
産業医ってなんだろう?(その前に)
産業医のイメージ
産業医って聞かれたことはあるかもしれませんが、見たことはないって方も多いのではないでしょうか?兎にも角にも、医師である自分も学生の時には勉強したものの「実際には患者さんを診ない、病院に行かないスーツ着て会社や工場に行くお医者さんでしょ?」って感じでした。これから、産業医のお話をしていきたいのですが、まずはこれを書いている自分がどんな人間かお話しますね。
あなたはなにもの?(前編)
「どんな病気でも怪我でもなんでも見れるお医者さんをめざして」と書くと聞こえがいいですが、単にがんとか白血病とか長い時間、患者さんに向き合わなければいけない病気より、目の前で困ってる人にとりあえず何かできる医師を目指して救命救急医になりました。正式には救急科専門医(救急医)といいますが、我々のあるあるで「先生は何が専門ですか?」と聞かれ「救急です」と答えると「それで何が専門ですか?」と聞かれることがよくあります。これは一般の方だけではなく、同業者である医師にも聞かれます。確かに、日本では多くの内科や外科、他科の先生が救急の患者さんを診ています。日本では救急患者さんをお医者さんみんなで見ましょうねってシステムになってます。これって当たり前のように見えますが、世界的にみると案外特殊なんですよね。
日本の救急医療体制
お隣韓国や台湾でも、最近はアメリカナイズされ、救急の患者さんは救急医や救急科しか見ないというふうになってきてます。一見分かりやすくて、とってもいいようなシステムにも見えますが、自分に置き換えるとどうでしょうか?例えば風邪ひいたらどうされますか?まず近所の内科の診療所でさっと検査して薬をもらいたい。持病があったら主治医の先生に診てもらいたいなどあるのではないでしょうか?それをすべて救急科(ER)で救急医が見ますってのが欧米スタイルです。日本では救急医療は3層構造になっており、簡単に言うと軽いけがや病気は診療所・クリニックへ(一次救急)、入院や専門が必要な患者さんは救急病院へ(二次救急)、ショック状態や意識状態が悪い方は救命救急センターなどの(三次救急)へ運ばれることになっています。もちろん主治医の先生に相談すれば、そこで診てもらえなくても、すぐ紹介状を書いてくれます。
あなたはなにもの?(後編)
救急科専門医の半数以上は救命センターで働いており、自分もそこに属してます。なので救命救急医と書いてます。じゃあ救急科専門医って何が専門なの?って聞かれると、一応、外傷、集中治療、熱傷、中毒、災害医療って答えています。でも自分たちが属している日本救急医学会の救急科専門医の理念というところに救急科専門医は「重症度・罹患臓器にかかわらず対応でき、初期治療から集中治療の中心的役割を担い、地域医療、災害医療も担うことが可能な医師」て書いてます。また使命として「医の倫理に基づき、疾病の種類にかかわらず、救急搬送中心に初期診療にあたり、必要に応じて他科専門医と連携し、地域全体の救急医療の安全確保の中核を担う」とも書いてあります。極論いうと「つべこべ言わず、やばい人は受け入れて、まず診よう」という、専門性を否定する専門医です。ということで医師になってから四半世紀以上、救急以外にも外科や脳外科で研修し、病院だけでは解決しない問題は、行政にいけば変えられるかもしれないと思い行政機関にも飛び込み、数年前から現場に知見を還元できればと思い、救命救急センターに戻りました。そして数年前に産業医の資格をとり、嘱託の産業医も始めました。
今後の予定
もしニーズがあれば救急医、産業医の双方の立場から、社会で働くすべての方が、病気やけがにならない体制をめざす産業衛生についてや、救急医療、災害医療の現場のリアルなお話できればと思います。お付き合いお願いいたします。(こんなん聞きたいというのがあればレスくださいね!)