉が痛くなり、夜になって熱が出てきた。
何年も風邪もひかず、インフルエンザや他のウイルス性の病気がどんなに大流行しても、予防接種もしなくても、うつることなど無かった私が、今年は一体どうしたというのだろう。。。

熱があったその日、18才も年下の30代の男性から《いいね》が送られてきた。
プロフィール写真の1枚目は「若っっ!!!」と思わず声に出して言ってしまうような本人の写真。
2枚目は「え、1枚目と同一人物?」と思うような、ちょっと顔の印象も違った写真だった。
あとはサッカーや猫や魚の写真。
私が好きなドラゴンボールやスターウォーズが好きなようだった。
自己紹介文は、ラフで爽やかな印象。

印象は悪くはないけど、どういうつもりで《いいね》してきたんだろう……?

どのようなやりとりをして、どのように去っていくのかが気になり、マッチングしてみた。

当日の夕方にすぐにメッセージが届いた。
『こんばんは♪
初めまして。
Sっていいます。
よろしくお願いします』

私はM君のときと似たような返信を送ってみた。

「こんばんは。
はじめまして。
すごく年上なのに、どうして《いいね》してくれたのかなぁ?と思って、いいね のお返ししてみました」

『年上のかたが好みなのでイイネしちゃいました。
年下過ぎますか?』

なんだか聞いたことがあるようなフレーズだ。

「そうなんですね。私は若い男性とやりとり出来るなんて嬉しいです」

『なので是非仲良くしてくれると嬉しいです。
なんて呼べばいいですか?』

私の返信にテンポ良くまた返信をくれる。
そのテンポも、言葉遣いも、使う絵文字も、M君にちょっと似ていた。

熱が下がらなかった私は、早々に寝るつもりだったので、
『なんて呼べば……』に返信はしないで寝た。

具合が悪かったはずなのに、前日はなぜか全く眠れなかった。
というか、またM君のせいで眠れない日々が続いていた。
【理由はこちら

それが、この男の子からの数通のメッセージで、なんだか心が穏やかになり、グッスリと眠ることが出来た。
癒し薬のようだ。。。

次の日の朝、私は、「昨夜は実は熱があったのだけれど、S君からのメッセージのおかげでグッスリ眠れました」と、お礼を言った。
そして、名前に《ちゃん》をつけて呼んで欲しいとお願いした。

体調を心配する返信と
『○○ちゃんって呼びますね。
趣味とかってあります?』
との質問。

それから、すぐに途切れてしまうのだろうと思っていたメッセージのやりとりが、1日に何通も。
そして毎日、続くことになった。

S君は、私が何か質問すると、それを答えた後に必ず
『○○ちゃんは?』と私に質問を返してくる。
こちらの質問に対して、自分の事のみ答えてくる同世代の人達とは違って気が利く。
何より、私の事をちゃんと知ろうとしてくれていることが嬉しかった。
同世代の人達に、いつも思う。
私はインタビュアーでは無い、と。

いつも質問を返されるので、きりがなく会話が続いてしまう。
とにかく文章の丁寧語の使い方と、絵文字の使い方と、返信のテンポが、最初の頃のM君に似ていて心地よかった。

2日後には
『良かったらLINEでやり取りしませんか?
まだ交換は早いかな』と言ってきた。

すぐにLINEを交換したがるのは、詐欺である可能性が高いと聞いてきたし、アプリからもそのような内容のお知らせがあった。
でも、2日間のやりとりは、とても素朴で、不自然なことは何もなかった。
やりとりが多かったせいか、まだ2日しか経っていないのに、もう1週間くらい経ったような気さえした。

それにしても!
18才も年上の人とLINE交換って!
ただ暇なだけなの?
それに、私はまだ自分の写真を見せたこともなかった。

そこも、だ。
同世代の男性は、まずすぐに写真を要求してくる。
そんなに見た目が1番大事?!
どんな美人でも、やり取りでフィーリングが合わない場合もあるでしょう?
まずは会話してみない?と、いつも思う。
S君は、写真も要求してこなければ、仕事が何かも聞いてこない。
そこも最初のM君と同じだった。

