Mediiが大切にしているバリュー、その誕生秘話
こんにちは、Mediiの山田裕揮(@medii_jp)です。今回は、Mediiがチームの中で徹底しているバリューに対する考え方についてお話させていただきます。
過去の組織づくりにおける失敗と、その学びを活かしたバリュー設計など、バリューが生まれた背景をご紹介します。
チームで取り組む理由と、チームでやるからこその課題とは?
なぜ、目的を達成するために一人でやらず、チームで取り組むのか?
その答えは単純で、一人でできない大きなことが実現できるから。チームで取り組むことには明確なメリットがあり、過去にスピード感を持って大きな目的を達成してきた人たちは、おしなべて組織・企業などチーム単位で動き、目指す世界を実現をしてきたと言っても過言ではありません。
しかし、チームで取り組むからこそ生じ得る課題が2つ存在します。一つ目は、共通目的を意思統一し続けるのが難しいことと、二つ目は異なる価値観、背景を持つ個人が同じ価値基準を持って行動し高い成果に繋げていく必要があることです。
私たちMediiにおいても例外ではなく、過去多くの失敗を通じてその難しさを体感しながら、得られた学びを次の行動変容に活かし、仕組み化に取り組んできました。
一つ目の課題に対しては明確なミッションを掲げ、その先にあるビジョンのイメージを共有すること、二つ目の課題に対しては価値基準となるバリューを設計し、その結果生まれる価値観を共有するカルチャーを育てることによって乗り越えてきました。
今回は、Mediiが徹底して拘っているバリュー設計の本質と、その理由についてお話していこうと思います。
なぜ、組織はバリュー設計を進めるのか?
バリューとは、直訳すると価値や価値観と表現されますが、企業においては行動指針とも言われます。私はこの両軸とも正しい表現だと思っています。
どんな行動をするとこのチーム、組織において評価されるのかという価値観とも言えますし、組織にとって大きな価値のある行動を求める指針とも考えているからです。
では、本題のこのバリューの組織における本質と、どうしてMediiが徹底した仕組み化を進めてきたのかの背景について話を進めていきましょう。
先に結論をお出ししておくと、バリューの本質は目指す方向を定めた組織ベクトルの最大化、つまり前述した「異なる価値観や背景を持つ個人が、同じ価値基準を持って行動し高い成果に繋げていくこと」にあると考えています。
組織の中には、様々な家庭環境・地域・人との縁で育ち、種々の企業で無意識に培われた異なる価値観の人間がいます。そのため、全員が足並みを揃えて一緒に動く、ということは本来相当な時間をかけなければ難しく、価値観や文化は簡単には共有されにくいというハードルがあります。スタートアップのように、多様性あるメンバーが短期間に一つのチームとなって共に行動していく上では、組織が大切にしている価値基準の明確化、つまりバリューの設計が極めて重要になるということです。
Mediiのバリューはどのように設計されてきたのか?
Mediiにおけるバリューの設計には、過去の失敗から得た学びと、先に一定の成長・成功を遂げていった先人達からの教えを参考にしています。
過去の失敗とは、当時のメンバーや関係者に辛い想いをさせてしまった組織崩壊を指しています。これは山田自身がチームビルディングにおいて明確な価値基準を持てておらず、互いが思う価値基準について共に理解を深めたり追求してこなかったことが一因であったと考えています。この経験により、ミッションの達成のためには、経営者として求められるあらゆるマインドセットやスキルに加えて、価値基準となるバリューの言語化を仲間達と納得いくまで議論を重ねて共有し合うことが、極めて重要なのだと痛感しました。
また、成功をされてきた他の組織はどのようにバリュー設計をしてきたのかを研究しました。具体的には、様々な専門家や起業経験者に相談したり、過去5年で上場を果たし組織づくりが一定評価されている企業さんを百数十社ピックアップして、彼らが大事にしているバリューを全て洗い出したりしました。すると、大きく分けて3つのカテゴリーに集約することができると気付きました。
この3つの視点を参考にした上で、Mediiが果たすべき使命や目指す世界、ありたい組織像の解像度を高め、Mediiなりのオリジナリティとアイデンティティを乗せて言語化したのが、以下のバリューです。
カスタマーハピネスは造語です。カスタマーハピネスは3つあるバリューの中で最も上位にある概念としました。向き合う目の前の人、カスタマーがどのようなペインを持っていて、どのように解決できればその人がハッピーになるのかを常に徹底して考え行動し続けることが、結果としてその人を動かし、ハピネスをもたらす要因になるというのが根本の考え方です。
