花を愛する賢者のおはなし。
こんな夢を見た。
少年「賢者様。お伺いしたいことがあるのです。」
賢者「やあやあ、少年。よく来たね。今日はどうしたんだい?そんなに神妙な顔をして。」
少年「相談したいことがありまして…というか賢者様、地面に向かって何をされているのですか?」
賢者「おやおや。私かい。私は花の手入れだよ。」
少年「『花の手入れ』…ってそこには何も咲いていないじゃないですか」
賢者「今は何も咲いておらんが、いつかは咲いてくれるだろう。」
少年「どんな種を植えられたのですか?」
賢者「いや。ここには咲いていたんだ。美しい花がね。」
少年「咲いていた…?」
賢者「ああ左様。美しい花が咲いていたんだ。」
少年「僕にはわかりませんが、全てを知り尽くした賢者様のことですから大層美しい花なのでしょうね。」
賢者「ああそうさ。とてもとても美しい花だった。それなのに、私は花にひどいことをした。ろくに世話をせず、そこに咲くのを当たり前だと思っていた。」
賢者「それでも花は何も言わずに咲いていていた」
少年「…」
賢者「花が咲かなくなってから20年になる。きっと、植え替えたり別の花を持ってくる事も出来ただろう」
少年「...確かにそうですね」
賢者「でも、私はそれ以来この花にかわる美しい花を見たことがない。私は、もう一度この花を見られるまで待っていようと思うんだ。」
少年「いつか、見れますかね」
賢者「きっと見れるよ。僕はここに置いた星の破片(かけ)に誓ったんだ」
賢者「100年待っていればどこかで逢えるだろう」
賢者「僕の愛していた【花】はまるで白ユリの様に 美しかったよ。」
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