論語と算盤(7)順境と逆境は存在しない?
この著書の中で考えさせられることは多いのですが、(人生の)成功と失敗、順境と逆境など、多くの人が悩めることについても分かりやすく触れられています。
共通しているのは、他責(他人の責任)にするのではなく、自責で考えること。
また、理論で考えるよりもとにかく実践してみるということ。
そして、他人を思いやるというということ。
その為に、常に道理(孔子の教えである論語)を念頭に行動をすべきであると結んでいます。
渋沢栄一は、順境も逆境も「自身の行動がそういう境遇を作り出してしまう」と言っています。確かに苦しいから、しんどいからと逃げ出してしまうのは簡単ですが、そういう状況を見方を変えて(逆手にとった)行動した人が結局、世の人から成功と思われているのでしょう。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉にも、「天」に人格を持つ「霊」としてとらえるのではなく、あらゆる出来事を受け止めるべきだと言っています。天命とは人が全く気付かないうちに、自然に作用するものだと。
「一所懸命やったから、必ず、神様が助けてくれる」ということではないということですね。
私は日経新聞の「私の履歴者」が好きなのですが、これを執筆する方(成功者?)は全て順境だったのかというと、むしろ逆境に近いことを素直に受け止めながら、その時々を懸命に過ごしてきたのでは解釈しています。「あの時がなかったら」と、人生の岐路を振り返っていますね。実は、当の本人は、それを「つらいことだと受けとめていない」ことが興味深いですね。
「ピンチをチャンスに変える」的な受けとめ方、考え方がとても大事なんだと再認識させらました。今の時代も、まさにそうなのかもしれません。
渋沢栄一が、唯一、逆境という言葉を取っておきたい人がいるそうです。
それは、政界や実業界で知性も才能もすばらしく、人からお手本とされるような立派な人が、志とぶつかり失敗してしまうことがまれにあり、そういう人にこそ、逆境という言葉を使うべきだと言っています。