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伝わるテロップの動かし方-108個のテロップモーション図鑑-


108個のテロップモーションを1つずつ見たい人は下の動画をご覧ください。


テロップの動かし方は煩悩と同じ数ほどある
と言われています。

この中から「楽しそうな動き」をひとつを選ぶとしたら、はたしてどれが最適解なのでしょうか。

そして選んだものが本当に正しいのか?その判断って何が基準になるんでしょう。残念ながら正解はないです。ないんですが、正解っぽいものは自分の中で持っておきたいですよね。

そんな正解に近づくための切り口は「感情と状況。

今回は108個のテロップアニメーションを参考にしながら、「感情と状況」が伝わるテロップの動かし方を一緒に見ていきましょう。

ま、そんな難しく考えずに、なんとなくテロップを動かすよりも、映像の雰囲気や内容にバチッと決まった動かし方ができたら楽しいですよね!ということ。

今回はそのヒントになるようなお話です。

そしてうれしいことに、楽しみながら作業した方が不思議と映像のクオリティも良くなったり。ちょっとしたコツや考え方を知っているだけで、そんなことも可能になるかもしれません!

ということでナカドウガと申します。テロップ漫談家をしています。これまでに書いたテロップの記事は以下にまとめています。



第1章:テロップはなんのために動かすのか

テロップを動かすと伝える効果がアップする

まずこちらの動画を見てください。

退屈な30秒をすいません。でもこのなんでもない映像の中で、1つだけ刺激になった動きがあったでしょう?

どうやら人は特徴のある動きについつい反応してしまうという習性があるようです。

モノが動くと見ている人は「何かあるんじゃないか?」と無意識に期待して、さらには動いた理由を勝手に想像してしまうんですね。

その習性を上手に利用して伝えたいものをしっかり伝えよう。というのが今回の肝になる話。

ちょっと大げさな言い方をすると、テロップを動かすだけで、目線と意識と注意と感情を想いのままにコントロールできてしまうんですね。

となればテロップの動き自体が楽しげだったり、不気味だったり、気持ち良いテンポだったりすると、見ている人はもっと興味をそそられたり、内容をより深く理解するきっかけになったり。テロップの動かし方次第で、そんなことも実現できるかもしれません。


印象を変えるには「速度・緩急・余韻」を調整しよう

それにしても、楽しそうな動きとか、不気味な動きとか、テンポのある動きなどは、何をどんなふうに調整すれば表現できるのでしょうか。何かとっかかりになるものがあるはずです。

ひとまず、現時点での答えは「速度・緩急・余韻」ということにしておきましょう。

参考例を見ながら、印象がどう違うのかをチェックしてください。

基本の動きは画面右側から左に向かっての動き。バリエーションは全部で5パターン用意しました。それぞれ動く速度が違ったり、動きの緩急が違ったり、余韻が違ったりしています。

それぞれ印象はどうでしたか?たとえば僕の場合は以下のような感じでした。

1:素っ気ない
2:ゆったり
3:コミカル
4:シャープ
5:いきいき

基本の動きは同じでしたが、スピードや緩急がちょっと変わるだけで印象はけっこう違いました。どうやらこの微妙な違いが重要そうですね。

ということは「速度・緩急・余韻など」を狙い通りに調整できてさえいれば、テロップの動きで「感情や状況」をコントロールできるというわけ。

覚えておきたいのは「動き方が微妙に違えば、印象も変わる」ということ。まずこれを想像できていれば、今のところはカンペキです!



ということで、ここまでは「テロップが動くとどんな影響があるのか?」について考えていきました。

中にはちょっとした制作者のエゴも入っていました。「テロップを動かすことで、一時的に意識や視線を奪うことができる。」これではあまりにも身勝手が過ぎるので、せめて目に楽しく・違和感なく奪いたいところ。

