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Avidity Sequencing(アビディティシーケンシング)について

Avidity Sequencing(アビディティシーケンシング)について

ここでは、「Sequencing by avidity enables high accuracy with low reagent consumption」という論文をもとに、次世代シーケンサーAVITIのシーケンス方法について見ていきます。

この論文では、「アビディティシーケンシング」という新しいDNAシーケンシング技術を紹介しています。主な特徴は、試薬の使用量を減らしながら高精度なシーケンシングを可能にする点です。この技術は、シーケンシング中にDNAテンプレートを進むプロセスと塩基を識別するプロセスを分離し、それぞれを独立することで、最適化しています。具体的には、複数の同じヌクレオチドが結合した「アビディテ」と呼ばれる特殊な分子を使い、DNAに安定して結合させることで、従来の方法よりも低い濃度の試薬でシーケンシングを行えるようにしています。

この方法により、従来の短いリード長のシーケンシング技術と比べて、より少ない誤差で長いDNA配列を読み取れるだけでなく、シングルセルRNAシーケンシングや全ヒトゲノム解析といったさまざまな応用にも適しています。また、長いホモポリマー(同じ塩基が連続する領域)を含む配列においても、安定した精度が得られる点が特徴です。

このAVITIに搭載されたシーケンシング技術は、既存のシーケンシング技術に比べて、コスト効率や精度面で大きな改善が期待されており、幅広い生物学的・医学的研究に応用できる可能性があると結論づけられています。

私たちが日々使っているAVITIの実機

アビディティシーケンシングのワークフロー

下記の図aでは、アビディティシーケンシングのワークフローが示されています。各ステップについて見ていきましょう。

  1. Avidite結合(図aの一番左): 多価結合を持つAviditeと改変されたポリメラーゼがDNAのクローン(ポロニー)に結合します。ポリメラーゼは特定のAviditeを認識し、適切な塩基対形成を行います。これにより、ナノモル濃度(非常に低い濃度)でも安定した結合が可能になっています。

  2. 蛍光検出(図aの左から3つ目): 蛍光標識されたAviditeの結合が視覚化され、各塩基が特定されます。このステップでは、結合したAviditeのシグナルが画像として取得され、塩基の種類が判別されます。

  3. Avidite除去(図aの左から4つ目): 検出が完了した後、Aviditeがポロニーから除去され、次の塩基が結合できるようにDNAが準備されます。

  4. ブロック解除(図aの左から5つ目): ポリメラーゼが次の塩基に進めるように、3’末端のブロックが取り除かれ、次のサイクルに進行します。

このプロセスを繰り返すことで、シーケンシングが進行し、正確で効率的な塩基配列の解読が可能になります。このアプローチでは、従来のシーケンシング方法に比べ、試薬使用量を抑えつつ高精度なシーケンシングが実現されています。

Avidite結合について

下記の図bは、上段で説明したAvidite結合に関して、Aviditeと呼ばれる特殊な分子がDNAのクローン/コピー(ポロニー)にどのように結合するかを示しています。

DNAのポロニー(図bの薄く青い地面’フローセル’から伸びている紺色の先にある長い線状のグレー色で示されたもの)は、特定のDNAフラグメントの多数のクローンコピーから構成されています。ポロニーは、シーケンシング用のDNAがクローンとして集まった領域で、蛍光シグナルの増幅が可能になります。つまり、ポロニーは、シーケンシングを行う際に、信号が増幅されて検出しやすくなるために作られています。

黒で描かれたAviditeは、コア部分に複数のフルオロフォア(緑で表示された蛍光色素)を持ち、そこから枝分かれしたアームが特定のヌクレオチドに結合する分子構造をしています。このAviditeは、DNAポロニー内の複数のポリメラーゼに同時に結合することで、非常に安定した結合を実現しています。また、この色素により、結合部分が光り、シーケンシング装置が特定の塩基を識別できるようになります。

Aviditeの各アームに結合したヌクレオチドは、ポリメラーゼと相補的な塩基対を形成し、テンプレートの塩基に特異的に結合します(図b内の四角で囲った図)。これにより、シーケンシングの際に誤った塩基が認識されにくくなり、精度が向上します。

この構造によって、単一のAviditeが安定したシグナルを長時間維持できるため、低濃度の試薬で効率的に塩基の検出が可能になり、全体のシーケンシング精度が向上しています。

ヌクレオチドの識別

アビディティシーケンシングでは、DNAのクローン(ポロニー)がフローセルの表面に固定化され、それぞれのポロニーに多数のAviditeが特異的に結合します。このAviditeは複数のフレキシブルなポリマーリンクでつながり、各リンクの先に特定の塩基に対応したヌクレオチド基が取り付けられています。ポロニーの周りに多くのAviditeが集まることで、フローセル上に強い蛍光シグナルが生成され、ヌクレオチドの識別が可能になります。

まとめ

このように、アビディティシーケンシングは、DNA合成の進行と塩基識別のプロセスを分離し、特別な多価分子「Avidite」により、低試薬量でも高精度のDNAシーケンシングを実現することがわかりました。この技術は、コスト効率を向上し、従来の課題である長いホモポリマー配列も安定して解析可能で、シングルセルRNAや全ゲノム解析などの応用が期待されています。

次回は、この論文「Sequencing by avidity enables high accuracy with low reagent consumption」の後半として、この新しいAviditeシーケンシング技術の「性能」についてみていきます。

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※図や文献は、Element Biosciencesのアメリカ本社の許可を得て、Element Biosciencesが提供する資料等をもとに掲載しております。


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