医師アルバイトのメリット・デメリット
9/26(月)発売予定の【医師バイト・外勤 超実践マニュアル~ありそうでなかった! 専門外の診療にも役立つバイト医のバイブル~】より、冒頭の「医師アルバイトのメリット・デメリット」を公開します。ぜひお読みください。
【医師アルバイトのメリット・デメリット】
まず、医師アルバイトを行うにあたって、一般的にメリット・デメリットといわれていることを下記に述したのでご覧いただきたい。
<メリット>
▶給料が高い(時給約1万円)。
▶時間の自由度が高い(勤務日数・時間を自分で決めることができる)。
▶勤務内容も易しいものが多い(健康診断や問診など)。
▶勤務先の職員の方からは王様のように扱われる(多くの医療機関では深刻な医師不足に悩まされているので、とてもありがたがられる)。
<デメリット>
▶毎回案件を探すのが手間(基本的に単発での申し込みが多い上に、応募しても断られることも多い)。
▶勤務成約後のキャンセルは一般的に不可能(不測の事態があっても勤務しなければならない)。
▶訴訟が起きた際に個人の責任になる可能性がある(バックアップしてくれる存在がないため)。
▶ほかの医師からは白い目でみられる可能性がある(「楽して金を稼ぐやつ」というレッテルを貼られることがある)。
このほかにも考えられるメリット・デメリットはあるが、勤務内容(健診・外来・当直)によっても違うため、それに関してはそれぞれの章で解説していくこととする。
【案件を探す手段】
次に、実際にどのように案件を探していくのかであるが、まず医師アルバイト・外勤案件を探す手段としては、以下の3つに分けられることが多い。 ①インターネット(医師アルバイト斡旋業者は数多くあり、その数も増えてきている)
②医局/知り合いからの紹介(医局との提携先や常勤先での診療科内で代々引き継がれている案件など)
③以前の勤務先(個人的に事務長などに連絡をとり、勤務となる場合が多い)
①インターネット
現在、規模が急速に拡大している市場である。ほかの検索方法と比べて圧倒的な数の勤務案件を比較することができ、勤務するかしないかも全て個人の自由である。自分にとって都合のよい日程や勤務形態を探すことができるため、多くの医師が活用している。
また一般的に人材紹介会社を通して勤務案件を探す場合、②や③のように人づてに勤務案件を探していく場合と違って、「人材紹介会社にバックマージンをとられて損しているのではないか」と危惧してしまうかもしれない。しかし、これは誤解である。確かに、バックマージンは応募をかけた医療機関から人材紹介会社に支払われる。実際に勤務した日数や時間などによって大きく変わるが、一般的に医師に支払われる給与の1割程度が支払われるといわれている。
しかし、人材紹介会社を通さずに契約を結んだ場合でも、一般的にこの1割分が医師に支払われることはない。なぜならそのような契約の仕方は御法度であり、それが万が一人材紹介会社にばれてしまった場合、今後の契約を打ち切られたり、罰則が発生してしまったりする可能性があるためで、そのようなリスクは通常侵さない。そのため、この“1割”は、今後も人材紹介会社からの紹介を継続的に受けるためには必要なのである。
また、人材紹介会社は仕事斡旋のプロであるため、医師の要望と応募を出している医療機関側の要望をすり合わせていくことに非常に長けている。
勤務時間、勤務条件、給料、交通費、宿泊費など、全て人材紹介会社を通せば交渉が可能であり、実際に交渉次第で変動することは多い。それに比べ、医師は普段から営業などの取引を行っていないため、いわばその点に関しては“ど素人”である。また、今までつながりがない赤の他人(医師)からの交渉とこれまで契約を何度も結んできた人材紹介会社と医療機関間
のやりとりでは当然、後者のほうが上手であるため、結果的により多くの希望が叶うことが多い。そのため、②や③のようにつてがない場合は、人材紹介会社を通したほうが勤務する医師にとってはるかに好都合なことが多いのである。
実際の探し方については後述する。
<メリット>
▶案件が多く自分の都合で勤務を探すことができる。条件の交渉を人材紹介会社が代行してくれる(バックマージン分は搾取されているわけではない)。
<デメリット>
▶ほかの医師に先に勤務をとられてしまう可能性があるため、土日勤務や好条件のものは競争率が高い。
②医局/知り合いからの紹介
