『受精卵の形状について』 布施信彦 医師
『受精卵の形状について』 布施信彦 医師
体外受精ではその受精卵の発達程度・形状についてよく話が出る。
卵子と精子が体外受精でくっついた(受精)した場合に、そのグレードを記録していく。
初期分割胚と胚盤胞のグレード分類で(例えば体外受精をされた皆さんが心配される、3AA、3BBといった分類です)
ここでは、分類法の詳細は割愛します。
受精卵が一つしか形成されない場合は、このグレードが低くてもそれを子宮内に戻してゆくことは多い。あまりにグレードが低い場合は、この度は諦めるという選択もクリニックは行うかもしれない。
複数の受精卵が形成された場合、グレードの高い順番で子宮内に戻します。
経験的には、卵巣を刺激して採卵した場合に、やっと、一つ取れたかぐらいであると
グレードの高い低いに完全一致はしないけれども、グレードが低かったり、形状が綺麗でなかったりする確率が残念ながら高くなっています。
この場合、産科クリニックは、もちろん積極的に、子宮内に戻す操作をしますが、
着床する確率は低く、また仮に着床に至っても流れてしまうケースが多いです。
このあたりは難しいジレンマがあります。
経験的には、それを繰り返しても、可能性はほとんどない。
でも、そのことを伝えるのは難しい。
可能性がゼロに近いのかもしれないが、ゼロではないからです。
他の医師とこのことについて話をしたことがあります。
その先生は、多分、何回も何回もトライして、ダメな場合、ご本人からやらない、つまりクリニックに来なくなります。と。
このあたりになってくると、ご本人も辛く感じる時期が長くなるのと、費用はかかるわけなので経済的損失も大きくなってしまいます。
私は体外受精のクリニックを経営する医師ではないので、クリニックサイドに立つわけではなく、シンプルに全体を俯瞰できます。
だからここで、本音と実情を、私が感じたまま、表現しています。
私が興味を持っている世界は、細胞そのものです。
すべての生物の細胞の分化は、非常に美しく、エネルギーがあり、未知なことが99%あるように思えます。
その未知のものが、生物を作り上げている。すごいことです。
細胞の話をしてもみなさん興味があまりないと思いますので
元の話に戻しますと、体外受精のクリニックを、経済的に分析するならば、
体外受精のクリニックなので、子供がすぐできてしまうと、儲かりません。
利益のほとんどが、年齢の高い、妊娠しにくい、先ほどのような方々からあげています。
若い方は、「なんか妊娠しないのですけどー」と来ても、月経周期を合わせて、精子を子宮内に入れる人工授精(体外受精ではない)で、すぐ妊娠してクリニックを卒業してしまいます。これは治療費が「安い」ので利益にあまりなりません。
こんな話を書くと、悲しくなってくるので、なんとも嫌な話です。
布施信彦 医師