【参院選2022特集】桜井氏の自民党入りによって振り返る「野党共闘」と政策協定
全国的に「野党共闘」が実現した2016年の参院選から6年後にあたる今年、改選を迎えた桜井氏は、与党・自民党の公認候補として第26回参議院議員通常選挙に立候補を予定しています。
なぜ、前回の選挙で「野党共闘」をいち早く実現してきた桜井氏が、野党ではなく与党から出馬することになったのでしょうか。
2016年「野党統一候補」桜井充氏
6年前の第24回参議院議員通常選挙では、全国でいわゆる「野党共闘」が実現しました。野党各党は、前年の2015年に成立した平和安全法制について与党と激しく対立しており、当時の野党である民進党・社民党・自由党・日本共産党などの各党は、全国の一人区(改選議席が1の選挙区)で候補者を統一し、与党候補と議席を争いました。
この野党共闘のため、共産党は全ての一人区で候補者の擁立をを取り下げるという異例の対応を取ります。
政党同士の選挙協力の中に共産党を含む動きは、それまでの国政選挙では前例のないものでした(※一方で、首長選挙などでは自民党と共産党が統一候補を立てる例もあります)。
2013年の参院選は、31の一人区のうち29選挙区で自民党が勝利する圧勝(野党の惨敗)でしたが、2016年はこの野党共闘の成果もあって、32の一人区中11選挙区で野党が勝利を収めています。当時の自民一強の情勢の中では、大きな成果を上げたと評価されました。
そんな野党共闘の取り組みが、全国の中でもいち早く実を結んだのが宮城県選挙区。そこで野党統一候補として立候補したのは、当時民進党所属の桜井充氏です。
その動きの中で桜井氏は、日本共産党宮城県委員会や市民団体「オールみやぎ」とそれぞれ政策協定書を結んでいます。
2016年の参院選公示直後に野党統一候補として演説する桜井充氏
(2016年6月22日、仙台市青葉区 勾当台公園)
一票の格差是正のための定数削減により、2016年に初めて一人区となり、結果現職の議員同士の戦いとなった宮城県選挙区でしたが、野党共闘が実を結び、桜井充氏が自民党公認の熊谷大氏に対し約4万票差で競り勝ちました。
2022年「自民党所属」桜井充氏
その6年後にあたる今年2022年、改選を迎えた桜井氏は、野党統一候補ではなく、与党・自民党の公認候補として第26回参院選に立候補を予定しています。
なぜ、前回の選挙で「野党共闘」をいち早く実現してきた桜井氏が、野党ではなく与党から出馬することになったのでしょうか。
実は桜井氏は、2019年に民進党の後継政党である国民民主党を離党し、その後自民党会派入り、今年の5月に正式に自民党所属議員となっています。
2017年の民進党と希望の党を巡る混乱、立憲民主党の設立などをめぐる一連の動きの中で、気持ちの変化があったのでしょうか、桜井氏本人の言葉として、「与党に行かないとなかなか仕事ができない」とその理由を説明しています。
一方で、6年前の経緯を踏まえれば、野党陣営や、野党を支持し桜井さんに一票を投じた有権者の側からは、桜井氏に対して裏切られたという感情を持ち、約束違反なのではないかという声が上がるのもやむを得ません。
では具体的に、桜井さんは前回の選挙でどんな「約束」をしてきたのか、そしてその後有権者の代表としてその約束を果たしてきたのか。6年前の「政策協定書」を振り返ることで、桜井氏の真意を探ってみましょう。
6年前の「政策協定書」
2016年に桜井氏本人が日本共産党宮城県委員会と結んだ政策協定書の中身は、以下のような内容となっています。
桜井氏がこの協定の中身について、2016年の選挙後に触れる機会は少なく、どの程度自身の仕事に結びつけていたか、真意が見えづらい部分はあると言わざるを得ません。仮に、この政策協定書が選挙のためだけに作られた内容だったとしたら、大きな問題です。
しかし一方で桜井氏は、今年2月の河北新報のインタビューで、以下のように答えています。
つまり、桜井氏は自身の考えを曲げて妥協するような政策協定を結んだことはなく、相容れない部分(「原発ノー」といった表現など)については線引きをした上で、選挙協力をした認識であると解釈できます。
そのような理解で政策協定書を読み返してみると、その中身にも実は余白があるようです。例えば……
(3)については、確かに厳密にいえば「脱原発」とは異なる表現になっています。
(2)(4)については、金融財政分野の政策に取り組む、という意思表明と理解することができます。
桜井氏は、自身のメールマガジンなどでも格差是正についてよく言及しており、金融財政は、桜井氏の政治家としてのライフワークであるとも言えます。桜井氏は国会における質疑でも、(現役として)医療分野に関するテーマや経済分野に関するテーマを扱ってきました。
政党の公認候補という側面ではなく、一人の政治家・桜井充としての彼の言動や政策を見たときに、政治的主張は一貫して変わっていないというスタンスで、本人は今回の選挙に立つのかもしれません。
有権者の、桜井氏への評価は
今回、所属政党を変えて立候補を予定している桜井充氏に対し、普段から政治や政局に関心を持っている有権者の方々は、与野党の支持を問わずそれぞれ複雑な想いを抱いている方も多いのではないでしょうか。
あるいは、日常的に政治家の情報までは追いかけていない方で、今回選挙が近くなってきたことで情報を収集して、混乱の中この記事に辿りついた方もいるかもしれません。
所属する政党を変える議員・政治家は一定数おり、それらの行為を裏切り・背信行為と断じることは簡単ではありますが、その裏には多くの苦悩や決断があるはずだと、想像することもできます。
一方で、野党議員として、アベノミクスや憲法9条改正、辺野古移設について断固反対の立場を表明するなど、現在の自民党の方針と相反する政治スタンスであったこともまた事実です。自民党公認候補として、違うことは違うというのか、あるいは過去のご自身の過去の主張を改めるに至ったのか、政策協定書の内容と合わせて、今後はっきりとした説明が求められます。
「与党に行かないとなかなか仕事ができない」という桜井氏本人の言葉を私たち有権者一人ひとりがどのように受け止めるべきか。一度冷静になり、しっかりと今後の主張を聞いていくことが重要ではないしょうか。
第26回参議院議員通常選挙の宮城県選挙区では、今回取り上げた自民党公認の桜井充氏の他、以下の4名も立候補を予定しています。
立憲民主党公認 小畑仁子氏
日本維新の会公認 平井みどり氏
NHK党公認 中江ともや氏(内部告発者を守る党)
参政党公認 ローレンス綾子氏
今後メディアージでは、全ての候補者について取材、情報発信を予定していきます。