輪廻転生
まだ少し先だが、十月になるのが怖い。
彼の誕生月だ。そして、私の。
彼とは誕生日が二日違いだった。恋人でも知り合いでも、こんなに誕生日が近い人は初めてと、驚いたことを覚えている。
天秤座。B型。彼は典型的なB型的性格であったと思う。B型の男が好きだ。気難しい所もあるが惹かれてしまう魅力がある。
セブンスターを吸っていた。紙たばこの匂いが大嫌いなはずなのに、彼のたばこの煙は全く気にもならなかった。それが今でも不思議でならない。
彼は優しくて強い。素敵な人だった。
物腰が柔らかく、ルパン三世の様に遊び人のような、落語家の様に落ち着いた、とにかく魅力的な人だった。
しかし、決して見せない、目には見えないどこか暗い孤独と、闇に包まれているようだった。だからこそ、急に別れを選択したのだろうと思っている。あんなに大事に愛してくれていたのに、突然別れを選択したのだ、と。なぜ彼は、自己の孤独を選び、そして戦うのだろうか。それは今でもさっぱり分からない。それに、仮に理解した所で、今の私には、彼を認め、癒やし、その孤独から救い出してあげられるだけの人間力や包容力があるのだろうか。
なのでもし、彼からまた会いたいと連絡が来て食事などしたとしても、その日は真っ直ぐ帰りたい。こんなに深く、愛しく想っているけれど、すぐに手を繋いだり、キスをしたりしたくない。出来ない。と、思っている。そんな未来があれば、だが。
輪廻転生。
いつか何かに生まれ変わったら、また彼と会いたい。人間じゃなくても、虫でも、花でも。
今は太陽と月のように、お互いが必要だが会えない。それでいいと思う。
会うことは出来ないけれど、誰よりも必要な存在であり続けたいと願っている。
今の私には、彼の全てを受け入れることは、きっと出来ない。
ただ、運命を受け入れる覚悟。
それだけは出来ている。
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