#4 大分大学医学部編入試験体験記[1次試験・2次試験・3次試験]【医学部学士編入/社会人/複数正規合格】
はじめに
はじめまして。ご覧いただきありがとうございます。2022年度4月より国立大医学部医学科2年次に編入学予定の「くま太郎」と申します。
医学部学士編入試験を受験した経験が、少しでも今後学士編入を検討されている方々のお役に立てればと思い、記憶がまだ残っているうちに、この度のnote執筆に至りました。
私は、文系/仕事との両立/生物未履修という背景の中、1年の勉強期間で運にも恵まれて合格をいただくことができました。
一方でなかなか厳しい状況からのスタートであったため、それなりに勉強には悪戦苦闘をいたしました。そうした背景もあり、誠に僭越ではございますが、今後学士編入試験を志す方に向けて私個人の体験も踏まえて微力ながら情報提供をさせていただこうと考えた次第です。
同じような境遇で奮闘なさっている方々にとって、私自身の体験が少しでもお役に立つことがあれば幸いでございます。
また、本記事は体験談の第五弾の記事となります。
R4年度大分大学医学部医学科第2年次編入学試験を受けた記録をなるべく詳細に残します。記憶を頼りにしている部分もございますので、一部不正確な部分もあるかと存じますが、ご了承いただけますと幸いです。
医学部学士編入試験は、なかなか情報が手に入りにくい入試であるので、ここに記す情報が少しでも今後受験をなさる方々のご参考になれば幸いでございます。
1. 1次試験
[試験概要]
書類選考となります。募集要項には、「出願書類等により書類選考を行い、募集人員の約10倍を合格者とします。」とあります。
R4年度入試では、この1次試験で250名程度→100名程度に絞られたようです。
主な出願書類は、1000字以内の自筆の課題小論文です。
テーマは、『大学で学んだ学問分野並びに社会活動等その他の活動(卒業後の活動も含む。)を今後どのように活かし、どのような医療人・医学研究者を目指すかを述べてください。』でした。こちらは例年同じかもしれません。
その他の出願書類としては、多くの他大学と同様で、推薦書/成績証明書などです。
なお、推薦書は、原則大学又は大学院の指導教員とありますが、筆者は職場の上司のものでも通過できたため、ご自身がお願いできる方に用意していただく形で問題ないかと思います。
また、大学時代の成績も筆者はお世辞にも良いと言えるものでもないので、こちらもあまり気にする必要はないかと思います。
[対策・準備]
課題小論文は3次試験の個人面接の際にも面接官のお手元にあり、そちらを元に質疑応答があったので、志望動機と整合性のあるものを推敲した上で記述する必要があります。
(※小論文には、下線が相当引かれていたので、少なくとも面接前には面接官の方もしっかり読み込んでいらっしゃるものと思われます。)
筆者は、KALSの出願書類対策を受講し、大分大学の書類はそちらの添削を受講する前に提出したものでしたが、無事に通過することができました。
KALSの添削を経て自身の出願書類も大きく修正することとなりましたが、結果的には自身が書いたオリジナルでも十分であったということとなります。
これはあくまで個人的な意見ですので、一般論とは異なりますが、確かに志望動機書などの書類を第三者の意見を取り入れてチェックすることは大事であると思います。
一方で、無理矢理テンプレートのような型に入れて書こうとしすぎると、他の受験生と変わり映えしない画一的なものとなってしまい、書類選考には不利になってしまうことがあるのではないかと思います。
ご自身の医師への志望動機が1番伝わるように何度も推敲すれば、ある程度はご自身の考えや書き方を信じても良いと思います。
2. 2次試験
[試験概要]
筆記試験となります。募集要項には、「第1次選抜の合格者に対して、生命科学に関する総合問題(大学教養教育修了程度)及び英語を課し、その結果を総合判定し、募集人員の約3倍を第2次選抜の合格者とします。」とあります。
試験科目は、
生命科学に関する総合問題:120分、200点満点
英語:90分、100点満点
R4年度入試では、この2次試験で100名程度→30名絞られました。
[R4年度筆記試験詳細]
※問題の持ち帰り不可のため、記憶に頼っている部分が大きいです。
また、この部分の執筆に際し、親愛なる友人、ぴとーさんにお力添えいただきました。この場を借りて改めてお礼を申し上げます。ありがとうございます。
【生命科学に関する総合問題】
【英語】
[対策・準備]
【生命科学に関する総合問題】
生命科学については、過去、標準的な生命科学の問題に加えて、統計/有機化学が出題されていました。
しかし、上記の通り、R4年度入試については統計/有機化学の出題はありませんでした。来年度以降、どういった傾向になるかは読めず、志望度の高い受験生は統計や有機化学まで学習することが安心であるとは思います。
一方で、他大学との併願である方で時間が十分に確保できない方は、生命科学に注力する形で問題ないかと思います。
(筆者は時間がなかったため、統計+有機化学の対策が間に合いませんでした)
生命科学のレベル感としては、KALSでいう基礎・完成シリーズ、一般書籍でいう『理解しやすい 生物』・『Essential 細胞生物学』で十分に対応可能な問題だと思います。
一方で、平易な問題が多いため、一問の失点が命取りになる可能性も十分にあります。基礎的内容を何度も反復して得点できる力をつけておくべきかと思います。
筆者が2次試験までに行った対策は主に以下の通りです。
【英語】
難しい医学英単語などを覚えていく必要はないと個人的には思います。
もし英単語を覚えるのであれば、医学英単語よりはベーシックな英単語を強固にしておくことが最優先であると考えます。
