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科学英語のすすめ (3) ----英語の方がわかりやすいこともある


 みなさん、こんにちは。
 『科学英語のすすめ』の第三回です。
 前回は、化学物質の名前などを例に、英語の科学用語はカタカナ語や漢語よりも規則的で覚えやすいという話をしました。
 今回は単に語彙の問題ではなくて、そもそも科学を理解するときに、日本語よりも英語を使った方がわかりやすいことがある、という話をします。

 もともと近代科学というのは西洋のもので、西洋的な発想で出来ていますから、日本語で勉強しようとすると何かが引っかかって、わかりにくいこともあります。ところが同じことでも、英語で勉強するとすんなり理解できることがあるんです。
 どういうことか、具体例を挙げて説明しましょう。

 「酸化」という言葉は誰でも知っていると思います。
 これって化学の基本概念ですけど、どうも引っかかる言葉だとは思いませんか。
 これは私の想像ですが、この「酸化」あたりから化学がわかんなくなる人が増えるんじゃないかと思っています。
 それで、ちょっと考えてみたんですが、日本語では「〇〇”が”酸化する」と言います。「ワインが酸化して不味くなった」とかね。また「△△”を”酸化する」とも言います。

 この「“が”酸化する」と「“を”酸化する」の「酸化」って、果たして同じ意味なんでしょうか。
 え、「何を言っているかわからない」ですって? まあ、聞いて下さい。

 ちょっとややこしくなりますけど、化学では「酸化」と「還元」というものが対になっていて、何かを酸化すると自分は還元されるわけです。だから「〇〇が△△を酸化する」と言ったら、〇〇自身は還元されている。だから〇〇の立場から見ると、「△△を」という目的語が入るかどうかで、意味が正反対になってしまうんです。つまり「〇〇が酸化する」と言ったら〇〇は文字通り酸化されているのだけれど、「〇〇が△△を酸化する」と言ったら〇〇は還元されているんです。

 これ、言っている自分自身にとっても相当ややこしいですよ。だから理科の時間に生徒さんの頭がこんがらがってしまうのも無理はないと思います。

 けれども同じことを英語で言うと、驚くほどすっきりするわけです。

 「Aが酸化する(される)」
 A is oxidized.

 「AがBを酸化する」
 A oxidizes B.

 これを見たらわかるように、「酸化する」は英語で oxidize というんですが、基本的に他動詞なので、自動詞の用例は珍しいんです。だから、他動詞として目的語をとるか、受け身になるか、どちらかしかない。したがって日本語でいう「“が”酸化する」は受け身で表現するしかなくて、「“を”酸化する」の方は普通に目的語をとる他動詞になります。

 つまり英語で勉強すると、作用する方向がはっきりしているので、どちらが作用する側か、逆に作用を受ける側か、非常にすっきりとわかるというわけです。

 どうでしょうか。「科学英語」というと何となく難しそう、とっ付きにくそうと思われるかも知れませんが、単に英語だけの話ではなくて、理系科目の勉強にも役立つことがご理解いただけたと思います。ですから私は、ふだんは医学部や医療系の学部を目指している受験生のみなさんのために仕事しているわけですが、そういう人たちだけでなく、理科が不得手な文系の人に対しても、科学に興味を持つためのきっかけとして是非お勧めしたいと考えているんです。

 そんな人たちのための科学英語の手引きとして、最近こういう本を出しました。

 『カタカナ外来語と語源で学ぶ英単語  理系英語篇 Vol.1: 医歯薬・医療系学部入試、海外医学部受験対応』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09Y334NGJ?&linkCode=ll1&tag=cstransbiz-22&linkId=9079084e17986a60e449acd33a0352b2&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl

 これを読めば、私たちがふだん何気なく使っているカタカナ語と科学的な語彙、さらに歴史や星座などの関連がわかって楽しく学べると思います。

 とはいえ、こういう知識は、一般の受験生にとっては言わば「勉強のスパイス」みたいなもので、すでに力のある人がさらに上を目指すための「プラスアルファ」だと言っていいでしょう。
 ところが最近になって、一般の受験生とは異なり、もっと真剣に、切実に科学英語を必要としている人たちを見かけるようになりました。
 それはヨーロッパなど海外の医学部への進学を目指している受験生の人たちです。

 ここで医学部受験に詳しくない読者のために説明しておくと、日本の医学部進学は、国公立は難しすぎる、私大は学費が高すぎるということで、海外医学部を受験しようとする人が最近少しずつ増えているんです。
 例えばヨーロッパの医学部であれば、国によっては生物と化学の二科目だけで受験できますし、日本の医学部入試には必須の面接や小論文なども課されない。しかも、その生物と化学にしても、日本の受験の常識からいうと信じられない話ですが、どんな問題が出るかあらかじめ知らされているわけです。これに目を付けた、海外医学部と受験生の間を仲介する会社 (〇〇大学事務局と名乗っているが、実は大学とは無関係) というのがありますけど、そういう業者を通さなければ、学費も生活費もかなり安く上げられるんですよ。

 ただ日本人の受験生にとって難しいと感じられるのは、入学試験も授業も英語で行なわれることです。その英語が典型的な「科学英語」なんですね。だから、ヨーロッパなどの海外医学部を目指す受験生は、本格的に科学英語を学ぶ必要がありますが、そういうものを勉強できる予備校は日本にはほとんどありません。
 だからといって何の手引きもないまま、独学で暗記しようとするのは、ちょっと無茶ではないかと思っています。覚えなくてはならない用語は膨大にありますから、覚え方にも工夫が要るし、工夫するにも知識が必要だからです。独学するにしてもやり方というのがあるわけなので、少なくとも、そういう手引きくらいはあった方がいいです。

 しかし、これは、すべての試験について言えることですけど、本当に大事なことは、果敢に挑戦する勇気と自信であり、それと同時に決してあなどらないことですよ。
 初めに言ったように、科学英語は、英語自体はシンプルなので、努力次第で誰もが身に付けられます。しかも、科学英語は、文系の人にとってはある種の教養以上のものではないかも知れないけれど、理系、とりわけ医療系の人にとっては実践的なもので、必ず役に立つものです。そう考えるとモチベーションを保つことは決して難しくないと思います。


 私は、日本の私立医科大向けの予備校にも、海外医学部留学支援業務にも関わっており、それぞれの特徴を把握しているつもりです。これからも国内、海外にかかわりなく、受験や英語学習に関する情報を発信していきますから、どうかよろしくお願い致します。
 『科学英語すすめ』は、今回でひとまず完結とします。最後までお読みいただきありがとうございました。


 海外医学部留学に関する情報はこちらをご覧下さい。
 https://euro-med.info/

[参考書]
 『カタカナ外来語と語源で学ぶ英単語 Vol. 1』
https://www.amazon.co.jp/dp/B07LCL73KZ/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&linkCode=ll1&tag=cstransbiz-22&linkId=582effacb45b2d83bc45893b8540dde1

『カタカナ外来語と語源で学ぶ英単語 Vol. 2』
https://www.amazon.co.jp/dp/B07L9C2HQB/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&linkCode=ll1&tag=cstransbiz-22&linkId=8582bde0de58932e7b10f83c47e738ff

 『カタカナ外来語と語源で学ぶ英単語  理系英語篇 Vol.1: 医歯薬・医療系学部入試、海外医学部受験対応』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09Y334NGJ?&linkCode=ll1&tag=cstransbiz-22&linkId=9079084e17986a60e449acd33a0352b2&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl

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