クソの墓標③ 勇気の天使ヴィクトリカ
カードゲームの歴史とは、自制の歴史である。
太古の時代にその名を轟かせたパワーカードたちはみな禁止され、先攻ワンキルや無限ループに使われたパーツもまた禁止され、そしてカードパワーはインフレの一途を辿っているにも関わらず、その最大出力は「名称ターン1」という形で常に制約を受けるようになった。
言うなれば、現代のカードは「頭がいい」のである。こうやって使えば強い、このカードと組み合わせて使えば強い、しかしそれらはすべてデザイナーの想定内。ただたまに、最終出力の評価がうまくできていないだけ……きっとそれだけ……
《折々の紙神》はそのような「頭のいい」カードの代表例とも言えるだろう。名称ターン1もなく、攻撃力の期待値は無限大、うまく行けば大量ドロー。いかにも頭が悪そうでクソデッキビルダーの喜びそうなモンスターだが、結局のところ、コイントスの確率という壁はデッキビルドで乗り越えることができない絶対の壁として君臨している。その詳細は遊戯王カードwikiにも記載されているほどだ。
ゆえに私はこの頭の良さを克服すべくクソ1号では出力上限が異常に高いカードをテーマにゴミを作り、クソ2号では自制ができていなかった時代のカードをコンボに取り込むことで出力上限を極限まで高め乱高下させる方針を取った。その結果は……見ての通りだ。
さて、そんな頭の良くなってしまったスマートな時代で、《折々の紙神》はなぜ注目を集めたのだろうか?
答えは簡単だ。
倍になる。
「倍」には人を狂わせる魔力がある。だから、いいクソカードを求めてニューロンの海をさまよっていた私がこのカードに狂ってしまうのは運命だったのかもしれない。
《勇気の天使 ヴィクトリカ》。手札から上級以上のモンスターを踏み倒せる上、その攻撃力を倍にまでしてくれる。間違いなく楽しい。
しかもよく見たら踏み倒すモンスターは光属性であれば天使族に限らないので、出そうと思えば、そう。
いや、今回は君はお呼びじゃない。
《勇気の天使 ヴィクトリカ》で出すべき光属性モンスター。私の脳は、瞬時に最高の答えを導き出した。
うおおおおおおおおおおおおお攻撃力4倍だあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
EX考えるまでもなく弱い!!!!!!!!!!!!!!!!!!
今環境には最強汎用闇属性リンク2《S:Pリトルナイト》が跋扈しているのでそれを標的にしようと考えたのだが、普通に雪花カグヤにしたほうがどう考えても勝てる上にそのカグヤも現環境にマッチしていないのでEXを考える前に心が折れてしまった。《勇気の天使 ヴィクトリカ》が飛んだら終わりなので《機巧蛇-叢雲遠呂智》が使えないのも致命的だった。
一応、《シャインエンジェル》《コーリング・ノヴァ》の2種リクルーターによる自爆特攻→《勇気の天使 ヴィクトリカ》→《守護神官マハード》の3連コンボは(バレてなければ)《S:Pリトルナイト》での妨害を受けにくくこれこそが符合と思ったのだが、隣に並んだ無効持ちを無力化しに行こうとすれば真っ先に《S:Pリトルナイト》がどこかに行ってしまうので、現実的にほぼありえない状況でしか使えないゴミであった。
と、ここまで考えたところで、私は決闘者として当然の礼を失していたことに気付いてしまった。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお攻撃力8倍だああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
遊戯王を舐めるな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
《勇気の天使 ヴィクトリカ》を活躍させるには私のクソデッキ力はまだまだ足りないようだ。だが私は諦めるつもりはない。もし続きの記事ができるとすれば、それはきっと彼女の勇気が、祈りが、ゼウスへと届いたということなのだろう。