成果最大化は、ROIの最大化が考え方として本来は近いのですが、敢えて「成果」という言葉を用いました。新しい価値を創造するスタートアップにおいては明確な正解がないことが多いです。その中で、短期的なリターンのためのインベストメントを意識すると、中長期的に大きな「成果」を見失いかねないためです。また、本当にそれは成果なのか?イシューの解決に繋がるのか?と問い続け、成果の最大化を追求していくことを示しています。
Team Mediiは、個人の当事者意識を評価する文化と心理的安全性を高めるための前向きな議論を推奨し、本質(ラテン語でMedii)を追求し続けるチームであることを願ってつけました。
しかし、これらのバリューを掲げるだけでは、当然組織課題は解決に至りませんでした。この言葉が意味する目的や意図を理解し、共感してくれる価値観を持ったメンバーと共に、実際の「バリュー」を伴った行動ができる「カルチャー」の醸成が必須だったのです。
当時の自分には、それができていませんでした。
失敗から学んだ、バリューを共有するチームをつくるために必要だったこと
できていないことを憂いても何も変わりません。
組織課題の解決のためにまず取り組んだことは、本当に辛く、怖く、悲しい決断でありましたが、Mediiの価値基準に対して、賛同いただけない方や相反する価値観を持っている方はそもそもチームに入れてはいけないという方針づくりでした(当たり前でしょ、と言われると私も思うのですが、本当に当時は自分の力不足故に、短時間の面接のみで見抜くことが難しく残念ながらできていなかった)。事業を推進させるスキルや経験を持っているだけでも、Mediiが目指す方向性に共感してくれているだけでも不十分としました。
それらに加えてMediiが大切にするバリューに近い価値観を持つのか、過去どのような行動を選択してきたのかを重視して仲間を集めるように、再始動しました。同時に、全ての価値観がピッタリ合う!ということもほぼないので、ある程度のバリューが合っていることを前提に、「アジャストしていける柔軟さ=アジャスタビリティ」を持っているのかという基準も設けました。
「多くの失敗を通じて」と言ったので、実際の失敗例を一つだけ紹介させていただきます。それは、このアジャストするコミュニケーションについてです。私がどれだけ「カスタマーの笑顔に繋がるように、成果に繋がるように、皆でより良い未来のために建設的に議論していこうよ!」と言っても、バリューを伴った行動ができるチームにしていくことは簡単にはできませんでした。その原因の一つは、バリューについて対話ではなく押し付けのように捉えられてしまい、「それって山田さんの個人の考え、価値観では?」と心の中で認識されてしまったことだと考えています。
そこで、対話を進め、共に考える機会を作ることで、バリューは、Mediiという組織・チームにおける最も尊い価値基準であるという納得感を高めていきました(その詳細はまた別記事にて)。
そうすることで組織と自分自身の価値観のすり合わせが可能となり、組織が大切にするバリューにどのようにアジャストしていくのがいいのか、誰にとっても考えやすくなりました。結果として、本当に近しい価値観をもって、互いに背中を預け合えると心から思える仲間がどんどん集まってくれる、強いチームとなりつつありました。
バリューの中に言語化した行動指針の目的と意図
それでもまだ、バリュー設計における課題は残っていました。
シンプルで覚えやすい反面、広い概念だからこそ抽象度が高過ぎたのです。つまり、解釈の幅があることで、皆が自信を持ってバリューに即した行動に繋げにくく、本質的なカルチャーに結びつかなかったのです。
例えば、バリューのひとつである「Team Medii」を見たときに、どんな状態がいいチームなのか?そのためにどうしたらいいのか?などの疑問が生まれ、行動指針が明確でないために、「チームで動く」行動に繋がっていませんでした。
そこでCOOの筒井さんと設計し直したのがこの3つのバリューの解説と、バリューに基づく「行動指針」の言語化です。
「カスタマーハピネス」については、カスタマーとは誰を示しているのか?という抽象性が課題でした。私たちは、カスタマーとは皆が対話する、関わる相手全てであり、その中でも優先するのはユーザーである「医師」とその先の「患者」であるという意思統一をしました。また、ビジネスパートナーであり事業のペイヤーである「製薬企業」にとっても彼らの軸で求める短期的なハピネスを追ってしまうと中長期的に「医師」のハピネスに繋がらなければ、それは製薬企業にとってもの最終的な「ハピネス」に繋がらないよね、という考え方を明確にしました。
