大人は、ずるい
新宿が好きだ。そして同じくらい嫌い。
とにかく人が多い。歩くのすらままならない。色んな人がいて、色んな欲望、絶望、希望が入り混じっている。前を向いて歩けない。人が多過ぎて、気流れが多すぎる。前を、目を、見れないのだ。いつも足元を見ながら歩いている。が、人とぶつかった事はまだ無い。
だがしかし、ごみごみとしていて非常にいい。特に悩みがあったりもやもやしている時に来るには最高だ。この街に整然とある、憎悪や希望や性欲や愛情や全ての物に自分の欲や悩みが紛れ、程よく曖昧になる。嫌な事があった次の日は、無意識に新宿に足が向いている。今日もそうだ。
既読になっても返って来ないLINEを、ただ待ち続けるには、この街に紛れなくてはと、もはや使命感にも似た、何かここに来なければ癒されない気持ちが、私の中にある。
しかし、特に行く宛も用事も無いので、コラムのネタにでもなればと、この後相席屋的な、出会いラウンジ的なお店を予約している。今はその時間までお茶をしながら待っているところだ。
絶望を絶望で、孤独を孤独で埋めようとする自分の浅はかさを、痛烈に感じている。これは若い時から変わらない。だが、やり方は変わった。ただぐちゃぐちゃに打ちのめされるやり方はもう卒業し、どう打ちのめされるか方法を選べる。その為にどうするかの行動力や、経済力を身につけたのだ。ここまで来るともはや楽しい。爽快である。根本には絶望がある筈なのに、それすら忘れ自身の快楽へと昇華させる事が出来る大人に、いつの間にか成っていたのだ。
大人ってずるい。と、自分につぶやく。
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