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難病になっても前向きに。医療ライター&広報として活躍中、看護師のmoecaさん

体力的にきつい医療現場での仕事では、「体が資本」という言葉を身に染みて感じることが多いのではないでしょうか。病気や怪我をすると、働き続けることが難しいのも医療業界の一つの特徴です。

医療×Webクリエイターの交流コミュニティ「MediWebラボ」に参加する看護師のmoecaさんは、2022年に重症筋無力症という難病を発症。それでも「病気という理不尽に悩む時間は“無駄”」と考え、在宅でも働ける医療ライターへ転向しました。

今回は、看護師から医療ライター、ベンチャー企業の広報など幅広く活躍されているmoecaさんにお話を伺いました。

moecaさんが直面した、病気発覚当時の気持ちや新しい仕事へのチャレンジ、看護師に対する想いとは――。

挫折しそうな学生時代を乗り越え看護師へ

看護師資格を持ち、医療ライターとして活躍中のmoecaさん

ーーmoecaさんの自己紹介をお願いします。

看護師で医療ライターのmoecaです。

私が医療のキャリアを選んだのは、高校時代。選択授業で看護を受講したところ、思いがけず好成績だったのがきっかけで、「看護師に向いているのかもしれない」と思い看護師の道に進みました。

看護師志望の理由といえば、強い理念や想いがあると思われがちですが、私の場合は大した理由ではないので恥ずかしいです……(笑)

看護専門学校に進学後は実習が本当に大変で。看護学生1年目で中途退学を申し出たほどでした。

すると先生に「あなたには、看護の技術と人の話が聞ける能力があるから、意地でも看護師になりなさい」と引き留められました。先生が言うのだから自分は看護師に向いているのだろうと、その言葉を信じて看護師になりました。

看護師としては主に小児科での経験を積みました。幼少期からてんかんの持病があり、看護師さんにお世話になった記憶が小児看護を選択した大きな理由です。

その後、2022年の冬に「重症筋無力症*」という病気が発覚し、臨床現場を離れざるを得なくなってしまい……。そんなときに、医療ライターとして活動を開始しました。

現在は看護師として働いていませんが、医療ライターの仕事にも看護師の経験が役立っています。いつでも看護師に復帰もできるので、あのとき諦めずに看護師の資格を取って良かったと思いますね。

現在は、難病支援をおこなうベンチャー企業の広報としてSNS運用やプレスリリース作成*、ニュースリリースの執筆をしています。

重症筋無力症*:全身の筋力低下や疲れやすさ、瞼が下がる・複視などが起こる自己免疫疾患
プレスリリース*:企業が商品やサービスなどをメディアに発表するために発信する公的な文書

ーー当時、看護師として働きながら、ワーキングホリデーに行ったそうですね。そのきっかけは何だったのでしょうか?

看護師として最初に配属されたのは、小児がんの病棟でした。5年間勤めましたが、毎日の長時間労働と子どもの看取りで、心と体のバランスを崩してしまったのです。

そのまま退職となり、休職期間に突入。「何もしないのはもったいない!」と思い立ち、1年間ニュージーランドに行きました。仕事を探すため、自宅から語学学校までに目についたカフェやバー、ホテルなどに履歴書を配り歩き、運良くホテルで採用してもらいました。ワーキングホリデーで培った行動力や営業力は、今の仕事にも繋がっていると思いますね。

看護師として働く最中、突然の難病発覚

ニュージーランド滞在中のお写真

ーーワーキングホリデーを経験し、充実した日々を送られていたようですね。重症筋無力症はどのような経緯で発覚したのでしょうか?

2022年の夏ごろに、抜歯後に服用した抗生剤で重度の薬疹*を発症したのがきっかけです。

主治医に薬疹と自己免疫疾患の精査を勧められたため、大学病院で検査を受けました。その結果、「重症筋無力症」という難病であることがわかりました。

検査結果が出るまでの間、命に関わる病気の可能性を宣告されたため不安は強かったですね……。ですが、逆にこれからの自分を見つめ直すきっかけになりました。

薬疹*:薬が原因による発疹。原因薬物のアレルギーによって起こることが多い

「くよくよしている時間がもったいない」病気になっても自己実現できる働き方を模索

ーー「命に関わる病気かもしれない」という不安と辛さをどのように乗り越えたのか教えてください。

病気が特定されるまではとても不安で、さまざまなことを考えました。

同年代の友人や同僚には、彼氏がいて、結婚して、子どもがいる――私だけ置いていかれているようでした。「あとどのくらい元気でいられるだろう」「なんで私だけ」という後ろ向きな気持ちもありましたね。

けれど、残りの人生を考えたときに「やりたいことをやろう」「くよくよしている時間が無駄だ」という前向きな気持ちに切り替わりました。「気持ちを切り替えたらあとは進むだけ」と、検査入院中に新たな働き方を考え始めたんです。

ーー気持ちを切り替えてからはどのように動き出したのですか?