次の第2章では、そんな目に楽しい動かし方や、違和感を感じさせない動かし方の実例を見ていきましょう。


第2章:テロップモーション図鑑

テロップの基本の動きは3つしかない

これからちょっとだけ専門用語が出てきますが、最初にこれだけ覚えてしまいましょう。

🔵スライドイン:画面の外・奥・手前から入ってくる動き
🔴フェードイン:その場から浮き出てくる動き
🔵ワイプイン:拭き取るように出てくる動き

「3つしかないの?」と思いましたか?そう!3つだけ覚えておけばOKなんです。

実は冒頭の108個のテロップモーションも、この3つを組み合わせたり、ちょっと効果をプラスしているだけ。

そして、ここまでのキーワードになっている「速度・緩急・余韻」を調整したり、組み合わせたり、別の素材を合成することで、ありとあらゆるものを表現できる。そんな寸法になっています。

どうやらこの微妙な違いが、いろいろな表現に必要だということが分かってきたところで、続いては動かし方のバリエーションを見ていきます。

こちらは3つだけと言わず、バリエーションは無限にあって、大いに悩まされるところですね。

動きのバリエーションはたくさんある

まずは動かし方を身近な言葉に起こしてみました。実際のテロップモーションと合わせてイメージをつかんでみてください。

🔵移動させる
あらゆる動きの基本、余韻や緩急のバリエーションを付けやすく、表現も多岐に。


🔴大きくする / 小さくする
大きくすれば「勢い」を表現できる。逆に小さくすれば「終了感」や「情けなさ」を。


🔵伸ばす / 縮める
パワーを溜めて開放など、物理的な力を表現する時に。コミカルな動きにも対応。



🔴回転させる
擬似的な立体感でメリハリのある動きに。アクセント的に使うと目にも楽しい。


🔵揺らす
「勢い」・「驚き」・「怒り」など、瞬間的に変わるものを表現できる。


🔴ワイプで出す
コメントを印象的に表示したい時に。格式高い表現をしたい時にも効果的。


🔵ボカす
しっとりと、さりげない感じを表現できる。暗い色味にすればホラー演出にも。


🔴光らす
豪華さや勝利などポジティブさを表現したい時に。


🔵ズラす
テンポとスピード感が出るので、単純な動きでも物量でリッチに見せることができる。


🔴めくれる
テロップを付箋に見立てて、緩急をしっかりつければ、さりげなく面白い動きに。


🔵傾けさせる
トホホな感じを表現できる、マンガ的なズッコケ表現をテロップで。


🔴文字と文字を重ねる
ワイドショー的なあざとさを意図的に使いたい時に。画面上をにぎやかにする効果も。


🔵別の素材を組み合わせる 
モーショエレメンツやストーリーブロックスなどの素材との相性◎。


🔴飾りを動かす
テロップの読みやすさはそのままに、存在感を高めることができる。


🔵テクスチャーを動かす
テロップそのものは動かさずに、雰囲気を高めることができる。


🔴点滅させる
原始的な動きで、本能的に注目させる。目線を強力に固定させたい時に便利。

https://vimeo.com/660508718

🔵色を変える
カラフルにテンポよく変わっていけば、コミカルな印象に。


🔴ベースの映像とシンクロさせる
映像とテロップがよりなじんで、ちょっと目を引く不思議な映像に。

なかなかスッと思いつくようで思いつかないこれらのバリエーション。訓練が必要な部分はありますが、画面を立体的に捉えたり、画面の外側の空間を想像できるようになると、アイデアはすんなりと出てくるようになります。

さて、ズラズラっと出てきたいろんな動き。上手に使いこなせれば、なんだかあらゆる表現に事足りそうな気がしてきませんか?

ここで大事なのは、「こういう表現をしたい時は、こういう動き」というようなアイデアを、自分の中にどんどんストックしておくということ。

今回のnoteでは108個のテロップモーションとして僕なりの動かし方のアイデアをアーカイブしましたが、あなたも同じように引き出しに貯めてみてください。いつか役に立つことがきっとあるはず!



🔵情報をしっかり伝えたい
🔴感情を伝えたい
🔵映像にテンポを出したい
🔴目に楽しい映像にしたい

ここに挙げた4つは動画編集をしていく中で、常につきまとう課題だと言えます。

「どうもしっくりこないな…。」
「イマイチ情緒が出ない…。」
「画面がずっと単調ですぐ見飽きてしまう…。」

そんな時にこれまでに説明したアイデアが蓄積できていれば、困った時にすぐ別の動かし方を試すことで、なにか解決策が見つかるかもしれません。

しかし!

