忘備録>北米・南米・アフリカの健康保険制度
北米
1. アメリカ合衆国
特徴: アメリカでは公的医療保険と民間医療保険が混在しており、完全な国民皆保険制度は存在しません。主に以下のプログラムがあります。
Medicare: 高齢者(65歳以上)や特定の障害を持つ人々を対象とする連邦政府の健康保険プログラム。
Medicaid: 低所得者層を対象とした連邦および州政府が運営する健康保険プログラム。
民間保険: 民間保険は主に雇用主が提供するものが多く、個人が保険を購入することもあります。民間保険は保険料が高額で、自己負担も大きいのが特徴です。
問題点: アメリカでは、保険のカバレッジが十分でない人や無保険者が多く、医療費の自己負担が非常に高いという問題があります。また、薬価が他国に比べて非常に高く、医療アクセスに大きな格差が存在します。
改革の方向性: オバマケア(Affordable Care Act, ACA)により、無保険者の削減や保険のアクセス改善が試みられましたが、未だに高額な医療費が大きな問題です。将来的には国民皆保険制度を導入するかどうかが大きな政治的議論の中心となっています。
2. カナダ
特徴: カナダは「単一支払者制度」(Single-Payer System)を採用しており、国民皆保険制度が確立されています。各州が公的医療保険を運営し、全てのカナダ国民および永住者は基本的な医療サービスを無料で受けることができます。
問題点: 医療費は税金で賄われるため、患者の自己負担はほとんどありませんが、待ち時間が長いことが問題となっています。特に専門医へのアクセスや手術の待ち時間が長いことが批判されています。
改革の方向性: 待ち時間の短縮や医療システムの効率化が求められており、医療技術の向上やデジタル化の導入が進められています。
南米
南米諸国の健康保険制度は、経済状況や医療インフラの整備により大きな格差があります。全体的に、公共医療制度が主流ですが、医療アクセスや質に関しては地域ごとの格差が課題となっています。
1. ブラジル
特徴: ブラジルでは「統一健康システム(SUS)」が1990年に導入され、全ての国民が無料で医療サービスを受けられる国民皆保険制度を採用しています。医療サービスは公立病院で提供され、私立保険も存在しますが、高所得層が中心です。
問題点: 公立病院の医療サービスはアクセスが悪く、特に地方部では医療インフラが不足しており、質の高い医療が提供されていないことが課題です。公的医療の待ち時間も長く、民間医療に依存する層が多いです。
改革の方向性: 医療インフラの改善や、医師や看護師の育成が急務です。また、地域間の医療格差を解消するための政策が必要です。
2. アルゼンチン
特徴: アルゼンチンでは、公的医療保険と民間医療保険の両方が存在し、国民の多くが加入しています。公的医療は政府が提供し、基礎的な医療サービスが無料または低コストで利用可能です。企業が従業員に対して提供する私的医療保険も一般的です。
問題点: 公的医療機関のインフラは不足しており、地方では特に医療サービスの質に大きな差があります。また、経済危機が続く中で、医療財政の持続可能性が懸念されています。
改革の方向性: 公的医療の質向上や医療インフラの整備、医療従事者の増員が重要な課題となっています。
3. チリ
特徴: チリの健康保険制度は、公的保険と私的保険が並存する「混合型システム」です。国民の約70%は公的健康保険「FONASA」に加入し、残りの約30%は民間保険「ISAPRE」に加入しています。公的保険は低所得者層を中心にカバーし、私的保険は高所得者層が主に利用します。
問題点: 公的医療保険に加入している人は、医療アクセスが限られており、質の低い医療を受けることが多いです。また、私的保険を利用する人々との間で医療格差が広がっています。
改革の方向性: 公的医療保険の充実と、医療格差の是正が重要な課題です。
アフリカ
アフリカでは、多くの国で公的な健康保険制度が存在するものの、制度の運用が不十分な国が多く、医療サービスの質やアクセスが問題となっています。財政的な制約、医療インフラの不足、医療従事者の不足などが共通の課題です。
1. 南アフリカ
特徴: 南アフリカは、医療保険制度として公的保険と私的保険が並存しています。公的保険は低所得層向けに無料の医療サービスを提供していますが、多くの富裕層や中間層は民間医療保険に加入し、私立病院で医療を受けます。
問題点: 公的医療は資金不足で、サービスの質が低いことや待ち時間の長さが問題です。さらに、貧富の差が医療の質に反映されており、私的保険に加入できる層とできない層で医療アクセスに大きな格差があります。
改革の方向性: 国民健康保険(NHI)の導入が進められていますが、財政的な課題や医療インフラの不足を克服する必要があります。
2. ケニア
特徴: ケニアは「国民健康保険基金(NHIF)」という公的保険制度が存在し、全国民が加入できますが、カバレッジは限定的です。また、私的医療保険も一部の富裕層向けに提供されています。
問題点: NHIFは医療費の一部をカバーするだけで、特に貧困層は医療費の自己負担が大きく、医療サービスへのアクセスが困難です。医療インフラや医師の数も不足しており、地方部では特に深刻です。
改革の方向性: 医療インフラの整備と、公的保険のカバレッジ拡大が重要な課題です。また、医療従事者の育成も必要です。
3. ナイジェリア
特徴: ナイジェリアは、国民健康保険スキーム(NHIS)という公的保険制度を持っていますが、制度のカバレッジは都市部に限定されており、全体的には保険に加入していない人が多いです。
問題点: 医療インフラが脆弱で、特に農村部では医療サービスがほとんど提供されていない状況です。保険制度も機能しておらず、貧困層にとっては医療費が大きな負担となっています。
改革の方向性: 公的医療保険のカバレッジ拡大と、医療インフラの整備が急務です。国際的な援助や投資も必要です。