韓国ドラマは省略しないー「涙の女王」に続いて「ソンジェ背負って走れ」を観た
タイトルの通りなのですが。「涙の女王」「ソンジェ背負って走れ」と、今年話題の韓国ドラマを両方見終えたので感想を書き残します!
涙で画面が見えない「涙の女王」
「愛の不時着」を手がけた脚本家によるドラマ「涙の女王」は、Netflixで配信されて話題をさらっていました。かくいう私も夜中にアップされるリアルタイム配信を心待ちにし、睡眠時間を削って号泣しながら追っていた1人なのです。
クイーンズ百貨店の社長を務める財閥令嬢のホン・ヘイン(キム・ジウォン)と、田舎出身のハンサム弁護士ペク・ヒョヌ(キム・スヒョン)は大恋愛の末、婿入婚。順風満帆な夫婦生活と思いきや、3年が経ってヒョヌは離婚を考えるようになり…というところから物語が始まります。
「涙の女王」は「夫婦の再生」あるいは「家族の再生」を描いた物語といえます。
財閥を舞台にしていることもありリッチで華やかですし、演出や画づくり一つひとつのこだわりにもそのリッチさが通底されていて、眺めているだけで気分が良くなるような上質さがあります。
そして、なんといっても全員演技が上手いのだ。俳優たちの演技合戦と呼んでも過言ではありません。もう散々言及されていますが、主演のキムスヒョンの献身的な演技。そして涙の演技のバリエーションたるや…ううっ、ペクヒョヌ。
財閥令嬢を演じるキムジウォンちゃんは「私の解放日誌」で見たことあったのですが、当時の地方に住んでいて所在なさげな役柄とは正反対に、強気の美人を演じているのが最高です。声が低いのもいい!本人はポワポワしてそうなのに。
あとクイーンズの創始者である、ヘインの祖父の人ですね、演技を最後まで絶対に見てほしいのは。度肝を抜かれました。
本作に不満があるとすれば、韓国ドラマ定番の展開はけっこう惜しみなく使われていて、「ヒョヌは不死身か?」というぐらい痛めつけられるところです。「ええいくどい、もういいわい!歯がゆいわ!」と感じるのが少しノイズになるかもしれません。それを差し引いても大感動できますが。
職場の人に薦められた「ソンジェ背負って走れ」
そんなわけで「涙の女王」おもしろかったですよ〜というようなことを職場で話していたら
そちらもいいが、「ソンジェ背負って走れ」もめっちゃいいんで、ぜひ観てほしい!とレコメンドいただきました。
U-NEXT限定配信ということでハードルが高かったのですが、「YouTubeで2話まで無料配信してるんで!その先もU-NEXTは初月無料なんで!!」と力強い言葉をもらい、この休み中に一気見を敢行したのです。
あらすじをざっくり言うと…時を駆けるSFラブコメです。
事故で下半身不随となり生きる希望を失ったイム・ソル(キム・ヘユン)だったが、新人バンドECLIPSEのボーカル、リュ・ソンジェ(ビョン・ウソク)の言葉に救われ、15年後にはファンネーム「ソンジェ背負って走れ」を名乗る熱狂的なファンに。しかしソルが念願の初ライブに行った夜、ソンジェの訃報が駆け巡る。悲しみに暮れるソルだが、ネットオークションで買ったソンジェの時計が光り、気づくと過去にタイムスリップしていた。ソルは未来のソンジェを救うために奔走する…。
というようなお話。この作品は韓国では社会現象を起こすほどの大ヒットとなったそうで、特にソンジェを演じたビョンウソクは本作品で大ブレイク。確かに、モデル出身で、189センチの高身長に、はにかんだような笑顔が魅力の俳優が、まだ、韓国に隠れてたんだ…?こんな逸材が…?という気持ちにさせられます。
彼が画面にいるときといないときで、華やかさが全然違うんですわ。ステージにいるときのキラキラ衣装もおそろしく似合う。ついでにいうと歌も練習したそうで、かなり上手いです。いやどうなってる?魅力がカンスト?
