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女性放射線科医のリアルライフ~琉球大学放射線診断治療学講座|土屋奈々絵~

年間スケジュール

 コロナ禍より前の年間スケジュール(学会、勉強会など)とコロナ禍期間の1年間
4月 総会、福岡胸部放射線研究会
5月 特になし
6月 九州地方会(現在は発表者というより若手の指導者として)
7月 池添メモリアル胸部画像診断セミナー、呼吸機能イメージング
研究会サマーセミナー、沖縄MRI研究会
8月 1週間の夏休み(7月から10月の期間に)
9月 磁気共鳴医学会+4D flow研究会、九州MRI研究会
10月 秋季大会+胸部放射線研究会
11月 福岡胸部放射線研究会
12月 RSNA(演題が通っていれば参加)
1月 呼吸機能イメージング研究会(呼吸器内科、呼吸器外科、医
療工学系の研究者も参加される横断的な研究会で非常に勉
強になる)、九州MRI研究会
2月 九州地方会
3月 3日間の春休み(1月から3月の期間に)
ほぼ毎月新沖縄放射線カンファレンス
2年に1回IWPFI-呼吸器機能イメージング研究会の国際学会版。前回
は2017年韓国開催に参加。
4年に1回ACTI-胸部放射線研究会のアジア版、アジア地区開催の学
会はおもてなしが素晴らしいので大好き。前回は2019年の
上海開催に参加。
4年に1回WCTI-胸部放射線研究会の国際版。前回は2013年の韓国
開催に参加。
 他にもARRSやISMRM、ESTIなど、RSNAと合わせて年に2回ほど国際学会に参加する。

 2020年はコロナ禍で数々の学会・研究会が中止となったが、2021年にはWebまたはハイブリッド開催となり、年間スケジュールはコロナ以前と同様に戻りつつある。コロナ後は学会・研究会がWeb開催になったので、移動の時間が必要なくなり沖縄から参加しやすくなった。出張が減ったことで家族と過ごせる週末が増えた。

Q1.なぜ放射線科医を選択したのか?

A.初期研修を修了後、1年間離島で内科の後期研修を行い、放射線科医になる決意をした。初期研修で放射線科をローテーションして興味を持ちもっと勉強をしたいと思った。放射線診断は論理的な思考をもって、画像と病態を組み合わせ正解を導く。謎解きのようでともて面白かった。内科後期研修医というモラトリアム期間が必要だったのは、学生の頃にイメージしていた医師像と放射線科医がかけ離れており、迷いがあったから。学生の頃は総合内科、僻地医療、国際医療などに興味があった。実際に離島医療を経験して、離島でも専門領域を習得した医師が必要とされていることを知り、迷いがなくなった。現在は放射線科を選択して本当に良かったと思う。画像診断は学べば学ぶほど奥が深く、飽きるということがない。そして生涯現役を貫きやすい診療科と思う。

Q2.AIへの対応

A.業務の効率化や公平な業務分担にAIが力を発揮してくれることを願う。今は単純に就業時間で個々の仕事量が評価されることが多いが、読影の質や量に応じて能力に見合った正当な評価が得られるようになると嬉しい。でもこれが実現したらAIに管理されているようで窮屈に感じるようになるのかもしれない。

Q3.仕事とプライベートでのおすすめアプリ

A.Podcastsを愛用している(図1)。作業をしながら情報を得られる音声コンテンツは時間を効率的に使うためには欠かせないアイテムだ。私は日々のニュースから最新医学情報、英語の勉強、娯楽までポッドキャストで賄っている。いくつかお勧めの番組を紹介する。
1. COTEN RADIO 人物やあるテーマ(例えばお金とか)に焦点を当てて、その歴史を史実に基づき解説してくれる番組。楽しく歴史を勉強できて、たくさんの新たな気づきに出会える。
2. OVER THE SUN ネーミングがまず素敵。ジェーン・スーさんと堀井美香さんがリスナーからのメールをもとに“太陽の向こう側”を目指して語り合う番組。Overthesun(オバサン)世代に突入した私は二人の語りに共感することが多く、いつも励まされている。
3. SDGsを仕事に生かす:SDGs=Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)に取り組んでいる企業や有識者を交えて、SDGsについて考える番組。これからSDGsを軸に大きく変わっていく世界について勉強ができる。