「私とやりとりを続けてもいいのかな?
まだ、っていうか?
写真も見せてないけども?」

『○○ちゃんとやりとり続けたいです。
写メ見たいです』

本当に、聞いたことあるフレーズが何度も出てくる。

もちろん、嫌な気はしない。

明日、写真を送るというと

『写真楽しみにしてますね。
おやすみなさい』

次の日、私は、撮った写真の画像を荒く荒くして送ってみた。

「やりとり続けても大丈夫?
やっぱり嫌です とも言いづらいだろうけど」

『やりとり続けたいです』

そんなわけで、私は、マッチングアプリで初めて、
会ってもいない人と3日目にLINEを交換した。
LINEは何と!実名と思われるアカウントだった。

S君の、M君と同じところは、
『○○ちゃんおはようございます』とか
『○○ちゃんお疲れさま』とか、
メッセージに、マメに私の名前を入れてくるところ。
「まさか本当はM君だったりしないよね?」と思ってしまうくらい。
ただ、M君のメッセージは基本的に X のやり方と同じなので、
メッセージの7割くらいに写真が添付されているけれど、S君からは写真が送られてきたことはなかった。
それどころか、若い割にスタンプでごまかすことも無い。
毎朝丁寧に
『○○ちゃんおはよう』と、言葉での挨拶が送られてきた。

3日目くらいに『タメ語で話します?その方が話しやすいかなって』と言ってきた。
そんなことわざわざ確認することでもないのに…
「タメ語で全然良いよ」というと
『ありがとう』と言ってから、
そして、本当に、そこから、タメ口になった。
常識もあるし、本当に丁寧だと思った。

そして、だいたいの家の場所や、仕事先や職種、乗っている車やその色、卒業した学校や実家、なんでも隠さずにあっさりと教えてくれた。

『○○ちゃんからLINE来ないかなーって待ってる』とか
『○○ちゃんとLINEするの楽しくて』などと言ってくれた。
毎晩『また明日ね』と、言ってくれた。

新しい人とマメにメッセージをやり取りすることは、こんなにも楽しくて嬉しい事なのか!!

私はまた、毎日スマホが手放せなくなった。
そして、私のメッセージを未読無視や既読無視をしていたM君の気持ちが、理解出来てしまった。
あの頃に、今の私のように、
新しく楽しくマメにやり取りが出来る女性がいたのだろう。
例えその人と会ったことも無かったとしても。

今、私は、会ったことも無いS君とのやりとりが嬉しすぎて楽しすぎて、
もし、今、同時にM君とやりとりをしていたとしても、(この時期はしていなかった)それをあまり喜べない気がする、と思った。
それこそ、メッセージが届いても未読無視をしてしまいそうだし、
読んでみて、いつものくだらない、拾ったゴミの報告なんかだったりしたら、既読無視をしてしまうだろうと。

M君もきっとこんな気持ちだったんだなぁ…
そりゃあ「会いませんか?」なんて言われても、会いたい気持ちにもならないわ…


S君は本当にマメで
『○○ちゃんお疲れ様。今お仕事終わったよ』と、毎日報告してくれた。
仕事に『お』を付けて
『お仕事』というところがまた良い。

この《お仕事終わったよ》報告メッセージが毎日届くことはとても嬉しいのだけれど、これの危険なところは、届かない日にとても心配になってしまうところだ。
もういつもなら終わっている時間なのに、、、
今日はまだ終わらないの?
それとも、今日はお仕事お休みだったのかな、、、?
いつもよりも1時間も経った頃に『今家に着いたよ』などと言われると
今日はなぜ終わったときにメッセージをくれなかったんだろう?と、どうしても思ってしまう。
仕事が終わってすぐに、急いで行かなければならない用事がある日だってあるだろうし、
『一緒に食事をして帰ろう』と同僚にお誘いを受けることもあるだろうし、
そもそも彼にそんなことを毎日報告する義務は無い。
して欲しいとこちらから頼んだわけでもないし、『そうするね』とか言われたわけでもないし。
自分はそんなメッセージを送ったこともないし、、、

5日も経った頃には、また、もうS君とのやりとりが、すっかり日々の楽しみになってしまっていた。
S君も
『○○ちゃんとLINEするの本当に楽しい』と、何度も言ってくれた。


