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科学英語のすすめ (1)----文系英語と理系英語

 医歯薬系の予備校などで教えていると、英語でつまずいている受験生が多い、という気がします。以前は、「理系の子は英語が不得手なのかな」と、深く考えずに済ましていましたが、そんな単純な問題でもないようです。
 なぜかというと、英語が不得手な受験生は文系にも多いのはもちろんですが、理系の仕事に就いている人でも普通に英語で論文を読んだり書いたりしているじゃないですか。そういう意味で英語を使っている人は、文系と同等、あるいは文系よりもむしろ多いかも知れない。よって「理系だから英語ができない」なんていうのは浅はかな偏見でしかない、と気が付きました。
 そんなことを考えながら入試問題などを読んでいると、ひょっとしたら理系の子の「英語苦手意識」は、これが原因じゃないかと思うことがあります。それは何かというと、日本の大学入試問題というのは、英語の問題にしても、「国語」に似ているわけです。例えば、「筆者が下線部のように主張する理由を〇〇文字以内で記せ」とかね、そんな問題があるわけ。あるいは「下線部の内容に相当する一語を本文中から抜き書け」とか。まさに現代文そのものでしょう。いずれにしても文系的な発想で問題が作られていることは間違いありません。
 長文問題の素材となる英文にしてからがそうで、医歯薬系の私大などでは医療や環境に関する文章がよく出るわけですが、大学受験生に専門論文を読ませるわけにはいかないから、どうしても一般向きの記事になります。そうすると医療や科学を扱った文章でも、文系的な発想で書かれたものになりがちなんです。
 その結果、どういうことになるかと言うと、医歯薬系の大学受験生というのは、学校の英語の時間では習うことのない医学用語、科学用語の散りばめられた、しかも発想はごく文系的な英文を読ませられることになる。
 これはある意味、二重苦ですよ。「英語苦手」と訴える生徒さんが増えるのも理解できるというものでしょう。
 一般に入試問題では、多くの場合、難しめの用語には注が施されていますから、標準的な語彙力さえあれば、未知の単語について必要以上に神経質になる必要はありません。しかし、医学部の問題などは医学用語、科学用語が多すぎて注だらけになり、かえって読みにくくなることもあるんですよ。
 その対処法として考えられるのは、一つには、多少とも医学英語、科学英語に親しむということでしょう。そうすれば、いかにも難かしげな用語に面喰ったり、焦ったりしないで落ち着いて問題に取り組むことが出来るかも知れません。注と本文を往復する回数が減れば読解のスピードも上がるでしょう。
 と、いうわけで、前置きが長くなりましたが、これから「科学英語のすすめ」という題でお話します。
 ここでは「科学英語」なんて言いますが、もちろん、英語は英語なので、「科学英語」という特殊な英語があるわけではありません。「科学日本語」という特別な日本語がないのと同じです。ですから、何も特殊なものではなくて、科学的な発想の人が科学的な語彙を用いて科学的な文章を書けば、それが「科学英語」ということになる。その程度のゆるい意味で使っています。
 そういう科学的な文章が、内容の科学的な高度さを別とすれば、いわゆるひねりとか、凝った表現がない代わりに、明確で、論旨がわかりやすいものになることは想像に難くありません。それに対して文系の、言い換えれば一般的な記事というのは読者に高度な専門知識などを要求しない代わりに、文章表現を工夫している。だから入試の出題者の立場から言えば、いわゆる文系的な文章の方が問題が作りやすいのは確かですが、逆の見方をするなら、科学英語はシンプルで、表現よりも事実を重視している。だから文系的な文章に苦手意識のある人でも、その気になって努力するなら十分使いこなせるものだと私は考えているのです。
 文法や語法について言えば、日本の大学受験用の文法書は網羅的なので文系の目から見ても「こんなん使うんかい」という内容が含まれていますが、こと科学英語に関しては、文法・語法などは中学英語に毛が生えた程度のことを知っていれば対応できるだろうと思います。
 しかし、取っ掛かりとしては「難しい」という印象を受けるかも知れません。それはおそらく、科学的な語彙、つまり単語から来るものでしょう。ちょっとした科学的な用語、例えば日本語なら小学生でも知っているような、水素とか酸素とかいった語でも、英語で hydrogen とか oxygen なんて言われると、何だか急に難しくなったような気がしますから。さらに carbon dioxide なんて言われた日には、目が点になるかも知れません。「二酸化炭素」なんて今や日常語なのにね。

 

 今回はここまで。次回は科学英語がどんなに役に立つか、具体的に説明します。

 最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。


[参考文献]
 『カタカナ外来語と語源で学ぶ英単語 Vol. 1』
https://www.amazon.co.jp/dp/B07LCL73KZ/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&linkCode=ll1&tag=cstransbiz-22&linkId=582effacb45b2d83bc45893b8540dde1

『カタカナ外来語と語源で学ぶ英単語 Vol. 2』

https://www.amazon.co.jp/dp/B07L9C2HQB/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&linkCode=ll1&tag=cstransbiz-22&linkId=8582bde0de58932e7b10f83c47e738ff

 『カタカナ外来語と語源で学ぶ英単語  理系英語篇 Vol.1: 医歯薬・医療系学部入試、海外医学部受験対応』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09Y334NGJ?&linkCode=ll1&tag=cstransbiz-22&linkId=9079084e17986a60e449acd33a0352b2&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl


 

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