フジテレビの経営危機を救う「ホワイトナイト」、買収候補はあの会社

フジ・メディア・ホールディングスの中核子会社であるフジテレビジョン(以下、フジテレビ)が、経営危機に直面している。
元芸能人の中居正広氏が関与する女性トラブルに端を発し、フジテレビ社員がこの問題に関与した疑惑が浮上しており、同社に対する説明責任が厳しく問われる中、スポンサー離れや広告収入減少が現実のものとなりつつある。事態の長期化は、同社の業績や経営基盤に深刻な影響を及ぼす恐れがある。

スポンサー離れと広告収入減少


フジテレビは地上波放送を基盤とし、広告収入を主要な収益源としている。同局の番組は広告主のスポンサー収入に依存して成り立つ構造だ。しかし、今回の問題を受けて一部のスポンサーが広告放送の差し止めを求める動きを見せており、放送枠がACジャパンの公共広告に差し替えられる事態が発生している。

一部報道によると、ACジャパンの広告への差し替えが行われた場合でも、広告主は契約上、広告料の支払い義務を負う。しかし、大手広告主の一部が返金を求めたという新たな報道があり、同様の動きが他のスポンサーにも広がる可能性が高い。この事態が進行すれば、フジテレビの広告収入が大幅に減少し、経営への影響は避けられない。

SNS上ではフジテレビの対応に対する批判が高まり、信頼回復のための透明性ある行動が求められている。しかし、経営陣による非公開の記者会見も不十分であると批判されており、説明責任を果たせていないという世論の圧力が強まっている。

フジ・メディア・ホールディングスの業績の現状と収益構造


フジ・メディア・ホールディングス全体の収益を見ると、主たる放送事業の売上が占める割合は依然として大きい。一方で、グループ全体の利益を支える柱となっているのは不動産事業(都市開発・観光事業)である。同ホールディングスは都内を中心とした複数の不動産資産を所有しており、これらが安定的な収益を生み出している。

フジ・メディア・ホールディングスの2024年3月期(2023年度)の連結売上高は5,664億円、経常利益は391億円、当期純利益は370億円。セグメント別に見ると、メディア・コンテンツ事業の売上高は4,336億円で全体の約75%を占めているが、営業利益の構成比率は約52%にとどまっている。一方、都市開発・観光事業の売上高は1,283億円で全体の約22%だが、営業利益の構成比率は約46%と高い割合を占めている。


2025年3月期もその傾向はむしろ強まっており、放送事業を中心とした「メディア・コンテンツ事業」の売上は前年同期比で71億円の減少、一方、「都市開発・観光事業」の売上は72億円の増加となっており、「メディア・コンテンツ事業」の売上の下落を、「都市開発・観光事業」で補っているともいえる。


一部報道によれば、フジテレビのスポンサーからは広告料の返還を求める動きが出ており、一説にはその損害は500億円を超えるのではないかと試算もある。


フジ・メディア・ホールディングスは短期的には、不動産事業の収益で放送事業の赤字を補填することが可能と見られる。しかし、広告収入の減少が長期化する場合、不動産事業の利益でカバーしきれない損失が発生し、グループ全体の経営に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

テレビ局のCM収入にはスポンサー企業が番組ごとに契約する「タイム」と、それ以外の単発を含む「スポット」がある。


フジ・メディア・ホールディングスの決算説明資料によれば、フジテレビは2024年4~9月期にタイムで318億円、スポットで350億円の収入を得ている。
テレビ局は4月に改編期を迎えるが、4月以降のスポンサー契約に影響が出るのは必至で、この事態が長引けば長引くほど、フジテレビは窮地に追い込まれる。

一方で、放送免許がある以上、放送を止めるわけにもいかない。
しかし、スポンサー収入が見込めない番組を制作することは赤字を垂れ流すだけとなる。
したがって、フジテレビは一部の番組の制作を取りやめたり、過去の番組を再放送してしのぐなど、番組制作費の圧縮に走ることになるだろう。



フジテレビはIR資料によれば、2023年度の四半期ごとの番組制作費は170億円前後で、年間683億円となっている。
番組制作費を含めた放送・メディア原価は1,350億円に達している。


フジ・メディア・ホールディングスの経営陣の今後の対応次第では、フジテレビに2025年4月から9月まで広告収入がほとんど入ってこないという最悪の事態も考えられるのである。

フジ・メディア・ホールディングスの上場廃止と再建シナリオ


フジテレビの業績悪化が続いた場合、親会社であるフジメディアホールディングスの株価が大幅に下落する可能性がある。その結果、同ホールディングスが上場廃止を選択し、経営再建を進めるシナリオも現実味を帯びてくる。

ただし、放送事業における規制が、この再建プロセスを複雑化させる要因となっている。具体的には以下のような制約がある:

マスメディア集中排除の原則
フジメディアホールディングスは「認定放送持株会社」に指定されているが、放送法により、特定の株主が議決権の33.3%以上を保有することは禁じられている。これは、放送内容が特定の株主の意向で歪められることを防ぐための規定である。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2201_01startup/220322/startup04_ref01_02.pdf


外資規制
放送法では外国人株主が地上放送の事業者の議決権の20%以上を保有することも禁止されており、国内企業や投資家に限られる。

これらの規制により、フジテレビの再建には国内企業が中心となる形での支援が求められることになる。


「ホワイトナイト」候補として浮上する企業

では、フジ・メディア・ホールディングスが経営再建のために上場廃止を模索するとしたら、「ホワイトナイト」としてどのような投資家が考えられるだろうか?

ここでは具体的に2社を挙げてみよう。

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