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女性放射線科医のリアルライフ~島根大学 放射線科|山本伸子~

年間スケジュール

コロナ禍より前の年間スケジュール(学会、勉強会など)とコロナ禍期間の1年間

<コロナ禍より前>
4~9月頃 日医放総会と秋季臨床大会は専門医更新が近くなると慌てて 行く感じで、参加できない時の方が多い。
7月頃 乳癌学会総会に参加。
その他 地方会(地元または隣県開催時)、マンモ更新講習(5年おき)、海外学会(運がよければ)。
 宿泊を要する出張は年間1~3回。子供の進学などと重なる年度は少な目にしたり、そうでない時は海外出張にも行ったりと、自分の希望というよりも、子供達の年齢や学年を重視してスケジュールを決めていた。
<コロナ禍期間(2020年度)>
4~5月 子供達の小中学校の休校への対応と、大学の医学生の臨床実習及び講義のオンライン化に伴う準備に追われた。
日医放総会 web参加、核医学会PET研修セミナーweb受講
7月 ミッドサマーセミナーweb参加
9月 JABTS web参加 10月 乳癌学会総会web参加、秋季臨床大会web参加
2月 乳癌画像研究会web参加

 学会のweb開催は、主催者側は急な変更で大変ご苦労されたと思うが、現地開催であれば行けない学会・研究会も多いので、個人的には助かった。振り返ってみると、webとはいえ近年になく多数の学会に参加でき、専門医更新のための単位も十分に取得できた。afterコロナでも領域講習などのオンデマンド配信は継続して頂けるとありがたい。

Q1.なぜ放射線科医を選択したのか?

A.学生時代に所属していた部活の顧問がたまたま当時の放射線科教授だったのが一つのきっかけである。コンパの度に放射線科の魅力を熱く語ってくださり、特に女性医師の働き方についても丁寧にお話いただいた。卒後すぐに結婚することが決まっていたため、結婚後も長く働ける診療科を選択したいと考え、放射線科も考え始めた。最終的に、いわゆるマイナー科の中でも全身が診られそうな放射線科を選択した。

Q2.AIへの対応

A.知らず知らずにAI技術の搭載されたものを使用している可能性はあるが、恥ずかしながら研究面、臨床面ともに直接的には関わっていない。私が放射線科医になった頃は、現在のようにPCモニタの前で多くの画像と長時間向き合うことになろうとは思ってもみなかった。今後視力・体力とも更に劣ってくると予想されるので、AIが一次読影(膨大な画像情報からの所見のピックアップ)、医師が二次読影(所見の解釈・診断)をするようなシステムができると助かるかもしれない(助けて欲しい!)

Q3.被ばくへの対応 (自分自身、患者さん)

A.
自分自身
:妊娠期はIVR業務からは外して頂き、読影や超音波検査などを行っていた。現在は読影と検査室当番、超音波検査が業務の中心であり、被ばくを伴う業務には就いていない。一般論だが、放射線科医は他科の医師より被ばくに対する意識が高いため、問題となるケースは少ないと思う。
患者さん:最小限の被ばくで最大限の情報が得られるように努めるべきと考える。目的意識なく広範囲撮影をされているCT画像を見ると、憤りを感じる。現在はできていないが、放射線科医が被ばくも考慮して検査マネジメントをすることは必要であろう。

Q4.仕事とプライベートとの両立

A.現在、高校生と小学生の二人の子供がいる。
 第1子妊娠中も現在と同じ所属だったが、当時は周りに年の近い子育て中の女性医師が少なく、復帰後の働くイメージがわかないまま産休に入った。何となく関連病院で復帰するのかと思っていたのだが、結局、人数のいる大学で復帰する方が急な欠勤などがあってもカバーしてもらいやすいだろうということで、大学に復帰した。医局の先生方には様々なことでご配慮いただき感謝の気持ちしかないが、出産前とは同じペースで働けないことに悶々とすることもあった。
 仕事と育児の両立については長年の悩みである。これは私世代では女性特有の悩みではないだろうか。夫も同業者(外科系)であるが、子供ができてからも働くペースを変えることはなかった。むしろ立場が上がり一層忙しくなり、育児について決して無関心ではないのだが、正直戦力外だった。
 現在は女性医師が増え、出産後も働くことが当たり前となり、就労支援なども手厚くなっている。医局内にも複数の子育て中の女性医師がおり、みな後輩ではあるが、制約がある中でも真摯に働く姿に、私も励みとなっている。若手の男性医師も以前よりも子育てへの関わりが強いように感じる。時に子供さんの体調不良等で欠勤されることもあるが、皆当たり前のように受け入れている。
 やはり、女性医師だけではなく、男女とも、どんな立場の人でも、働きやすい環境が望まれるのだと思う。

