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【医師バイト・外勤 超実践マニュアル】序文公開

9/26(月)発売予定の本書より、序文を公開します。医師の働き方が多様化する時代に、ぜひお読みいただきたい一冊となっています。本書の中身もこれから徐々に公開していく予定です。


【バイト医はなぜマイナスイメージを持たれているのか?】


 「医師がバイトをしている」という事実は世間一般ではあまり知られていない。ドラマなどの影響で以前と比べて認知される傾向にはあるものの、実際にどのようなものなのかを知っている人は少ない。
 ましてや医師自身のなかにも医師のバイトや外勤に精通していると胸を張って言える(むしろ言いたくない?)人はどれほどいるだろうか。医師の世界では、バイトだけで生計を立てているバイト医は、「楽してお金を稼いでいる」「ろくな診療もしていない」と白い目で見られがちな存在である。特に急性期病院で毎日身を粉にして働いている専門医が、圧倒的に自分たちより忙しくない者たちが自分より稼いでいる事実を知ったら、驚愕し、一種の妬みのような感情を抱くだろう。

 しかし何がどうなってマイナスのイメージを生み出しているのかを紐解いてみてみると、意外と単純な図式であることに気が付く。そもそも医師のバイトや外勤は、特に医師不足が深刻な地方の機関が医師を募集し、それに外部の医師が応える、その間に金銭の授受と紹介業者の仲介がある、という図式で成り立っている。これだけをみたら何ら問題はなく、むしろ双方にとってwin-winの関係である。
 では、なぜマイナスのイメージを持たれているのか。それは、「多額な報酬をもらっている割には仕事内容が詰まっていない」と思われているからではないだろうか。つまり、「仕事の内容に比較的単純なものが多い上に、それをやる医師もいい加減に業務をすませている」というイメージがあるからではないだろうか。実際、急性期病院での業務と比較して、バイト先や外勤先では比較的負担の少ない業務が多く、そこで働いている医師も向上心や熱意に欠けている人も少なくないのは否めない。

【バイト医の存在が全ての人のwinにつながるために】


 しかし、そういった現場でも行っているのは同じ医療であり、医療の質に差があってはならない。当然設備や物資の違いでできることとできないことがあるため、その差が出てしまうのは仕方がないが、医師の知識不足や熱意の違いで低い質の医療しか提供できなくなるのは、絶対にあってはならないことである。
 そのため本書はそのような医師バイト・外勤の質の向上を目的とし作成した。また地方勤務、開業などで専門分野以外の診療に携わる際にも“最低限の医療の質” を保証できるようになるマニュアル本を目指して作成した。
 また、物を書く際にできるだけ例外がなく正しい表現になることを第一の目標として書いた場合、いくら正確であっても実際の“わかりやすさ”とはずれてしまうことが多々ある。本書では"わかりやすさ”"実践しやすさ” に重きを置いた。そのため、それぞれの分野において経験者が得てきたバイトのコツを、医療知識だけでなく、 「実際にやるときに役に立つ」という目線で全てを編集した。なので、100%正確ではない表現であったり、最新のevidenceに多少反していたりする部分もある可能性は否めない。医学の知識面に関しては最新のガイドラインや成書に譲らせていただき、ここで書いてあることは、ぜひ自分が行う医師バイト・外勤・非専門領域の診療の最初の踏み台として活用していただきたい。特に一般内科外来の項では、どの科の医師であっても必要な知識や心得を記載しており、筆者の魂が最もこもった部分である。外来診察を行う医師だけではなく、ぜひ、全ての医療関係者に見ていただきたい。

 本書は決して、「バイト医はいいよ! おススメ! バイト医になろう!」と謳っている書物ではない。ましてや「医師たるもの、お金という俗物にとらわれず、医道に邁進すべきだ!」という考えを真っ向から否定するつもりもない。バイトを通して給料を得るのは双方にとってwinなのだからむしろよいことである。そのなかで一定の医療の質を保ち、目の前の患者に全力を注ぐことができれば、患者にとっても医師にとっても雇用する側にとっても、多くの人にとって役立つものになるのではないだろうか――そのような考えが作成のきっかけとなった。  (本文へつづく)

【著者略歴】


大野哲生(おおの・てつお)

 1990年9月23日愛知県西枇杷島町出身。2016年琉球大学医学部卒業。
名古屋第一赤十字病院で初期研修後、北海道釧路市の慢性期病院で勤務。
その後、Arbutus college( カナダ、バンクーバー) にてBusiness
management Diploma 取得。Arazy Group Consultants Inc.(カナダ、
バンクーバー)に入職しJapan coordinator として営業、翻訳、薬事コ
ンサルティングに携わり会社史上初の本邦クライアント獲得に寄与。
 帰国後培ったビジネススキルを基に老人保健施設の管理者兼医師として
勤務し組織拡大に貢献。沖縄県友愛医療センターで急性期医療を行いなが
ら離島医療にも従事し今日に至る。

 「こんな本があったらいいのに」という気持ちをきっかけに本書を作成
しました。「で、結局?」「つまりどういうこと?」となってしまうことを
嫌い、できるだけ具体的に物事を伝えるよう常に心がけております。本書
はまさにそんな私の気持ちを代弁してくれています。



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