【エッセイ】いまはかげから
大学のカフェスペースでお昼ご飯を食べているとき、ふと本棚に目を向けた。
壁には到底手に届かない位置まで本が置いてあり、種類も様々。外国語の本もあって、飾りじゃなくてきちんと内容があるんだろうな、読める人はどのくらいいるんだろうな、などと考える。
天井近くから下の方に目を向けて、絵本が置いてある本棚を見る。その中から、一冊の絵本を見つけた。
『おおかみと七ひきの子ヤギ』。
騙されて、家に狼を入れてしまった子ヤギ達。隠れるけれど、6匹は食べられてしまう。残った末っ子の子ヤギは帰ってきた母親とともに狼を見つける。お腹を切って子ヤギ達を救い出し代わりに石を詰める。
細かい部分は忘れているけれど、大体はこんな感じだったはず。絵本に引きずられるように、幼稚園生のときお遊戯会でこの『おおかみと七ひきの子ヤギ』の劇を披露した記憶を思い出した。
私は7番目の子ヤギ役だった。この役はもう1人いて、確か私は物語の前半の方を担当していた気がする。
狼役の台詞を聞きつつ、大きな時計の裏でニコニコしながら、こっそり客席の方を見る私。
多分お客さんから見えていたと思うけれど、幼稚園生相手にそんなことを咎める客なんていないはず。きっと微笑ましいと思われていたのだろう。
思えば私は目立つことを好む子供だった。
劇で言えば、子ヤギ役の次の年は『白雪姫』のしら姫。仲良し4人組みんなで白雪姫になりたいと言った。
それを聞いた先生が考えてしら姫とゆき姫で分け、さらに前半と後半に分けた気がする。ひらひらの衣装でオープニングのダンスを踊った。きっとご満悦だった。
小学生のとき、『注文の多い料理店』の支配人役だった。ただ、今改めて原作を読んだら支配人は出てこなくて、代わりに親方が出てきていたからもしかしたらそっちかもしれないけれど。
原作に色々要素やシーンを付け加えていて、主役と同じくらい台詞が多かった。簡単なオーディションに参加して、その役を勝ち取った。演じるのが楽しかった。
劇以外でも、合唱の伴奏係や学級委員、生徒会に立候補したこともある。授業もよく発言や音読をしていた。
しっかりしてるとか真面目だとか言われていたしそういう部分が表れた行動とも言えるかもしれないけれど、私は確かに目立ちたかった。褒められたかった。注目を浴びたかった。だから、色々なことを積極的にしていたのだと思う。
でも、これも小学生のときまでの話だ。中学生のときに、目立つことが怖くなった。誰かの視線を浴びることに耐えられなくなってしまった。
高校生になってから徐々に視線に耐えられるようになりつつあるけれど、昔みたいに目立ちたいという気持ちはない。
ああでも、まったく見向きもされないのも嫌だ。認識してもらって、褒めてもらって。だけどそんなに分かりやすく動きたくなくて。
あの頃の積極的な行動を起こせる私はなくなってしまった。その代わり、わがままな私が残ってしまった。
そんな事実を思いながら、次の授業に向かう準備をする。そんなお昼休みだった。