「ジェンダーガイドブック」 発行します
放送レポート295号(2022年3月)
新聞労連委員長 吉永磨美
新聞労連は、職場でのジェンダー平等を実現するために様々な取り組みを進めており、注目されている。その1つが、今年3月22日に発売予定の新聞労連の組合員約20人が作成に携わった「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(小学館、税込1650円)だ。
新聞労連のジェンダー平等の活動は2019年9月からはクオーター制度によってスタートした、中央執行委員会の女性枠「特別中央執行委員」が牽引している。
ガイドブックの作成は、現場で多数派である男性の価値感に基づいたり、もしくは社会の底流にある感覚によったりして生み出されるジェンダー平等の視点が欠けたメディアの発信について見直そうという、特別中執の発案から始まった活動だ。具体的には2020年9月、特別中執から「ジェンダー表現に関する実践と積み重ねに基づいた体系的な知識を共有するための方針や基準を作成してはどうか」という意見が出て企画し、実現されたものだ。
これまで、業界全体で社を超え、ジェンダー表現を広く議論し、まとめたものは存在していなかった。新聞労連は、出版労連の酒井かをり委員長から助言をもらい、出版にこぎつけた。
いまだにメディア全体では「中学生や女性でも分かる表現」「内助の功」「女性ならではの繊細さ」といった、ジェンダー平等に欠ける表現が溢れている。「女性は男性より劣る」「一歩下がるべき存在」「女性らしさ」といった偏見を助長しているにもかかわらず、無自覚に使って放置していたというメディア自身の反省を込めた「気づきの書」として発刊する。本書の序章には、本書のアンカーを務めた中塚久美子特別中執(朝日新聞労組)が編集チーム一同の思いをしたためている。
第1章は、「ジェンダーで見る表現」と題して、加盟単組の協力を得ながら集めた新聞記事の実例を元に、ジェンダーの視点で見る表現と改善案を紹介した。単なる「言い換えマニュアル」、テクニック紹介に止まらず、何が問題なのかについて、事例に沿って詳しく解説している。発言者に悪気や差別する意図がなかったとしても、無意識の偏見をばらまき、追認していることになる「マイクロアグレッション(微細な攻撃)」「日々の無意識の偏見・抑圧」について説明。さらに、ジェンダー表現で炎上・批判を受けるケースがこのマイクロアグレッションを肯定・追認しているケースが非常に多いことを指摘するなど、ジェンダー視点で表現をみる基本的姿勢について説明をしている。
第2章は、デジタル化がすすむメディア業界において、ページビューを稼ぐために「性」を意識した釣り見出しにするなど、性差別を煽る事態も起きていることも指摘。
第3章は、弱者に寄り添うジェンダー表現として、性暴力報道からみる表現、被害者への批判や偏見、「被害者に落ち度がある」といった無自覚な偏見から生み出される二次被害の実態なども紹介している。
第4章では、ジェンダー表現に課題を抱えるメディア業界の構図的問題へと切り込んだ。メディア組織でジェンダー関連記事の発信までに、誰がどのような価値判断をしているかインタビュー調査をした結果や、新聞労連などメディアの労組のジェンダー平等に向けた、これまでの活動についても紹介している。
ぜひ、職場や組合で学習会を開く際に利用してほしい。必ず手に入れたい方は事前予約をお勧めします。