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検索系生成AI時代の医院集患:Googleビジネスプロフィールでの情報量が成否を分ける
はじめに:変わる医療機関の選び方
イメージ写真はスマートフォンで音声検索を行っているイメージですが、このような形は今まではお店を検索する方法として「近くのイタリアン」という感じで行われたものでした。しかし、
「子連れでも安心して診てもらえる、夕方まで診療している小児科を探しています」
このような会話のような検索が、今後はもっと当たり前のように行われてくるかもしれません。それはOpen AIのChat GPTやGoogle Geminiなどの生成AIだけでなく、Perplexity、Genspark、Felo AIなどの検索系生成AIが、この問いかけに対して蓄積された大量の情報を参照し、候補となる医療機関を詳細に提示できるようになってきたからです。
たとえば、
「○○小児科クリニックがおすすめです。19時まで診療しており、待合室にキッズスペースを完備。口コミでも『子どもへの接し方が優しい』『夕方の診療でも丁寧に診てくれる』
という評価が多数。また、院内の写真からは清潔で明るい雰囲気が確認でき、定期的な投稿で感染症情報も発信しています」
こうした具体的な推薦内容は、Googleビジネスプロフィール上の情報を検索系生成AIが取り込み、要約しているからこそ実現します。本コラムでは、検索AI・AIエージェント時代において、医院の“集患”を左右するGoogleビジネスプロフィール(以下GBP)の重要性と、その運用方法を
に焦点を当てつつ解説します。
なぜGoogleビジネスプロフィールの情報量が重要なのか
1. 検索系生成AIが拾う情報の幅が広がる
検索系生成AIはキーワードだけではなく、自然な文章や会話形式の質問からユーザーの意図をくみ取り、適した答えを導き出します。
この際、GBPにある情報——たとえば「診療時間」「口コミ」「写真」「投稿」「FAQ」——が多ければ多いほど、AIによる回答が具体的かつ信頼性の高いものになります。
基本情報:診療時間や休診日、アクセスなどが正確に登録されていれば、AIはユーザーにスムーズなルートや時間帯を提示できます。
写真:外観や内観、スタッフの様子などが掲載されていると、医療機関の雰囲気をAIが参照し、ユーザーに「子連れでも安心」「清潔な設備がある」といった要素を伝えられます。
投稿内容:季節の健康情報や診療の新着情報を投稿していれば、AIは「この医院はインフルエンザ予防接種をいつ開始しているのか」といったタイムリーな情報も提示できます。
FAQ:受診方法や保険適用などのよくある質問を整備しておけば、AIはより精度の高い回答をユーザーに返すことが可能です。
口コミ:実際の患者体験を反映した口コミほど、AIが「どんな強みがある病院か」を判断する大きな材料となります。
2. 患者の検索行動が“より自然で詳細”になっている
従来は「○○駅 小児科 夜間」などキーワード主体だった検索が、今後は「子どもの鼻水がひどい。○○駅近くで夕方以降も診察してくれる医院は?」といった自然な文章での検索の形が増えてくると予想しています。こうした自然文検索への最適な回答を導き出すためには、施設が公開する情報の量と質がそのまま医院の“見つけやすさ”や“選ばれやすさ”を決定づけるのです。
情報量を増やすための実践戦略
ここからは具体的に、情報量と質を高めるための施策を紹介します。
1. 写真の定期的アップロード
週次更新
待合室の様子:季節の装飾や、子ども向けスペースの新設など変化があればすぐに撮影
施設の清掃状況:清潔感を伝える写真は重要な安心材料
月次更新
医療機器の紹介:専門性を写真でわかりやすく提示
スタッフの様子:スタッフの笑顔や研修風景を載せると“人”の雰囲気が伝わりやすい
視覚情報はAIにとっても重要な素材です。たとえば、待合室にキッズコーナーがある写真があれば、「子連れでの受診が安心」とAIが要約しやすくなります。
2. 投稿の充実化
毎日投稿
当日の診療情報:診療時間の変更や混雑具合の目安
待ち時間の目安:リアルタイムでは難しくとも「本日午前中は混雑中」「午後2時以降がおすすめ」などの目安を提示
週次投稿
健康情報の発信:季節性の感染症情報や健康対策
医院からのお知らせ:新しい検査メニューやワクチン接種開始など
月次投稿
季節の健康アドバイス:花粉症対策や熱中症予防など
特集記事の投稿:たとえば「予防接種Q&A」「乳幼児健診の流れ」など
毎日・週次・月次で更新計画を立てることで、新鮮な情報を患者と検索AIの両方に提供できます。
3. FAQの体系的な整備
基本情報
初診の方法、オンライン予約の有無、保険証や子ども医療証の確認など
専門情報
症状や検査・治療に関する質問:小児科なら「子どもの熱が何度以上なら受診すべき?」など
施設案内
バリアフリー設備の場所や駐車場の使い方など
FAQは検索系生成AIが“患者が知りたい詳細情報”を拾いやすくするうえで非常に有効です。
4. 口コミ収集と返信の戦略
収集方法
診察後のお願いカードの配布:丁寧に口コミ協力を呼びかける
スタッフによる声かけ:満足度が高そうな患者に「良かったらご意見をぜひ」など
返信のポイント
24時間以内の対応:早い対応はそれだけで誠実さを感じさせる
