目的別 システム構築のポイント⑤
今回は、「地域包括ケアシステム・地域連携の強化」を目的としたシステム構築のポイントです。
■入退院支援業務における地域連携強化のポイント
そもそも「地域包括ケアシステム」とはなんでしょう?
高齢者が住み慣れた地域で、自分らしい生活を最期まで過ごせるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援をシームレスに提供するシステムのことです。
国は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。
その中で医療機関の役目としては、患者にとっての自宅療養と入院生活とのギャップをいかに少なくするかということではないかと思います。
入退院支援業務というのはそもそもそのための業務だと言えますが、さらにそこからもう一歩踏み込み、患者の担当ケアマネジャーや在宅医、訪問看護ステーションとの情報共有や連携を強化することが必要です。
そのために優先度を上げる工程のひとつが「介護支援等連携指導」です。
入院前や入院時のヒアリングで、患者に担当ケアマネの氏名を確認したら、すぐにその方に連絡し、入院前の患者の情報やケアプランの提供を求めます。担当ケアマネがいない患者のうち、介護サービスが必要となる可能性がある場合は、患者やその家族と相談し、担当ケアマネの選定を行いましょう。昨年の診療報酬改定で、テレビ会議システムを用いたカンファレンスでも良いことになったので、必ずしも来院してもらう必要はありません。
介護支援等連携指導は、入院中2回実施します。1回目は入院後できるだけ早く、2回目は退院時期が決まったらすぐにでも実施できるような運用を構築しましょう。
4.初回の指導は、介護等サービスの利用の見込みがついた段階で、退院後の生活を見越し、当該地域で導入可能な介護等サービスや要介護認定の申請の手続き等の情報について、患者や医療関係者と情報共有することで、適切な療養場所の選択や手続きの円滑化に資するものであり、2回目の指導は、実際の退院を前に、退院後に想定されるケアプラン等の原案の作成に資するような情報の収集や退院後の外来診療の見込み等を念頭に置いた指導を行うこと等を想定したものである。
※「介護支援等連携指導料」の関連通知抜粋
もう一つの大事な工程は「退院時共同指導」です。
患者に担当の在宅医がいる場合、退院時期が決まったら早急に在宅医と共同で患者やその家族に対するカンファレンスを実施します。
その際、在宅担当の歯科医師や保険薬局の薬剤師、ケアマネジャー、訪問看護ステーションの看護師などがいる場合は、その方たちも参加できるよう調整しましょう。
介護支援等連携指導と同様に、テレビ会議を用いたカンファレンスでも可能なので、あらかじめ地域の在宅医等とカンファレンス日時の調整方法を決めておくことも大事です。
■地域連携担当部門との連携
病院の中には「入退院支援部門」と「地域連携部門」が分かれているところがあります。
患者の入院前説明~退院支援計画作成までは入退院支援部門、介護支援等連携指導や退院時共同指導、患者の転院先探しは地域連携部門、という役割分担になっているところも多いようです。
このような場合でも、部署の垣根を越えて情報がスムーズに共有できる仕組みを構築することが重要です。
運用開始後も定期的な業務担当者へのヒアリングや業務分析を行うことにより、情報共有を阻害しているものや、運用のボトルネックの有無を確認しましょう。
■まとめ
「地域包括ケアシステム・地域連携の強化」を目的とした入退院支援業務は下記のポイントをおさえましょう。
・介護支援等連携指導、退院時共同指導をいかに効率的に行うかという点に着目して運用を構築する
・地域連携部門と入退院支援部門との情報共有がスムーズに行える仕組みを構築する