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研究初心者が陥りがちな罠〜科学研究における3つの呪縛

はじめに

 筆者が某国立大学で教官として勤務していた頃、学生の指導に際して、ある教授が学生に頻繁に問いかけていた言葉がありました。それは、Research Gap、Research Question、Reaearch Hypothesisの3つです。

 Research Gap、Research Question、Reaearch Hypothesisは科学研究において根幹をなす要素です。この三要素によって研究の焦点と枠組みが決まり、どの様な具体的アプローチ(実験・解析系)をとるかが決まるからです。

  • Research Gap: 研究分野における未解決の領域を規定する

  • Research Question: 解決するべき課題を同定する

  • Reaearch Hypothesis: 研究方法などアプローチを設定する

 教授が、まずこの三要素を明確にしてから研究に取り掛かるよう促すのは、実に正統的な指導でした。多くの学生が自分で解決することが困難であったことを除けば。(「優秀な大学の先生は「できない」学生の気持ちはわからない」を参照)

科学研究における3つの呪縛

 研究初心者にとって、Research Gap、Research Question、Reaearch Hypothesisは、科学研究における呪縛です。適切に各要素を設定するためには、その研究分野について、ある程度の知識と経験が必要です。しかしながら、研究初心者は知識が不足しているために正しくResearch Gapを規定することができず、課題を十分に吟味できていないために妥当なResearch Questionを同定できず、経験不足のために適切なReaearch Hypothesisを設定できないのです。三要素を明確にできないので研究の軸がブレ、研究の軸がブレるので、方向性が最初の計画とはズレた歪なものとなっていきます。

 ニワトリが先かタマゴが先かの無限ループです。

 正直言って、「普通」の研究初心者が最初からこの三要素を明確に設定するのは無理です。なので、研究指導者が必要なのです。しかしながら「放牧型」の研究室に入ってしまい研究指導者から指導を放置されてしまった場合、「普通」の研究初心者は、どのようにしてResearch Gap、Research Question、Reaearch Hypothesisを明確にすればよいのでしょうか?

 現実的な方法は、お手本となる論文を見つけ、その研究フレームワークを拝借することです。お手本とする論文は、メンターに見繕ってもらうとよいでしょう。おすすめは、Research Questionを自分の研究に置き換えることです。そうすれば、Research GapとResearch Hypothesisは、先行論文をなぞるだけですので、研究の軸がブレることもありません。

 研究初心者が陥る罠の一つは、最初から全部自分でやろうとする(させられる)ことです。最終的に自分一人でできるようになることが目標だとしても、最初は誰かに頼ってよいのです。ただし、正しい人に助けを求めましょう。

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