【労力を無駄にしないための 臨床研究テーマの選び方】一部公開②:「学会発表・論文作成のチャンスが得られるかは、 学級委員長になるのに似ている!?」
好評発売中の「労力を無駄にしないための 臨床研究テーマの選び方(著:藤岡一路)」より、番外編コラム一部公開の続きです。
クラスで一番賢くなるのは努力次第で可能
さて、本書を読んでいただいている皆さんのほとんどは、研修医や専攻
医などの若手医師ではないかと思います。そのような皆さんは、基本的に
は努力して受験勉強に取り組んだ結果、厳しい入試に合格されて医学の道
に進まれたのではないでしょうか。4 年制大学を卒業してから医学部を受
験するアメリカなどとは異なり、高等教育終了後速やかに医学部に進学す
る日本の医学部受験制度では、単純な学力が合否の決定に最も大きなウェ
イトを占めます。
学力の向上は、自分一人でコツコツと努力を続ければ(程度の差こそあ
れ)必ず達成でき、自らを高めれば高めるほど入学できる大学のレベルも
一般に上昇します。医学部でも同様に、真面目に勉学に励み、定期的に催
されるテストでいい成績をとればとるだけ「優」の個数は増えるでしょう。
つまり、医師になるまでのキャリアのほぼすべては自分の努力次第で必ず
報われるといえます。
学級委員長になるのは、努力だけでは無理
一方で、読者の皆さんで小学校時代に学級委員長をやった経験がある人はどれくらいおられるでしょうか? クラスで一番賢かった人の割合のほうが、学級委員長をやった経験がある人より多いのではないかと思います。
学級委員長というのは一般には頭がいい人がやるイメージがありますが、クラスで一番の成績をとったからと言って自動的に学級委員長に選ばれるわけではありません。学級委員長になりたいと思うか思わないかは別にしても、単純な学力だけではなく、人気などの複数のファクターが関与してきます(特に子どもの頃は、勉強ができる子よりも足が速い子が人気者に
なりがちです)。
医師(社会人)のキャリアパスが学生と最も異なる点は、この自己努力以外の複数のファクターが必要になる点で、日々の診療にコツコツと真面目に取り組んで、医学書でだれよりも知識を得る努力をしたとしても、自動的にチャンスが得られるわけではないという点をよく認知しておく必要があります。逆説的に言うと、たいして努力もしてないのにチャンスが与えられる人がいることも事実であり、それがいわゆるマニュアル本でステレオタイプに語られている「上司から学会発表しろと言われたけど、何から始めたらいいのか全然わかりません」というスタンスの人ではないかと思うのです。
本稿は真面目に努力しているけど学級委員長になれなかった人が対象
本稿では、「学会発表とか面倒なことはしたくないのに上司からせっつ
かれて困る」というスタンスの人ではなく、「学会発表・論文作成したい
けどどういうふうにしたらチャンスを得られるのかわからない」という前
向きなスタンスの人をターゲットに解説したいと思います。過去のキャリ
アパス本とかでは、「若いうちからどんどん発表・研究をして、業績を出
したほうがいい」というような論考がよくなされているのですが、実際や
りたいと思ったからすぐできるわけではないのになあと筆者は感じていた
のです。
*著:藤岡一路 イラスト:ふじいまさこ
(つづく)