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基礎徹底 そこが知りたい血液内科

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知っておくと,見通しが良くなる血液内科の基礎的知識・覚え方を紹介します.間違いなどありましたらコメント欄でご教授いただけると幸いです.
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#国試

なぜNAPスコアは慢性CML,骨髄異形成症候群で低下・再生不良性貧血やCMLの急性転化で上昇するの?

NAP(neutrophil alkaline phosphatase score)スコアは末梢血の成熟好中球のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の程度を末梢血液標本のALP染色による陽性顆粒の密度から判定量に測定し、スコアとして表したものです。 このNAPは血液疾患の鑑別に有用であるとして国試に頻出です。 例えば、NAP活性の低値は、CMLの慢性期、MDS(骨髄異形成症候群)、発作性夜間血色素尿症(PNH)および伝染性単核症(IM)をはじめとするウイルス感染症を示唆

なぜ甲状腺機能低下症で貧血が生じるのか?

MDS(骨髄異形成症候群)や巨赤芽球性貧血、悪性貧血で大球性貧血を呈することは有名だと思いますが、実は甲状腺機能低下症でも大球性貧血が起きることが知られています。 メカニズムとしては、 甲状腺機能低下症で最も頻度の高い基礎疾患は慢性甲状腺炎、いわゆる橋本病であり、同じ自己免疫性疾患である悪性貧血を合併すること。 甲状腺機能低下症によって代謝が低下して、末梢組織における酸素需要が低下すると、血中エリスロポエチン濃度が低下し、骨髄における赤血球産生量が減少する。 この2つ

Hodgkinリンパ腫では末梢血リンパ球数は増える?減る?

結論から申し上げますとHodgkinリンパ腫では末梢血リンパ球は減少します。 しかし、骨髄性白血病では白血球が著増するので、悪性リンパ球が増加するリンパ腫でも増えそうなのになぜか減少します。何故でしょうか? 理由はいくつか仮説がありますが、 ①Hodgkinリンパ腫は容易に血管を移動して全身に移動するのではなく、リンパ節にとどまる性質があるため。 ②Reed-Sternberg細胞のサイトカイン産生による骨髄でのリンパ球産生抑制 などが原因ではないかと個人的には考えていま