メディカルイラストレーターになるには 〜採用担当がよくもらう質問〜
こんにちは。
(株)メディックメディアのメディカルイラストレーター(MI)、おにくです。
おにくは一応リーダーなので、MIの採用を担当しています。
2月から弊社でも新卒採用の応募受付が始まったので、今回は弊社に興味を持ってくれる学生さんからよくもらう質問について、私見を述べてみたいと思います。
※あくまで「メディックメディアのMI」についてのお話です。所属する会社や、依頼内容などによって異なると思います。
MIって何するの?(メディックメディアの場合)
メディックメディアでは、イラストを描くだけに留まらず、いろんなことを担当します(詳しくは「漫画で見るメディカルイラストレーターのお仕事」も見てみてくださいね!)。
イラスト作成
組版(文字とイラストを配置して書籍の紙面データを作る)
デザイン(紙面、書籍の表紙、アプリのUIなど)
販促物作成(広告、パンフレット、POP、web用バナー・動画など)
その他コンテンツの作成(2Dアニメーション、3DCG、webコンテンツ用プログラミングなど)
なんで紙面データ作成やデザイン、販促物作成までMIがやるのか?
それは、MIが主に制作している『病気がみえる』という書籍の特徴にあります。
『病気がみえる』では「ストレスなく情報が目に入る」≒「目に入る順序通りに読み進めれば理解できる」ような紙面配置を目指しています。
そのため、文章とイラストをどのように配置すればいいのか、その配置ならどういう形のイラストにすればいいのか(またはイラストの形や大きさによって全体の配置を検討する)、などにこだわる必要があり、組版とイラストを分業するよりはMIが手を動かしながら考えた方が効率よく狙い通りの紙面ができるのです。
また、書籍を作る際には対象読者についてリサーチし、「どんな絵柄が好まれるのか」「どのような表現が伝わりやすいか」などを検討しています。その情報は書籍カバーや販促物を作るうえでも活きてくるため、MIが作ることでより対象読者に効果的なアプローチができると考えています。
最近メディックメディアで力を入れているのが「5. その他コンテンツの作成」です。
書籍としてまとめられた情報はもちろん有用なのですが、さらに理解を深めたり記憶しやすくしたりするための表現方法を常に模索しています。
そのため、若いMIに動画の作り方を教えてもらったり、3Dが得意なMIを新たに採用したりなど、2Dの静止画に留まらない「わかりやすさ」を作る方向性になってきています。
なので、イラストに加えて3Dやアニメーション作成のスキルがあると活躍の幅が広がります!
MIに大事なことは?
「イラストレーターなのにイラスト描かないのかよ!」というツッコミはごもっともです(もちろん描きますけど)。
ですが「MIの仕事」という視点でその根幹はなんなのかを考えると「わかりやすい表現を作ること」です。「わかりやすさ」とは、「情報の整理」「誤り無く伝わる表現」「記憶に残るインパクト」だと私は考えています。
例えばイラストは、「写真では見えづらい深部の構造」や「正常と異常の比較」など、情報を整理(取捨選択)して見せることができます。
これは「写真とイラスト」という2Dの静止画だけでなく、「実写動画とアニメーション」や「実物と3DCG」についても同じことがいえます。
例えば、特徴的な動きが起こる「●●病を知りたい」と思ったときに、実際に患者さんが動いているのを見るのは「本物」なのでとても役立ちます。
ただし、そこには余計な情報も入ってきます。
患者さんの容姿、服装、周りの音、光、色、などなど。
自分が病気を理解しないと「動き」という見るべきポイントの取捨選択が難しいのです。
そこで、のっぺらぼうで服も着ていないシンプルな人体モデルを、地面だけがある背景で動かした動画を作ります。そうすると、病気のことを知らなくても、特徴的な動きにフォーカスしやすくすることができます。
つまり「イラストを描く」ということと「動画やモデルを作る(それらを動かすプログラムを書く)」ということの、考え方の根っこは同じだと思うのです。
先に挙げた「誤り無く伝わる表現」「記憶に残るインパクト」も同じことです。
メディカル「イラストレーター」という名称ではあるけれど、その表現はイラスト以外にも様々な方法があります。それらを駆使して「わかりやすい」を作る、それがメディックメディアのMIが大事にしていることです。
MIになるために学んでおいた方がいいことは?