Q5.どうやって勉強、または学会や 研究会に参加しているか

A.コロナ禍前は、宿泊を伴う学会出張は年数回に厳選し、夫の出張や子供達の行事と重ならないことを確認してから演題を出して、参加していた。日医放総会などは日曜日までフル参加すると帰ってから家の惨状に後悔することになるため、泣く泣く途中で帰っていた。一度日帰りしたこともある。近隣である研究会は、平日の夜や土日にあるため、ほとんど参加できなかった。
 コロナ禍以降は、学会や研究会がもっぱらwebへ移行したため、参加しやすくなった。オンデマンドなら休日の時間のある時に気軽に聴講できるのでありがたい。新しい知識のインプットの機会はとても増えたと思う。弊害としては、演題を出そうというモチベーションが下がったこと。最近全然演題を出せていない。現地開催ならではの良さもたくさんあると思うので、安心して参加できる日が戻ってきて欲しい。

Q6.やりがい

A.検査業務では、検査前は緊張しておられた患者様が笑顔で検査室を後にされた時、丁寧に診てもらえて良かったなどと直接言ってもらえた時など。
 読影業務では、自分の読影結果と病理診断が一致していることが分かった時、先生の言う通りだったよと依頼医から言ってもらえた時など。

Q7.放射線科医に向いている

A.一日PCモニタの前で画像を見ても苦にならず、どちらかと言えばワクワクする人。想像力豊かな人。縁の下の力持ち的な役割を喜んでできる人。
 いわゆるコミュ障の人は難しいかも。やはり他科の先生とのコミュニケーションがある程度できる人でないと難しいと思う。

Q8.多様性が必要とされる現代で 大切にされていること (患者様の性別など接する際に 心がけていること)

A.超音波検査では女性の患者様を担当することが圧倒的に多い。女性医師が担当した方が良いだろうという配慮もある。若手の頃は年上の女性患者様の対応は何となく苦手だった(センシティブな患者様が一定の割合でおられる印象)が、現在自分がその年代となって、色々と場数を踏んだのもあってか、全くやりづらさはなくなった。女性に限ったことではないが、検査前に室温はどうか、痛い所はないか、などの声かけをしてから始めるようにしている。
 地域柄、高齢の患者様も多いので、検査台への移動時に注意したり、なるべく短時間で行うように努めたりしている。

Q9.美容事情

A.最低限の身だしなみ以外に、特別なことはしていない。コロナ禍以降は常時マスク生活なので、しわやシミが隠せるのをいいことに、さらに怠っている。

Q10.自分への(プチ)ご褒美は? 旅行に行くならどこに行きたい?

A.コロナ禍前に最後に行ったパリにもう一度行きたい!夏季休暇に家族と行く海外旅行が唯一のリフレッシュ、ご褒美であったため、コロナ禍終息後には、また家族で色々な国を旅したい(図1

Q11.最近購入したもの

A.コロナ禍でおうち時間が長くなって、断捨離をした人も多いと思う。私も読影室の私物の書籍を整理したくなって、元々はアナログ人間なのだが、電子書籍に移行しようかと思い立ち、何年か振りに新しいiPadを購入した。今はもっぱらweb学会の視聴で活用しており、書籍の整理はほとんど進んでいないが、初期投資をある程度したので、色々な場面で活用できるようになりたいと思っている。

図1 コロナ禍前に行ったパリのエッフェル塔前で、子供達と。夫撮影。

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