検査で1ヶ月程度入院していたため、その間にInstagramやXでさまざまな仕事や働き方を模索していました。同時に、noteで自身の病気について発信を始めました。

すると、同じ病気で悩んでいる方から「もっと発信してもらいたい」など想像以上に反応があったんです。友人からも「文章が上手だから、仕事にしてみたら?」と提案を受けて、オンラインスクールを受講しました。

その後もさまざまな人の話を聞き、万が一自分が動けなくなっても自己実現が最大限できる可能性を、できる限り模索しましたね。

医療資格を活かして、医療ライター&広報へキャリアチェンジ

ーー重症筋無力症という診断が出て退院された後は、新たな仕事にチャレンジされていったのですね。

病気の発覚で看護師の仕事を辞めざるを得なくなり、退職日までは副業で医療ライターを始めとした看護師としてフルタイムで仕事をしながら、専業に向け、医療ライターとして4〜5つの業務委託を抱えていたため、とても多忙でしたね。

その後、業務委託を受けていたうちの1社に社員として採用してもらいました。難病支援をおこなうベンチャー企業で、広報に配属されました。

出社してもフルリモートでも良い職場なので体調と相談しながら仕事ができています。体調が比較的落ち着いているときや時間があるときには、副業で医療ライターやインタビューライターの仕事も続けています。

MediWebラボが新しい挑戦の場に

MediWebラボ オフ会イベントの様子

ーーmoecaさんがMediWebラボに参加した理由を教えてください。

代表のまいまいさんのXで、Meditedのインターン募集を見つけて、まいまいさんに連絡したのがきっかけです。

渋谷でまいまいさんとお会いした時に「コミュニティマネージャー(以下、コミュマネ)に興味がある」という話をしたところ、MediWebラボという医療×Webクリエイターが集まるコミュニティを運営をしていること、同じ看護師資格を持ったコミュマネがいることを教えていただきました。

まいまいさんから「今のコミュマネさんと『コミュマネに興味がある人へコミュマネ体験ができる機会を作れたらいいね』と話していて、よければ挑戦する場所として使ってもらえたら」という話があり興味をもったことが参加のきっかけでした。

MediWebラボの参加者は、医療者専用リスキリングスクールMedi+の卒業生がほとんどです。でも、卒業していなくても実績があれば参加できる場所になっているので、色々な医療資格を持つ医療ライターやクリエイターの方と安心して交流できるのは嬉しいですね。

ーーコミュニティ加入後、実際にコミュマネ体験をしたmoecaさん。MediWebラボに参加して良かったことはなんでしょうか?

MediWebラボは、私と同じように医療資格を持ちながらクリエイターとして働く方と交流ができるのが一番のメリットです。医療者としてもWebクリエイターとしても、悩みやキャリアについての相談もできます。

自分のやりたいことを声に出せて、背中を押してくれる、挑戦できる場を与えてくれることが嬉しいですよね。私はコミュマネ体験を通して、新たな繋がりができたり、仕事の幅が広がりました。

あのとき、まいまいさんに出会っていなければ、まだ案件をもらえない医療ライターだったかもしれません。コミュニティ運営にも挑戦できていなかったと思います。

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MediWebラボ 東京ご飯会の様子

ーーチャレンジングなmoecaさん、今後のビジョンなどはありますか。

今は看護師の仕事から離れていますが、看護業界にも戻りたいと思っています。

臨床現場と少し距離を置いたからこそ、患者さんと向き合う看護師という仕事が好きなんだと再確認できました。いまだに病気も治療中なので、フルタイムで看護師に復帰するのは難しいかもしれませんが、自分のできる範囲で関わりたいと思っています。

医療ライターもとても楽しいので、続けていきたいですね。体調と相談しながら、看護師と医療ライターと良いバランスを見つけていけたらと思います。

ーー体調と相談しながら、自由な働き方ができるのも医療資格ならではですね。さらに副業におけるスキルがあれば、より強みが増しますね。moecaさんの働き方は同じ病気の方だけでなく、多くの方の参考になると思います。病気の発信などは今後も継続していくのですか?

現在もXやnoteなどで、定期的に病状や現状を発信しています。病気は隠していてもしょうがないので、少しでも誰かの役に立てればという気持ちはあります。当事者だからこそわかる悩みや工夫などを共有できればいいですね。

私の発信を見た人に「こんな働き方があるんだ」と参考にしてもらえたらと思っています。

MediWebラボで“繋がる&挑戦する”を応援

ーー今後ラボでチャレンジしたいことを教えてください。

コミュマネ体験は終わりましたが、これからもメンバーとしてコミュニティを盛り上げていきたいという想いがあります。

まずは、メンバーにとってラボが「気軽にクライアントワークについて質問ができる」「スキルアップができる」場所にすることです。私がラボでコミュマネ体験をさせてもらったように、他のメンバーも新たなスキルが得られる場にできるといいですね。

また、ラボメンバー同士の交流を増やすお手伝いがしたいですね。実はすでにオフライン会を企画中です。オンラインでは朝会を復活させたいと思っているのですが、朝が弱くて起きられていないのでまだできていないです(笑)

ほかには、ラボメンバーでチームを組んで、仕事を受注してみたいです。ラボにはさまざまなスキルを持つメンバーがいます。医療ライターをはじめ、ディレクター経験者、動画編集者、SNS運用など大きな案件に取り組める可能性を秘めています。いつかラボメンバーのチーム化に挑戦してみたいですね。

ーー現在の働き方に悩んでいる方、新しい働き方を模索している方にメッセージをお願いします。

私自身「何でもまずはやってみよう」というタイプなので、今までも興味があるものにはチャレンジしてきました。

今の環境で心や体を壊してしまうくらいなら、軽い気持ちでもいいので新しい環境に飛び込んでみてはいかがでしょうか。働き方の選択肢はたくさんあるので、ぜひ皆さんも気軽にチャレンジしてほしいと思います。

派遣や単発の仕事などができるのも医療資格ならではです。医療現場に戻る選択肢もあるので、違う道にも挑戦しやすい。もし、失敗したとしても「やってみたけど向いてなかった。でも挑戦してよかった」と思えます。

あなたがいま、働き方を変えたいと思っているのであれば「思っているだけじゃ変わらないよ。ちょっとやってみたら?」と声をかけてあげたいです

ーー素敵なお話をありがとうございました!

取材協力:moecaさん
取材・執筆:岡田なつみ

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