図1 My podcasts library

Q4.仕事と母親との両立

A.仕事と母親との両立、それは罪悪感との闘いだ。私には二人の息子がおり母親であるが、一般的な感覚からすると、かなり仕事に重きを置いたバランスで働いている。家事や育児は夫がメインでこなし、家庭を理由として仕事を制限したのは産育休の期間のみである。そんな私はこれまで“母親の役割を十分に果たしていないのではないか”という罪悪感にとらわれてきた。2年ほど前に約1年半の間、私は単身で海外留学をした。当初は家族みんなで海外生活を満喫する予定であったが、いろいろな事情が重なり最終的に単身で留学するに至った。小さな子供を置いて旅立ち、8年ぶりに一人暮らしを始めると胸が詰まって食事がのどを通らず1ケ月で5㎏やせた。自分の夢を実現しているのだ、咎められることではない、自信をもって楽しめと自分に言い聞かせた。家族を犠牲にしているという背徳感からか、留学先で仕事と英語学習に没頭した。無給で留学し、お願いされた仕事は決して断らない日本人女性研究者は留学先で“サムライ”の称号を得た。誰にもバレないように密かに“私の選択は本当に正しいのだろうか”と一人葛藤に苦しんだ。留学中から帰国直後がもっともこの悩みが深かったが、今は吹っ切れている。COTEN RADIOとの出会いがきっかけだ。私はブッダやガンジーが自分の信念を貫くために家族をないがしろにしていたことを知った。偉人だって完璧じゃない。ブッダは息子を捨てたが世界中の多くの人を救った。母親の合格ラインなんてないし、仕事に誇りをもって頑張っているのであれば胸を張ればいい。誤解しないでほしい点は留学ではつらいこともあったが、価値観を変えてくれたかけがえのない大イベントであり、留学したことに後悔はない。留学の後半ではしっかり単身だからこその余りある時間を使って、趣味や社会活動も楽しんだ。
 女医は仕事だけではなく、母親を優先した場合も罪悪感と闘わねばならない。1人目の妊娠の時、つわりが重く満足に仕事ができなかった。先輩へ仕事の負担が大きくのしかかった。喜ばしいはずの妊娠もなんだか悪いことをしている気分になった。私の産育休のために同期は時期外れの人事異動となった。彼には何かプランがあったかもしれないのに、申し訳なく感じた。残業なし、当直なし、休日勤務なしと様々な勤務配慮を受けている多くの子持ち女医はおそらく罪悪感と闘っていると思う。仕事を選んでも、母親を選んでも罪悪感がついて回る。仕事と母親の両立ってなんだ。エフォートを50%ずつにすれば両立というのか。エフォートってどうやって計れば良いのか。一緒に過ごす時間か。母親のエフォートが何%を超えれば良妻賢母となれるのか。コピーロボット(知らない方はパーマンで検索してほしい)でもなければ両立なんてできやしない。ただ自分の納得のいくバランスをみつけられれば、それでいい。誰かと同じじゃない自分だけのバランスがあるはずだ。ひとりで両方を完璧にこなさなくても、誰かに助けてもらえばいい。それは両親でも、夫でも、家事代行サービスでも、上司でも、同僚でもなんでもいい。罪悪感が感謝の気持ちに変われば女性医師はもっと働きやすくなる。男性医師は働くことに罪悪感を抱くことはあるのだろうか。私の小さな疑問である。

Q5.夢

A.夢はでっかく、世界平和と100年後にも引用される論文を書くこと。

Q6.旅行に行くならどこに行きたい?

A.オーストラリアに行く約束を子供としている。爬虫類の図鑑にオーストラリアでは公園に野生のエリマキトカゲが生息していると記載があったので、本当かどうか確かめに行きたい。我が家では息子の趣味でケヅメリクガメとシリケンイモリをペットにしている。オーストラリアで野生のエリマキトカゲを見ることができたなら、お家で飼いたいと言うに違いない。

Q7.美容事情

A.医師となって15年、太ってしまった。座ってばかりいるのでどうしても運動不足になってしまう。ダイエットをしなくては思うが、40歳になった今は、その動機は美容というより健康が心配だからだ。コロナ以前は医局でお昼休みを利用して5分間筋トレを定期開催していた。わが医局秘書はボディフィットネス(ボディビルよりも女性らしさを求める競技)の全国大会優勝者であり、彼女の指導のもと女医・秘書が集まって楽しくトレーニングを行っていた。たった5分だが驚くほど追い込まれ翌日の筋肉痛は必至である。早く再開できることを祈るばかりだ。

Q8.最近の自分の流行り

A.多肉植物にはまっている(図2、3)。ふるさと納税で20種類の多肉植物をもらって育てていたら、性に合っていたようで元気に殖えてくれるのでとてもかわいい。休日はポッドキャストを聴きながらガーデニングに励んでいる。ペットのイモリのおうちであるコケテラリウム(イモリウム)を管理するのも私の役割である。ちびイモリ達の様子を眺めながら、私たちが地球で生きている様子も何かもっと大きな存在がこんな風に眺めているのではなかろうかと想像する。そうするとどんな問題も小さなことと覚え、過去や未来にとらわれず精いっぱい今を生きようと思える。

図2 ミニガーデン
右側の領域を多肉植物でいっぱいにするのが目標
図3 イモリウム
5匹のイモリが暮らしている。右端のサンゴの上にイモリちゃんが顔をだして いる。

さいごに

A.執筆依頼を受け、RadFan2019年7月号「女性放射線科医のリアルライフ」と2020年7月号「女性診療放射線技師のリアルライフ」の第一弾を改めて拝読させていただいた。包み隠さず多様な考えや経験が共有されており、考えさせられることが多くあった。私も秘めたる思いを赤裸々に伝えてみようと決めた。他者からの私の評価はおそらくポジティブな人間だと思う。自己評価も違わず、自己肯定感が強く、楽観的なタイプだと思う。そんな私でさえ、それなり悩むことがあるのだ。私の経験の共有でもっと深く同様の悩みを抱える方の心を少しでも軽くできたら嬉しく思う。

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