19 消化管出血
高齢者の「下痢気味です」には注意が必要です。なぜなら、自分の便をきちんと見ない傾向にある高齢者は、例え黒っぽい水様便が出ていたとしても、同じように下痢気味ですと答えるからです。黒色便は消化管出血を示唆する所見です。ただし、コーヒー残渣様の嘔吐の場合は、それが出ているからといって必ずしも消化管出血の存在を示すものではありません。頭蓋内疾患や腸閉塞が原因で頻繁に嘔吐を繰り返すことによって、嘔吐物がだんだんとコーヒー残渣様になっていくということが起こりうるからです。
消化管出血を疑ったら、それが上部消化管からのものか、下部消化管からのものか区別しなければなりません。そのために、サンプチューブで胃内容物確認と直腸診を行います。出血量の見積もりは、血圧、脈拍、脈圧、体位性低血圧で判断します。
吐血をきたした場合には、肝硬変による食道静脈瘤を予想して、肝硬変の示唆する所見の有無をきちんと調べましょう。蜘蛛状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房、腹水等ですね。ただし、胃潰瘍出血の割合も高い(40%)ので注意が必要です。