具体的な感謝の言葉:投稿した患者が「投稿してよかった」と思えるよう配慮
改善点への誠実な対応:ネガティブな口コミにも真摯に向き合う
医院の特徴をアピール:返信の中で「当院では待ち時間短縮のためオンライン予約を導入しています」など追加情報を補足
口コミは最重要の情報源となり、AIが「どのような患者におすすめなのか」を判断する手がかりを提供します。
ストーリー:実際のユーザー行動から見る情報量の威力
Aさん(30代・子ども2人の母)のケース
検索開始
子どもの咳が止まらず悩むAさん。「夜19時まで診てもらえて、小児科専門で子連れでも安心できる医院は?」とスマホで検索。検索系生成AIの回答
AIが「●●小児科クリニック」の名称を挙げ、19時まで診療、キッズスペース完備、子どもへの接し方が好評と要約。GBPの確認
AさんはAIが提示したその医院のGBPをチェック。診療時間やアクセス、写真で院内の様子を確認し、「確かに子ども向けスペースがしっかりある」と安心感を得る。口コミの閲覧
「夕方でも丁寧」「子どもが嫌がらずに通える」といった実際の口コミを見て、「ここなら安心!」と確信。オンライン予約
GBPに掲載されたオンライン予約リンクから即時予約。診療時間ギリギリでも受診可能なことがわかり、その日のうちに受診できた。
この一連の流れがスムーズに行われるかどうかは、すべてGBPの情報量と質にかかっています。 AIは多方面から情報を収集するので、どの要素が欠けても、ここまで具体的な院選び体験は実現しません。
情報量の質と量を両立させるポイント
投稿計画の策定
年間の投稿カレンダーを作成し、季節性の情報(花粉症、熱中症、インフルエンザなど)を事前に準備。
担当者を決め、どの曜日に何を投稿するかを明確化。
写真撮影のルーチン化
撮影担当を決め、院内清掃やレイアウト変更などのタイミングで定期的に撮影。
アップロード手順をマニュアル化し、誰が見てもわかりやすい運用を心掛ける。
FAQ更新の仕組み化
受付や診療時に多い質問を随時メモし、一定期間ごとにGBPのFAQに追加。
新しい検査や治療法を導入したら、そのたびにFAQを更新。
成功事例に見る効果
実際に情報量を増やした医院のビフォー・アフターのイメージを示します。
Before
基本情報のみ(住所・電話番号・診療時間など最小限)
写真5枚程度
投稿なし
FAQ未整備
口コミ10件
After(3ヶ月後)
写真30枚以上
週3回の投稿(感染症情報、院内の様子、スタッフ紹介など)
FAQ30項目(受診前の準備、保険証の扱い、オンライン予約の方法など)
口コミ50件以上(「子どもへの対応が丁寧」「院内が清潔」など具体的な声)
新規患者60%増加
この結果をもたらしたのは、検索系生成AIからの「おすすめ」にヒットしやすくなったことや、患者が事前に得られる情報が増えたことで安心して来院できるようになったからです。
まとめ:情報量が競争力を決める時代へ
検索系生成AIは、膨大な情報を元に「患者が求める要素」を抽出し、わかりやすく提示します。そのため、Googleビジネスプロフィール上の情報量の多さと正確さは医院の“競争力”に直結します。
基本情報の正確さ
視覚的情報(写真・動画)の豊富さ
定期的な投稿(新着情報・季節の健康情報)の更新頻度
FAQの充実度(患者が抱える疑問を先回りして解決)
口コミの量と質(具体的な声と迅速かつ誠実な返信)
これらをバランスよく整備することで、AIからの推薦機会が増え、結果として多くの新規患者の来院につながります。
今後求められる姿勢
継続的な情報発信
検索系生成AIに対しては、静的な情報よりも動的な更新が重要です。定期的な投稿を継続し、季節性のある情報を積極的に提供しましょう。患者目線の運用
医療専門家の視点だけでなく、「患者が何を不安に思っているか」「どんな情報が欲しいのか」を想像して、FAQや口コミ返信などを整備する必要があります。変化への柔軟な対応
AI技術は日進月歩で進化しており、今後も新機能が追加される可能性があります。常にアンテナを張り、GBPの新しい活用法やアップデートに対応できる柔軟さを持ちましょう。そのほかの媒体での展開
GBPの運用は大事ではありますが、合わせてホームページ、SNSなどの発信も大事です。可能であれば何かの媒体に取り上げられるなどのものもあると、AIが判断する材料が増えて、発信していないところとの比較で優位になります。AIエージェントでは判断する過程も飛ばして結果のみの表示になるため、“発信”は重要ですので、意識した運用の仕組みづくりが大事になってきます。
おわりに
「子どもと一緒でも安心して通えるクリニックを見つけたい」「できれば夕方以降も診てもらいたい」というユーザーの自然な検索に対し、検索系生成AIがあなたの医院をピックアップし、詳細な情報を提示してくれるかどうか——それを左右するのが、Googleビジネスプロフィールにどれだけ情報を載せているかです。
これからのAI時代、患者が行動を起こす鍵は「どこを選んだら安心か」を“具体的に”提示する情報量にあります。情報量を増やし、内容を充実させることは、そのまま「患者の不安を解消し、安心して来院してもらう」ことにつながる。ぜひ本コラムを参考に、GBPの運用を見直し、検索系生成AI時代の集患戦略を今から整えてみてください。あなたの医院が「選ばれる存在」になる大きなステップとなるはずです。
一般社団法人 九州メディカル・パートナーズ
理事 上田 浩二