これはとてもよく聞かれる質問です。
内定後、入社までの期間にも聞かれることが多いです。
イラストを練習する、というのは、実は的外れです。絵が上手なことはもちろん大前提ですが、イラストレーターのお仕事をしたいと思って応募してくる人は、大体すでに十分上手ですし。
業務に使用するアプリケーションを練習しておく、というのも別に必要ないです。なぜなら、入社後に外部のスクールで基礎から学んでもらい、あとは指導役の先輩がOJTで教えてくれるからです。逆にいえば、これは「学べば誰でもできること」です(使いこなすというのはまた別の話)。
これまで述べたように、MIの仕事の根幹は「わかりやすい表現を作る」=「情報の整理」「誤り無く伝わる表現」「記憶に残るインパクト」なので、それらを意識したイラストやモデル、動画などを作れる人が、MIとして必要な人材になります。
では、それらはどうしたら意識できるようになるのでしょう?
答えは「描くものに対する理解力」です。
病気のイラストを描こうと思ったらその病気について理解する必要があります。どうやって発症するんだろう、どうしてこの症状が出るんだろう、痛いのかな、かゆいのかな、濡れてるのか、乾燥してるのか、どうしてこの治療が効くんだろう、など。臓器を描くなら、その臓器がどういった組織でできていて、どのように動くのか、どのような役割があるのか、を理解して描かないと、わかりやすいイラストは描けません。
渡されたラフの通りに漫然と描いただけでは「ただの上手なイラスト」です。
何が大事なのかを自分自身が理解した上でどのような表現にするかを考える事がMIにとってもっとも重要なのです。
理解する方法として「自分で調べる」以外に、授業の内容でわからないことを先生に質問したり、テスト前によくわかってそうな友だちからポイントを教えてもらったりとかするのは、とても役に立ちます。
なぜかというと、実際の業務では内容を作るのは主に編集者であり、編集者とのコミュニケーションによって何を強調したいのか・したくないのか、本当は何を表現したいのかなどを聞き出す必要があるからです(的確な質問をするためにはある程度自分で調べて理解する力も必要になります)。イラストレーターは、ラフに書いてある以上の情報を編集者から引き出して、より良いものにするお仕事です。
なので、何か学んでおくとしたら「理解するために他人から話を聞きだしてまとめる練習」でしょうか。たとえば、自分の受けていない授業の内容を、受けた人から聞き取ってビジュアル化し、プレゼンする、とか。
さいごに(こんな応募書類はイヤだ!)
採用の際は、これまで述べたようなことができそうな人を探しているのですが、第一段階の書類選考でたまにある「ウーーーン……わからん」となりがちな、判断に困る応募書類の例を挙げておきますね……。
送られてきた作品が1例のみ(奇跡の1枚よりは普段の平均値が見たい)
静物画や風景、抽象的なイラストのみ(医学書の出版社なので……具体的なシチュエーションとか、人間を描く機会の方が多いです)
リアル系、デフォルメ系どちらかのみ(いろんなバリエーションが見たい)
ほぼ図形で描かれたフローチャートや実験手順などのみ(図形だけで画力の判断は難しい……)
チュートリアルに沿って作った3D、動画などの作品(自分で応用して作った作品が見たい)
二次創作の絵などは全然構いませんよ! おにくの好きな作品があるとたまに喜んで見ています(選考基準には関係ありません。喜ぶだけです)。ただし、見たままを真似して描いたものなどは普段の絵柄がわからないので避けるようにしてくださいね。
漫画の場合は、背景が3Dではなく手描きのページの方が、何が上手なのかがわかっていいです(自分で作った3Dモデルを使用している場合はそれを書いておいてもらえると、すごーい!ってなります)。
メディックメディアのMIは医療系・生物系出身者が多いですが(医学的内容を理解するための基礎を学んでいるので有利といえば有利)、最近では芸術系出身者も増えてきており、イラスト+αの得意分野も活かしてそれぞれ活躍しています。いろんなことを学んでいる人が集まると様々な視点や考え方でより良いものが作れるので、学部を問わず募集しています!
ちょっと興味あるな……と思った方は、ぜひ採用サイトを覗いてみてください!