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マット・ゲーツ、司法長官のポスト辞退 正念場はこれから?

買春疑惑のあるマット・ゲーツ前下院議員を司法長官にという、トランプ次期政権の衝撃人事から1週間余り。政界で大議論が連日展開される中、渦中のゲーツは21日、司法長官候補を辞退する意思をSNSで表明しました。

ゲーツの指名が特に騒がれた背景については、前回のブログにまとめましたのでご参考に。

前回のブログで「ゲーツはトランプに期待されているというより、試されているのでは」と書いたのですが、本当にお試し人事だったとしたら、何ともあっけない話です。トランプはSNSで「マットには素敵な未来がある。彼がこれから素晴らしい物事を成し遂げるのを楽しみにしている」などと激励していますが、本音では「もうちょっと戦ってくれたらもっと泥試合になって面白かったのに」というところではないでしょうか。(プロレス観戦大好きですしね)

ゲーツがこれだけ早い段階で辞退したことは賢明な判断だったと思います。性犯罪疑惑が尾を引いて上院で承認される見通しもかなり薄かった上に、仮にトランプがrecess appointment(前回ブログ参照)という方法で強引に道を開いたとしても、行政の法務トップである司法長官として仕事を全うする姿はちょっと想像がつきませんでした。共和党の中でも陰謀論者であり過激派で、大義名分もなく議事妨害をしたりするので、下院共和党の元同僚たちにもゲーツは相当嫌われていました。たまに支持を受けたかと思えば、ゴールドマンサックスの金融マンなどと経歴を偽って当選し後に大問題になって失職したジョージ・サントス元下院議員だったり。

司法長官をそのまま目指していたら、どう転んだとしてもこの2ヶ月〜1年ほどの間に地獄を見る羽目になったと私は思います。普通に考えたらやめておくのが妥当ですが、「あんだけメチャクチャ言いまくっといて、ここでビビるんかーい」と、ちょっとツッコミたい気もします。

そもそも、トランプはゲーツに「司法長官に指名するね」とどこまで事前に話していたんでしょうか。これだけの騒動になることは容易に想像できるのに何の対策も取れず辞退したところを見ると、ひょっとしたらゲーツ本人も直前まで知らず、寝耳に水だったのかもしれませんね。

さて、そこでゲーツの今後の進退はどうなるのか。「司法長官承認の準備をするため」と下院議員も辞めてしまったので、今現在プー太郎のはずです。

The Hillが5つの可能性を挙げていたので、私なりにそれぞれ考察してみたいと思います。(「→」以下はあくまで私個人の意見です)

1、トランプ政権の別の役職に就く
→ 可能性はおそらく、中の上くらい。今回の件でトランプからの評価は多少なりとも下がってはいるでしょうが、親トランプではあるのでゲーツは使い勝手が良いはず。仮に仲違いしてもトランプの脅威になることはあり得ないので、上院の承認がいらない役職でそばに置いておく、というのも選択肢にはありそうです。

2、フロリダ州知事選に出馬
→ あくまで出馬だけなら、可能性はこちらも中の上くらい。たださすがに州民もゲーツの疑惑が事実なら相当やばいと知っているので、おそらく出馬してもイロモノ枠で、得票には限界があるでしょう。わざわざそんな人物を持ってこずとも、フロリダ州知事になりたい人も、より相応しい人も他にたくさんいます。

3、米下院に出戻り
→ 可能性は中くらい。「司法長官を目指す」と下院議員を即日辞職し啖呵を切ったわけで、何事もなかったようにしれっと復帰するのはバツが悪いでしょうが、そんなのは所詮一時です。ただ、下院に復帰すれば、一度は公開見送りになった倫理委員会の報告書を公開される可能性が極めて高くなります。ということで、ゲーツ自身がどこまでやましいかやましくないか、が鍵を握るかもしれません。ちなみに、ゲーツは今年の選挙で下院再選を果たしたので、しれっと復帰する資格はあるそうです。

4、メディア業にキャリア転換
→ 可能性5つのうちダントツで大。すでにポッドキャストで自分の番組を持っている上、ニュース番組のゲスト出演は数え切れないほどしているので、もはや転身ですらなく既定路線と言っても過言ではありません。自分のルックスへの気配りはおそらく男性議員随一(整形疑惑あり)。仮に司法長官になっていたとしても、可能な限りメディア出演はしていたのではないでしょうか。司法長官がベラベラとメディアで喋るというのはあまり例を聞きませんが、トランプ政権ですから。

5、米上院議員
→ 可能性は下。フロリダ州の現職米上院議員、マルコ・ルビオがトランプ次期政権の国務長官に指名されているので、来年この分の議席が空き、その人選はフロリダ州知事、ロン・デサンティスの鶴の一声で決まります。The Hillの記事ではデサンティスが元連邦下院議員で一時期ゲーツと同僚だったことや、デサンティスが知事選でゲーツの助けを借りたことなども指摘していますが、デサンティスは基本、強硬派ではありますが破天荒ではありません。ゲーツを自分の州の代表としてワシントンに送るというのがどれだけフロリダに不名誉か、常識的に考えれば明白。ゲーツが上院に行く線は、5つのうち最もあり得ないでしょう。

番外編:弁護士として活動
→ せっかく弁護士資格を持っているゲーツなので、民間の弁護士という線はないのかなと考えてみましたが、まあちょっと難しそうです。本職の弁護士になるには彼は変な形で有名になりすぎました。法の専門家なのに性犯罪まがいのことをする、小学生レベルの嫌がらせで議事妨害する、という姿を散々メディアに晒してきたので、ちょっと信用ならない、と思われるでしょう。それにもともとゲーツ家は政治家の家系(父は元フロリダ州上院議長。祖父はノースダコタ州で上院議員、市長、副知事などを歴任)なので、弁護士資格自体、政界入りの布石だったのでしょう。

というわけで、今後もなんとか、政府または議会でトランプの代弁者として立ち回り政界にしがみつくことが、本人の望む道でしょう。

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