ただ、私は彼とお付き合いをすることは絶対に無いだろうと思っていた。
一回り年下のM君【こちら】やT君【こちら】とでさえ、昼間に一緒にいたら、周りの人には《年の差カップル》と思われるだろうな、、、と思っていた。
S君と一緒にいたら、親子だと思われてしまうかもしれない。
そんな悲しいことはない。。。
S君は気のあるようなことを言ってくれたり、会いたいと言ってくれるけれど、会ったらこの楽しいやりとりが終わってしまうかも、、、と想像すると、会うこともないままに、ずっと "おはよう" や "おやすみ" だけ言っていることは出来ないものか?と思ったし、S君にもそう伝えた。
彼女が出来たら『もうやめるね』って言ってくれればそれでいいよ、と。

それでも気になり、聞いてみた。

「年上が好みとのことだったけど、今までに年が離れている人とお付き合いした経験あるの?」と。

『一回り以上離れてる人と付き合ったことあるよ』との返事だった。

それは、いつだろう?
18才の時に相手の人が30才とかなら、全然なんてことないことだと思うし、今の私とS君とは状況が違い過ぎる……

それで、更に詳しく聞いてみた。

「いくつのときに、お相手の方はおいくつで、どの位お付き合いしていたのかな?」

すると
『34の時だよ。相手は50歳だった。1年と半年付き合ったよ』

え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!
そんな素敵なこと、あるものなのっっっっ?!!!
16才違い。。。
しかも、つい最近のことじゃないっ!!!
それに、S君がフッたのではなく、フラれたらしい。
いきなり音信不通になってしまったそう。
そうされた理由はわからないらしかった。
家は知っていたけれど、実家暮らしの人だったから、行ってみたりはしなかったとのこと。

急に「え、それなら私でも大丈夫だったりする………?」と思い始めてしまった。

この頃、ちょうどアプリでマッチングした⑫の人と会う約束をしていた。【気になりましたらこちらへ】
S君とマッチングするよりも前に、会う約束をしてしまっていた。
会う場所も遠かったし、キャンセルしてもいいような気にもなっていたけど、とりあえず会ってみようかと思っていた。

S君には黙っていた方がいいのかな?と考えていた矢先、
『今、俺以外にやりとりしてる人いるの?』とS君が聞いてきた。
私は正直に、
「実は明日会う人がいるんだよね」と答えると、
『明日会うんだ。
そっかぁ…
もしフィーリングも合って、
付き合おうって言われたら?』

それは絶対に無い、LINEも交換してないし、と答え
「え、なんだろ。
少しやけちゃったりするのかな?」と、ちょっと冷やかし半分で聞いてみると
『やきもちやいちゃった。
彼氏でもなんでもないのに』と、
泣き顔の絵文字を入れてきた。
『LINE交換してないって聞いて安心した』

もう、キュン死に だった。。。

私は、あんなに執着していたM君に対する執着心が剥がれていくのを感じた。
頭の中に、超強力な大きなマジックテープが浮かび、それをバリバリと剥がすイメージと、バリバリバリという音が実際に聞こえたイメージもした。

あんなに!毎日!!
1年半もの間 毎日!!
どうしても頭から離れなかったM君のことが、
この会ったこともないS君によって、いとも簡単に剥がされてしまった。
驚きだった。

《安いライト》を選んだ意味は、これだったの。。。?

それに、最初の頃にすぐに知ってとても驚いたのは、このS君の誕生日は、M君が20年応援している、大好きなミュージシャンと同じ日だった。
こんな偶然ある。。。?
(そして、私とは2日違いだった)


S君は、私が家に着いたというと
『おかえり』と言ってくれ、
夜中に仕事だと言うと、寝る頃に
『○○ちゃんお先にベッドで寝てるね、おやすみなさい』などと、まるで一緒に住んでいる彼氏かのようなメッセージを、いつもくれた。
私の方が「おかえり」と言うと『ただいまー』と答えてくれる。
死ぬとわかったとき、最後に何を食べるかという会話で、私が《チョコレート》と答えると
『可愛いね』と、ハートがついた顔文字を送ってきた。


ドキドキしてしまう。。。
好きになってしまいそう。。。
会ってもいないのに。。。


アプリに載っている1枚目の写真は、マスクをしていて、大き過ぎず小さ過ぎない目がキリッとしていて、スマホを持つ手の指が長くて綺麗で、とっても好みのタイプ!と思える写真だった。
2枚目は、マスクをしていない、少しボケている写真で、本当に別人のようだったから、
「一体実物はどっち寄りなんだろう。。。」と思うと、だんだん会ってみたくなってきてしまった。