「成果最大化」というバリューでは、何をしたら成果が最大化するのか?何をどうしたらいいの?といったように、具体的な行動に落とし込む際にそれぞれの解釈の違いが生まれてしまう課題がありました。そこで、成果最大化を実現するための行動指針について具体的にイメージしやすい言葉にしました。挑戦せずに新しい価値は生まれないことから、失敗を恐れない姿勢を「まずはやってみよう」と表現しました。また、やってみた上で可能な限り定量化して可視化した上で 、スピード感を持ってより良い方向にアジャストしていく姿勢を「見える化アジャスト」と定義しました。
また、「Team Medii」というバリューについてもメンバーと対話を重ね、バリューに繋がる推奨行動を指針として生み出しました。「ボールキャッチ」とは、皆それぞれが当事者意識をもって主体性ある行動を取ることを意味しています。「Talk&Next」とは、対話によって次のより良い一手を生み出すことを意味し、Mediiの心理的安全性を高めることに寄与しています。
成功に近づく組織に共通するの重要要件とバリューの構造的理解
上述のようにMediiのバリューは他社のバリューを分析、参考にしてきた要素もあるのですが、これらの関係性に何かしらの理由や根拠があると考え調べていくと大変興味深い研究論書に辿り着きました。
ハーバード ビジネス スクールのリーダーシップとマネジメント学のエイミー C. エドモンドソン教授が発表しているThe Fearless Organization: Creation Psychological Safety in the Workplace for Learning, Innovation and Growth(Wiley, 2018)において、組織において高い生産性を出し続けるためには、心理的安全性とハイスタンダードが大切だと紹介されています(下図)。
重要な2ファクターとされる「ハイスタンダード(高い妥協点を持つこと)」をX軸、「高い心理的安全性」をY軸においた上図において、私たちは右上の「学習するアツい組織」を目指しています。まさに私たちが大切にしている「成果最大化」がハイスタンダードに、「Team Medii」が心理的安全性の実現に寄与している結果となっていました。
心理的安全性が高いだけでハイスタンダードが実現されなければ、一種のサークルのようなユルい、ヌルい組織になってしまいます。また、明確に社長やリーダーが正解を導いていけるようなスーパーマンがいて、やるべき仕事がとにかく明確であればトップダウンで右下のようなキツい組織で高い成果が出せていくかもしれません。しかし、様々な内的外的変化が常にある中で、間違ったことを指摘できずにいい方向に向かえない時が出てきてしまったり、その結果離職率が高くなってしまったりするかもしれません。
だからこそ、この両軸がとても重要だと感じています。特に、正解が誰にもわからない、今までなかった新しい価値やビジネスモデルを限られた資源の中でスピード感を持ってあるべき方向性に向かっていけるのか、が求められる組織においては。
ハイスタンダードを掲げて、チームで心理的安全性を保った上で、どんな失敗も前を向いて謙虚に集合知化していける学習するアツい組織が、成功に近づいていけるのではないかと私は考えています。
そして、私たちが最も大切にしている「カスタマーハピネス」という考え方を一番上段の概念として置き、常にカスタマーがどうすれば笑顔になる感動体験をしてもらえるかに拘り続ける。その価値基準があれば、自然とMediiはあるべき方向に向かい、結果としてミッションである「誰も取り残さない医療を」実現していけるのではないかと皆で議論を深めています。
もちろん、バリューやカルチャーだけで完全ではないため、評価・報酬制度やオフィスで顔をあわせるFace to Faceのコミュニケーションを大切にするなど、様々な要素も組み合わせていますが、このバリュー設計が間違いなく心理的安全性とスタンダードを高める両軸で寄与しているという感覚が私たちMediiにはあります。
最後に
私たちMediiを含めて、企業がなぜ、どのような目的でバリューを設計しているのか?
その問いに対する答えは、シンプルなようで実は深く、日常的に触れていたのに敢えて考えたことはない、それがバリューでありその先にあるカルチャーだと思います。バリューとカルチャーの関係性に関してはまた別機会に触れられたらと思いますが、大きな市場で、限られた資源と短い期間でスピード感を持って挑戦し成長することが求められるからこそ、その課題を解決するための軸となるバリューがより大きな役割を果たしているのだと考えています。
とはいえ私自身もまだまだ、日々その本質を模索し続ける道の途中。一つ一つの学びを今の軌跡として記録し、チームで取り組むこと、バリューとは何かという答えのないこの自分自身への問いを通じて、このnoteが誰かの悩みを晴らす一助に、そして社会がさらに前進する一助になれればと願っています。
では、また次の記事で!