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TKA術後急性期の寒冷療法の効果
急性期病棟に勤めていると,TKAに限らず術後急性期患者の治療戦略として炎症管理は非常に重要な要素になってきます。その中でも寒冷療法は,ほとんどの病院で実施しているのではないでしょうか?
何気なく行っているアイシングですが,どのような効果があり,どのような方法が良いかは,なかなか意見の分かれるところでもあります。
今回は寒冷療法について,ガイドライン(APTA)やシステマティックレビューをもとに解説していきたいと思います!
TKA術後の寒冷療法の有効性
いきなりですが結論です。
”寒冷療法は腫脹軽減効果は乏しいが,術後急性痛管理のツールとしては有用である”
どうでしょうか?
腫れているから寒冷療法を実施しているという方は,驚かれるかもしれませんが,近年のガイドラインなどでは寒冷療法に腫脹軽減効果はないという風にコンセンサスが得られています。
それでは各エビデンスをチェックしていきましょう。
寒冷療法の疼痛管理に対する効果
“TKA術後患者の術後早期の疼痛管理のために寒冷療法を指導し実施していくべき”
エビデンスの質(高),推奨度(中)
上記のように疼痛管理のために寒冷療法を実施することが推奨されています。
また,低コストで実施することができ,適切に処方すれば害やリスクが少ないことも推奨される理由となっています。
寒冷療法の腫脹軽減に対する効果
一方,TKA後の腫脹軽減を目的とした寒冷療法の効果をまとめたシステマティックレビューでは,以下のように報告されています。
“8つの介入研究のうち6つの研究で有意差が得られなかったとされており,寒冷療法が腫脹を軽減するという証拠は不足している”
従来は腫れているから冷やすという考えも多かった印象ですが,科学的根拠は乏しく,寒冷療法は腫脹に対してではなく,あくまで疼痛管理として実施していくというのが近年ではスタンダードだと考えられています。
具体的な方法・まとめ
それでは,どのような方法が良いのでしょうか?
これは意見の分かれるところでもあり,APTAガイドラインでも,実施時間や継続期間を特定する十分な証拠はなかったと結論付けられていました。
温度に関してですが,皮膚表面温度が13.5℃以下であれば疼痛軽減効果が確認できる(Bugaj 1975; Chesterton et al. 2002)との報告がありました。
実施時間については様々な報告がありますが,10~20分というものが多く,中には30分ほど実施している論文もありました。
また冷やしすぎることによって,必要以上に炎症を抑えることにより組織治癒まで遅らせてしまうリスクや,凍傷のリスク,不快感による疼痛感受性の増悪なども想定されますので,上記のエビデンスはあくまで参考にしながら,患者様ごとに反応を見て適切な時間や頻度を設定して行く必要があると思います。