S君には何度も『ご飯行かない?』
と誘われたけれど、話を逸らしていた。
『ご飯とか遊びに行ったりしたら好きになりそうだよ…』
って言ってくれたけど、逆に会ってみてこちらが
「こんな人と楽しくやりとりしちゃってたのか…」と思う場合もあるし…
『会ってみて、もしダメでも俺はお友達の関係でもいいって思ってる』


会ってもいい気がしてきたけど、あまりやりとりが頻繁過ぎると、会った後などに急にしなくなってしまったときに寂しいしな……
などと思い、適当なところで
「お風呂に入ってくるから、先におやすみって言っておくね」と言って切り上げようとしても
『〇〇ちゃんが上がってくるまで待ってる』
と待っていてくれる。

それどころか
「さぁ、そろそろ寝ようかー」
と言うと
『うん!
寝るー
一緒に寝よう』
と言ってきた。

「歯磨きするね」

『俺さっきしちゃった』

「終わったよ
お布団に入った?」

『入って布団の中で丸くなってる。
〇〇ちゃんは?』

「じゃあ今度こそ
おやすみなさいS君」

『うん
おやすみなさい
〇〇ちゃん』

「また明日ね」

『また明日LINEしよ』


甘ーーーーーーーーーーー―――いっ!!



と、叫びたくなってしまう。
何てカワイイの……?
毎日ホッコリ癒される。。。


2週間経った。
Hな話も、よく聞く投資の話もしてこない。
そう言ってみると
『Hなお話するー?笑』
『冗談だよ 笑
そういうのは好きになった人とだよね』
『やりとりしてるだけで楽しいからHな話しなくても楽しいよ』


私はもう、すっかりM君とやりとりをしたい気持ちなどなくなっていた。
毎日温かい気持ちで過ごせ、夜はグッスリ眠ることが出来た。
相変わらずM君のXは覗いていたけれど、どこで何をしていようと、何とも思わなかった。
このまま、Xさえ覗こうとも思わなくなる日も近いかも……

でも、このまま会うこともないS君とやりとりを続けて、その日々を失った時の喪失感を想像すると、
「やっぱりどんな人なのか会うだけ会った方がいいかも」という気持ちになって来た。
来月に会わない?と言ってみると
『是非是非 来月会いたいです』という返事。
《来月に》と言ったのは、準備が必要だったから。
用事や仕事でスケジュールがびっしりだったし、お肌のお手入れをしている暇もなかったから、全体的にひどくボロボロだった。

私は美容室に行ったり、寝不足にならない仕事のスケジュールを組んだりと、準備を始めた。



お別れは、突然やってきた。


その日は遅番だったから21時過ぎに『お仕事が終わったよ』と知らせて来たS君と、その後ずっとやりとりをしていた。
お酒の話をして、
『一緒に飲んでみたい』と言ってくれ、
お風呂に入るとか上がったとかを知らせると
『おかえり
待ってたよ』と言ってくれ
『今日も一緒に寝ようー?』と言ってくれた。

『今日は俺が腕枕するね。
○○ちゃんは腕枕したい?
それともされたい?』

「腕枕っていうより、
ぎゅうってしてもらいながら寝たいよ」

『俺も好き。
安心するよね。
あっ!こーいう会話は苦手かな?』

「大丈夫だよ」

『良かった。
今日はギューしながら寝ようか』

「いいのかな
まだ会ったこともないのに」

『そうだね。
会ってからにしようか』

「じゃあ、腕枕だけよろしくね」

『任せて
でも、ギュッてしちゃうかも』

「どうぞ」

『頭トントンもするー』

「すごいイメトレだね」

『妄想したらニヤニヤが止まらない 笑
早く○○ちゃんに会いたいなぁー』

「じゃあ、電気消すよ~」

『はーい
○○ちゃん腕枕するよー』

「おやすみなさいS君」

『○○ちゃんおやすみなさい。
また明日ね』

会ったこともないS君と、こんなラブラブなやりとりをしてしまい、
本当に腕枕をしてもらえる日がくるといいな……
なんていう気にも、なり始めてしまっていた。

次の日
『○ー○ちゃんおはようー』
と、いつものS君からの挨拶に自分のその日の予定をお知らせして……

ところが、
夜になっても、私からのメッセージに既読が付かなかった。
次の日の朝が早かった私は
「もう寝るね。
おやすみ」
と送って、寝てしまった。
夜中にトイレに起きた時に確認すると、既読は付いていたけれど、返信は無かった。
その日は土曜日だったから、家族とか友達とかと過ごしたりして、忙しかったのかもしれないと思った。