「演技派!」という印象ではないんですけど、嫌味のないイケメンであるソンジェのキャラクターが、本人とシンクロしてる感じがします。
ソルを演じるキムへユンさんは朝ドラさながらのおっちょこちょいさわやかキャラがぴったりでした。ただ、これも割とドラマあるあるだと思いますが、「相手を想って本心を言えない」ことでの勘違いやすれ違いが無数に発生するため、私と似たような短気の人は少しフラストレーション溜まるかも。
タイムスリップものなので、ソルの行動によって、花を贈る人が変わったり、水に落ちる人が変わったり、死ぬ人が変わったりするんだけど、その状況やアイテムそのものは変わらないのが上手いッ!と思いました。
タクシーの運転手が執拗にソル、ソンジェに関わるのは「そういう因縁だから」でしかないんだけど、最終的にソンジェと運転手のどちらかが死ぬしかないというのが運命で、「ソンジェが死ぬのは嫌だが、運転手が死ぬのはいいのか…?」と視聴者の倫理観を問われる展開になります。キム刑事の「その代わりに生き延びた人がいるさ」というセリフでフォローしてるのがさりげないですね。
ソルが「自分はソンジェの人生に関わらない方が良い」と決めて出会わないようにやり直すわけですが、遅かれ早かれ2人は出会って惹かれてしまうので、もはやそれは運命というより因縁と呼ぶべきでは…?と、「運命」が持つロマンチックな響きの正しさについて考えてしまう作品でもあります。
いろいろ言ってしまいましたが、ふつうに「推しがいる人の夢、全部のせ」であり、胸キュンシーンがメガ盛りなのですが、「ファン→推し」目線で始まった物語が、「ソンジェの初恋物語」に自然に移り変わるのがお見事だなぁと感じる作品です。あと、BGMやスローモーション、長回しなどで「今!ここは!胸キュンのシーンです!」と教えてくれるのもいいです。笑
サムネイルにした画像は、傘を差し出すシーンがお互いあるのが好きで選びました。
2作品の共通点(韓国ドラマの共通点?)
本記事のタイトルをやっと回収するのですが、どちらの作品も「裏側のエピソードを省略しない」点が共通しているなと思います。
たとえば、「このシーンのとき、一方別のキャラクターはこんなことをしていて、考えていて…」というのがみっちり描かれます。「涙の女王」に至っては毎話エピローグまでありました。
これは実質45分の日本のドラマで育った身としては「まあよしなに想像してください。それで合ってるので」と省略されるのが常であると感じるので、「うおぉ、ここまで惜しみなく描いてくれるんだ!!」とけっこうビックリする点です。毎話1時間越えの韓国ドラマだからなせるわざなのかなと思いますが、書き込み方がすごいですよね。ぜいたくな気持ちになりますし、登場人物への理解や親近感がグッと増すポイントかも。
あと、コメディとシリアスのギャップがすごい。
「涙の女王」も、中盤からどんどん「おぉそっちにいくストーリーなんだ?!」と予想もつかぬ展開が待ち受けていますが、「ソンジェ〜」はベースがラブコメな分、シリアスなシーンは本当に怖かったです…。韓国ドラマ、シリアスなシーンを演出するのが上手すぎる…。どちらにも容赦なく振り切れるからこそ、感情をジェットコースターさながらに揺さぶられて魅了するのが、韓国ドラマの強みなのかもしれません。
どちらもおもしろかった
2作品ともおもしろかったのですが、私は「涙の女王」のが好みかもです。ちょっと大人な雰囲気が好きな人はこっちがおすすめ。
「ソンジェ〜」は青春ものが好きな人、そして千と千尋に出てくる「一度あったことは忘れないものさ、思い出せないだけで」の名シーンが響く方(※私)はぜひチェックしてほしいです。
「涙の女王」が好きといいつつ、まんまとビョンウソクにハマって、インスタをフォローし、映画「20世紀のキミ」も見た私の感想でした。
(ただこの映画といい、ビョンウソクの持つ儚さに製作陣が寄せたくなるのか、簡単に死なせ過ぎでは…⁈)
次はチョンヘインの新ドラマ「となりのMr.パーフェクト」を追いたいと思います。30代の俳優の層が厚いのも、韓国ドラマ界の好きなところだな〜。