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イントロダクションが書けないあなたのためのチェックリスト

はじめに

 研究初心者が論文のイントロダクションを書こうとする際に、最初に突き当たる壁は、何をどう書いたらいいのかわからないことだ。ある程度経験を積んでくると、実験結果からどのようなストーリーが導き出せるかわかってくるようになり、なんとなくアウトラインらしきものを書いてから、または、いきなり文章を書けるようになる。
 しかし、研究初心者の場合、指導者から「じゃあ、イントロダクションを書いてきて」と言われても、たいていは真っ白なスクリーンを前に固まるだけである。そして、アウトラインにもならない中途半端な文章を2〜3行書いて指導者に説教されるか、どうしても書けずに締切を伸ばしてもらうか、空き巣が入るか親戚が亡くなるか体調が悪くなってブッチする羽目になる。
 例のごとく、生命科学分野の研究初心者や学生を対象にし、すでにある程度自分で論文が書ける「優秀」な方むけではなく、「論文の書き方」本を読んだけれど、その実践段階で躓きがちな「普通」の方むけへの記事となっている。また、「論文が書けないあなたのための論文の書き方」でも書いたように、論文指導する教官のためのnote記事でもある。添削する方も、まともな論文原稿がなければどうしようもないからである。

材料を集める

 イントロダクションが書けないあなたには、まずなによりも書くための材料(情報)が不足している。まず、以下のチェックリストについて、あなたの研究に関係する情報を文献付きで、1文で書き出してみることだ。最終的には論文に含まれないかもしれない情報もリストアップされているが、その分野全体の中での論文のテーマの立ち位置を把握するためにも、手を抜いてはいけない。イントロダクションを書けないあなたは、何が大事か見極めることができないために文章が書けていないのだから、地道に網羅的に情報を集めることから始めるしかない。効率を求めるのは5年早い

研究の歴史

  • 最初の報告

  • 2番目の報告

  • 3番目以降の報告

  • 最新の報告

  • 研究のブレイクスルーは?

関与する分子または遺伝子

  • 細菌では

  • 酵母では

  • 線虫では

  • 昆虫では

  • 脊椎動物では

  • ホ乳類では

  • 植物では

現在までに明らかにされていること

個体レベルで

  • 行動

  • 発生(器官形成)

  • 生理現象

  • 病気

細胞レベルで

  • 分化

  • 局在

分子(遺伝子)レベルで

  • ファミリー

  • 構造

  • 機能

  • 制御

  • ネットワーク

現在までに明らかにされていないこと

  • 残された謎は何か

意義を見出す

 材料が揃った次の段階は、論文を書く意義を見出すことだ。あなたは自分の研究結果が(建前でも)重要だと考えているから論文を書こうとしているわけだ。そのためには、研究成果の何かしらの重要性を伝える必要がある。しかし、ただ「重要だ」と繰り返すだけでは、誰も説得されてくれない。重要性とは相対的なものである。なので、過去の研究と比較する必要がある。以下のチェックリストについて、Yes/Noで書き出してみる。その際、「テーマ選択の罠」で挙げた例に陥らないように注意する。

研究の流れにおける位置づけをはっきりさせること

  • 最初の報告なのか

  • 既存の説を補強する報告なのか

  • 既存の説に反対する(矛盾する)報告なのか

研究の意義

  • 新しい事象を発見したものか

  • 新しい関係性を発見したものか

  • 既存の研究のギャップを埋めるものか

  • これまでできなかったことを可能とするものか

  • なにかの価値を作り出すものか(お金・時間・労力を判断基準に)

おわりに

 さて、このチェックリストを埋め終えたあなたは、すでにイントロダクションを書く準備ができている。あとはパラグラフライティングを意識して、パラグラフを書き上げるだけである。パラグラフの書き方についての詳細は、「論文が書けないあなたのための論文の書き方」および「パラグラフが書けないあなたのためのパラグラフの書き方」のnote記事を参照されたい。

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