《企画/ショートショート》全力で推したいダジャレ
「やだ!どうぶつえんがいい!」
「どうぶつえんがいい!」
奮発して取った星付きホテルの客室に、二人分の泣き声がこだまする。暴風雨に荒れる絶景を横目に立ち尽くしていると、夫が「やっぱり臨時休園だって」と携帯片手に戻ってきた。今日は子どもたちの希望で、動物園の一日ツアーを予約していたのだ。代替案の屋内プールはぞうさんの魅力には及ばないらしく、並んで泣き続けている。
初の家族旅行を、楽しい思い出にしてあげたい。なだめるべく子どもたちの目線にかがむ--と、同じくかがんだ夫が前に出た。
「動物園はお休みだけど、水族館は開いてるってさ。お昼には雨が弱まるみたいだから、行ってみない? お魚がいーっぱいいるぞお」
「おさかな……」
「お魚にごはんもあげられるぞお」
「!!」
ほっぺを涙で濡らした二人が、顔を見合わせる。
「すいぞくかん……イルカさん、いるかな?」
「いるかもねえ」
「今の、あの子たちの初ダジャレじゃない?」
夫が嬉しそうに耳打ちしてくる。最悪の朝改め、可愛すぎるダジャレを聞けた朝。楽しい一日になる予感を胸に、夫婦で小さくハイタッチした。
(467字)
前回に引き続き、たらはかに様の企画に参加させていただきました!
夫も参加しております。発想の違いにいつも驚かされます。
よろしければあわせてご覧ください。
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