これは、古典的に行われてきたいわゆる“外勤”にあたるものである。医局との提携先や常勤先での診療科内で代々引き継がれている案件などで、大学病院での給与は一般的に低いためそれを補填するという目的と、医師不足の医療機関が医局から医師を派遣してもらうというgive.and.takeの形で行われてきた。かつては入局する一つのメリットともされてきたが、現代では①ようにインターネットを使って個人で探すことができるため、その価値は低くなっている。しかし①とは違い、競争率が低く、定期的に勤務できる点に関してはメリットが大きい。また、つながりがある分、融通も利く。
<メリット>
▶競争率が低い。定期的に(毎週水曜日夜など)勤務を継続することができる。もともとつながりがあるところのため、勤務時間などの点で融通が利く。
<デメリット>
▶つてがなければ知り得ない案件のため、数が圧倒的に少ない。医局に入局したり、つてがある人が周りにいたりしなければならない。
③以前の勤務先
これは非常に現実的であり、かつ有効である。以前に何らかの形で勤務したことがある職場の場合、そこの事務長などと連絡先を交換しておくことで、その先、また人が必要になった際や、ゴールデンウィークや年末など常勤医の代行が必要な場合などに、再度勤務することができる。特に比較的過疎地域などで勤務した場合などは、毎回求人に苦戦している場合も多いため、募集をかける医療機関側にとっても好都合となる。また給与などは以前勤務した際のものを踏襲することが多いため、よほど多くの要望を出さなければ交渉が難航することは少ない。
<メリット>
▶競争率が低い。また、すでに仕事内容がわかっているため、円滑に仕事を行うことができる。以前勤務した場所であれば、再度条件交渉をする手間が省ける。
<デメリット>
▶自分が勤務したい日程で募集があるとは限らない。また、かなり前もって連絡をし、予定を調整する必要がある。
【インターネットでの案件の探し方と準備】
①インターネットでの検索方法
“医師 スポットバイト”などで検索をかければ、無数の人材紹介会社がヒットする。まずは、その人材紹介会社への登録が必要となる。インターネットから必要な情報を入力しただけで登録完了とする所もあれば、実際にその会社の人と会い、面接をしたのちに初めて登録完了となる所もある。またサービス券や金券などがもらえる紹介キャンペーンをやっている所も多いため、可能であれば知人から紹介を受けて登録をするとよい。
②提示書類の準備
登録の際に、医師免許証、臨床研修修了登録証は基本的に提示が必要であるため、あらかじめコピーを取っておくとよい。保険医登録票(小さいサイズの黄色の紙で書かれているもの)や麻薬施用者免許証も提示を求められることもあるため、同様にコピーを取っておくとよい。
③応募方法
人材紹介会社への登録が完了したら、実際に勤務案件に応募することができる。日程、時間、勤務地、科目、こだわり条件(経験不問、ゆったり勤務など)を選択し、自分に合った勤務案件を検索し応募を行う。時間調整が必要な場合(8:00~17:00の勤務だが8:30からしか勤務できないときなど)は、あらかじめそれでも勤務可能か質問し、問題がないことを確認してから正式な応募を行う。
注意点としては、いったん勤務が成立した案件は、基本的に医師側の都合で取りやめることはできないことである。スポットバイトであっても急に勤務の変更をすることで、そこに関わる多くの人が被害を受けることになる。一般的な社会人のマナーとして必須である。
④探すタイミング
また勤務案件を探すタイミングとしては、スポットバイトの場合はおおよそ1ヵ月前~2週間がベストと思われる。早すぎるとまだ案件が出ておらず、遅すぎれば人気のある好条件の勤務案件はすでにほかの医師に取られている可能性が高い。そのため勤務を探している日程があれば、1ヵ月前から毎日チェックするくらいが一番望ましい。またこれは運ではあるが、何らかの理由で勤務にキャンセルが出た場合は緊急で募集がかかる場合があるため、勤務数日前も案件を探すタイミングの一つである。
⑤勤務地の特徴
勤務地の特徴として、筆者の経験上、北海道は一般的に好条件の案件が多い。おそらく広大な土地ゆえに道内でも行き来するのが大変であるため、人手不足になりやすいことが理由の一つであろう。飛行機代を含めた交通費を出していただけることが一般的であり、前泊や後泊も可能な所が多い。
そのため、たとえ北海道外に住んでいても、数日間連続で勤務することが可能であれば、北海道の案件を探すことを個人的におススメする。ちなみに筆者は現在沖縄県在住だが、年に1回以上は北海道での医師バイトを行っている。都会は募集案件の多さが特徴の一つであるが、ライバルも多いため、好条件の勤務はすぐに埋まってしまう傾向にある。また遠方からの交通費は出ないことが一般的であるため、近隣に住んでいる場合のみ可能といえる。