次の日、S君からのメッセージを1日待ってみたけれど、何も送られてはこなかった。
どんなに忙しくても『今日はこんな用事があって』とか、
せめて『おやすみ』の一言、送れないものなのかな。。。?
でも、日曜日だったから、月曜日の朝には
『おはよう』って言ってくれると思っていた。

でも、月曜日になっても、何も送られてはこなかった。

待ちきれずに
「私、何かしてしまったかな?」
と、送ってみた。
既読が付かないまま、夜になった。

私は居酒屋での仕事があったけれど、全く上の空でふわふわしていた。
仕事中は携帯をバッグに入れていたから、気になっても見ることが出来なかった。

何か返事がきているかもしれない。。。
どんな言い訳をしてくるんだろう。。。?

M君のことを思えば、数日返信がこなかったことなど、何でもない事だ。
腹が立つことなどは一切無い。
ただ、心配だった。
『音信不通になることは無いから安心して』と、言ってくれたこともあった。
元カノにされて悲しかったことを、自分が他の人にしたりはしないだろうし。
何よりも、あんなラブラブなやりとりをした次の日に、いきなり音信不通は普通じゃない。
朝にはS君の方から『おはよう』って言ってくれたんだし……

居酒屋のお客が減ってくると、いつもの22時まで待っていられず
「21時半で上がっていいですか?」と願い出て、先に上がらせてもらった。
急いで着替えて、店から出て、すぐにスマホを見た私は、思わず路上で、ひとりなのに声を出してしまった。

「こわっ!!」

既読さえ付かないままだった。


え? 死んだ??
S君、突然死んじゃったの???


とにかく理由が全くわからない。
他にアプリでやりとりが出来る人が現れたとしても、
あんなに密にやりとりしていた人と急に何もしなくなったら、しなくなる方だって手持ち無沙汰にならないもんなの?
本当は彼女がいたとか?
やりとりを見つかっちゃったとか?

アプリを覗いてみると、そちらではまだマッチングしたままだったから、とりあえずホッとした。

いつ、どんなタイミングで、再開・言い訳してくるんだろう……


火曜日の朝、まだアプリにS君がいることを確認した私は、そちらからメッセージを送ってみようと思った。
ホテルの朝食の仕事だったから、終わって帰宅してから、落ち着いてゆっくり、そうしてみようと思った。

帰宅してアプリを開くと、何とS君は消えていた。。。

黙ってブロック?
やりとりで
「ブロックする人って、してきてもいいけど、さよならとかは言って欲しい」
と私が言うと
『ほんとにそう思う!』
と、言っていたのに。。。
じゃあ、LINEもブロックされたってことなの。。。?

突然過ぎて、謎過ぎて、心が追いつかなかった。



そして、この直後、私は何故かまた熱を出して、5日間も寝込んでしまった。
熱に始まって熱に終わったS君とのやりとり……


男の子って、競争したり、賭けをしたりをよくするけど、それだった?
お友達と《アプリで50代の女を何人引っかけられるか賭けようぜ!》的な?
どうすればゴール?
会いましょう、そうしましょう、はい終了!って感じ?
それにしては時間も手間もかけ過ぎじゃない?
個人情報もだいぶ教えてくれちゃったけど…
最初に設定したとか?
だとしたら、だいぶ細かすぎるでしょう!



マリがよく言う。
「去って行く人は、お役目を終えたから去って行ってくれるんだよ」と。
《去って行ってくれた》っていう考え方には簡単にはならないけれど、
大きなお役目を確かに果たしてはくれた。
それは間違いない。

S君は、私の心をM君から引き剥がすお役目だけを持って現れた幻の存在とか……?

でも、会う準備をしていたから、
会えると思ってしまっていたから、
一度は会ってみたかった。。。
一体どんな人だったんだろう???

それにしても、
私はもしかしたら、赤子の手を捻るよりも簡単に、ロマンス詐欺に引っかかってしまう女なのかもしれない。









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