まだ慌ててはいけません。楽しげな動きがたくさん出てきたところで、ついついアレコレ動かし方を試したくなりますが、ちょっと冷静になりましょう。


テロップを動かすことのメリットとデメリット

「とりあえず動かしとけば、リッチに見えるんでしょう?」と思いがちなんですが、実は良いことばかりではありません。

もちろん悪い面もあります。テロップを動かしすぎると、気が散って映像の内容が入ってこないという、本末転倒なことにもなりかねません。

そのあたりバランス感も必要になってきますので、テロップモーションの功罪ということで、まとめてみました。

【メリット】
🔵情報にアクセスしやすくなる
🔴雰囲気を高めることができる
🔵画面がにぎやかになる

【デメリット】
🔵画面がごちゃごちゃする
🔴映像自体の邪魔になる
🔵派手なエフェクトで映像の粗悪さを隠す選択肢ができてしまう
🔴間違った動かし方で映像の雰囲気を台無しにする

こうして挙げてみると、個人的にはデメリットの方が多く思いつきます。動かすことは諸刃の剣でもあり、考えもなく動きをつけてしまうと、逆に映像の品質を落としてしまうことにもなりかねません。

今回お話ししたことの細かい部分は最悪忘れてもOKですが、動かし方を失敗すると「見ている人がシンドイ」という事実だけは覚えておきましょう。

見ている人がシンドクない動かし方って?

「見ている人がシンドイ」時、画面上ではどんなことが起きているのでしょうか。

ずばり「動きにもTPOがある」と思ってください。

普段の生活でも、その状況に合ってない服装で行ってしまうと、その場で自分だけ浮いてしまって恥ずかしい思いをすることがありますよね。その結果、本人も周りの人も居心地の悪い気持ちになってしまうことも。

テロップもそれと同じではないでしょうか。

映像の雰囲気にあっていない動き方をしてしまった時、それが見ている人にとってシンドイ動きだと見えてしまうのですね。

ということで、シンドくならない動かし方のヒントとして4つの型を考えました。

🔵感情の型
🔴雰囲気の型
🔵テンポの型
🔴邪魔しない型

次の章からは、その4つの型の中で代表的な動かし方をいくつか見ていきます。


第3章:テロップの動かし方4つの型

それでは実際に見ていきましょう。

感情の型

🔵縦横に弾けて「びっくり・楽しい」


🔴ブルブル震えて「怒り・ほんわか」


🔴ゆらゆら動いて「不思議・のんびり」


🔴上から落下して「がっかり」

🔵ジワーっと出て「しっとり」


雰囲気の型

🔵飛び込んでくる「勢い」


🔴光って出る「豪華」


🔵ノイズと一緒に出て「不気味」


🔴ドロっと出てくる「怖い」


🔵ジワーっと動いて「情緒」


テンポの型

🔵塊ごとに出す


邪魔にならない型

🔵フェードイン


🔴カットイン


🔵ブラーイン


🔴スライドイン



伝えたいものは果たして何か。それを軸にしてテロップの動かし方を決めれば、もっと深く、丁寧に伝わるようになるし、映像そのものやテロップの動き自体にも手触り感も出てくるものです。

そんな手触り感が映像自体のクオリティアップにもつながっているのではないでしょうか。


まとめ

集中している時に目の前を飛ぶ蚊はうっとおしいものですし、泣きながらウロウロする迷子の子はどうしても気になります。笑っている人を見るとこっちも笑ってしまうのと、テロップの動かし方で感情を伝えるということは本質的には同じだと思ったりもします。

つまり、うっとおしさを伝えたいときはうっとおしい動きを、不安がらせたい時は不安な動きを、笑わせたい時はおもしろい動きを。

そんなふうに感情を基点して考えると、もっと伝わるテロップの動かし方ができるのではないでしょうか。

ということで、今回もややこしい話に最後までお付き合いいただきありがとうございました。あなたの仕事に少しでも役立つように祈っています。

ナカドウガでした。

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ナカドウガ / モーションデザイナー
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