この手の英語の問題は、しっかり英文を精読し、要点を抑えた日本語での記述ができる力が最重要であると考えます。一般の大学入試でいうと、どちらかと言えば、早慶型の英語よりも国立大学型の英語が求められていると感じました。
また、鹿児島大学と大分大学は比較的英文の傾向が似ているため、過去問が公開されている鹿児島大学の英語で演習を行うのも良いかと思います。鹿児島大学は時間的にもかなり厳しい試験で、大分大学は時間に余裕のある試験なので、鹿児島大学の英語量に慣れていれば、大きく苦労することはないかと思います。
筆者は、仕事との並行での受験勉強で十分に時間が確保できなかったため、英語の対策に時間を割くことはできませんでした。
筆者が2次試験までに行おうと考えていた対策は主に以下の通りです。
(実際はできていません)
[その他、試験の感想など]
・試験時間について
→試験時間は比較的余裕のある試験でした。何度も見直しをして、答案の推敲を試みることをお勧めいたします。
・キャンパスへのアクセスについて
→大分駅から大分大学狭間キャンパスまでは、バスで30分程度かかります。事前にバスの時間を確認して余裕を持って行動することをお勧めします。お知り合いと受験される方はタクシーを相乗りで利用することもありかもしれません。
・入室時間について
→集合時間の1時間ほど前から試験室には入室できましたので、早めに着いてしまった場合も心配はいらないかと思います。
[成績開示結果]
※こちらは、来年の申請になるので、判明したら記載いたします。
筆者の所感としては、生命科学7割、英語8割ぐらいかなと思っています。
3. 3次試験
[試験概要]
個人面接と発表及びグループディスカッションとなります。
この試験によって、最終合格者10名が決まります。
R4年度入試では、2次試験合格者30名のうち27名が受験しました。
(午前1名の欠席、午後2名の欠席です。)
受験者は、だいたい20代〜30代の方で占められていて、男女比は2:1ほどでした。
なお、ここまでの各試験の配点は、
[R4年度第3次選抜詳細]
第3次試験は、第2次選抜合格者を番号順に午前と午後それぞれ15名ずつに分かれて行ます。
どちらのグループであるかは、第2次選抜の合格通知とともに案内があります。
試験の大きな流れは、
発表資料作成→集団討論用の教室へ移動→発表→集団討論→待機室移動→個人面接
となります。
1. 発表資料作成(50分)
待機室に15名全員が集められ、時間になると配布物が手元に配られ、同じ教室内でそれぞれが発表用の資料を作成します。もちろん、他の受験者との相談は一切できず、参考書などを見ることもできません。
配布物は、
□発表テーマが書かれたプリント
□鉛筆
□マジック3本(赤、青、黒)
□発表用シート(普通のA4サイズの紙3枚)
□下書き用紙2枚
□下敷き用のボード
です。
発表テーマは、午前組と午後組で異なり、
R4年度試験のテーマは、
午前:「手術ロボットによる遠隔手術のメリット、問題について自由に論じなさい」
午後:「COVID-19のワクチン接種に対する忌避感に対する、あなたの対処法を自由に論じなさい」
といったものでした。
1枚の紙の中に関連するデータなどの資料の記載もございます。
2. 発表(1人あたり10分)
15名が5名×3グループに分けられ、各グループごとに別々の部屋に移動します。
発表部屋に持ち込めるものは、作成した発表用用紙と下書き用紙のみです。
また、胸に名前の書いた名札をつけるよう指示があります。
グループの分け方は、欠席者を除いて番号の早い順に5名ずつです。
(※KALSなどでは同属性の人ごとに恣意的に分けられるとの情報がありましたが、少なくともR4年度試験では、番号順でございました。)
なお、欠席者がいる場合は、番号の若い1番目のグループに割り当てられることもあるようです。したがって、グループが5名でなく、3名となることもあります。
教室の配置は以下のような感じです。
発表は、1人10分で、プロジェクターで作成した発表用用紙をスクリーンに映しながら、手持ちマイクを使って発表をします。発表順は、番号の若い人から順番です。
発表中、時間については特に誰も教えてくれませんので、淡々と発表し続けます。10分を超過した場合は、試験官から声がけがあるかもしれません。
他の受験者が発表している最中は、発表資料作成の際に使用した下書き用紙にメモを取ることが可能になります。(筆記用具はあらかじめ、発表部屋に用意されています)
※ここで、発表者の名前やそれぞれの発表内容の論点を整理してメモを取っておくと、グループディスカッションの際にスムーズに話を進めることができると思うので、他の受験者の発表も傾聴し、メモを取ることをお勧めします。
3. グループディスカッション(40分)
全員の発表を終えたら、発表内容について討論します。特に試験官からは討論の進め方などに関して指示はないので、自由に論じる形となります。
一般的には、初めに司会や計時などの役割分担をしてから、各発表の論点をまとめていき、お互いの疑問点などを解消しながら、グループとしてのまとめを行っていくこととなります。時間が余った場合は、お互いの感想などを言い合ってもいいかもしれません。
時間については、腕時計を確認できるので、計時担当の人が随時確認して進めていく形となります。
討論が終わった頃に、試験官に合図をすると、「時間もちょうどですので、終わりましょう」という流れになります。
4. 個人面接(15分)
グループディスカッションが終わったら、初めに集合した部屋(発表用資料を作成した部屋)に戻ります。そこで、順番に個人面接に移ります。なお、面接は番号をベースに4つの部屋に振り分けられます。
試験官は3名で、試験官のお手元には、出願書類(小論文、履歴書)や筆記試験の結果もあると考えられます。
面接の質問内容は小論文の内容に沿ったものが多かったため、事前に小論文は読み込んでいらっしゃるものと考えられます。
主な質問内容は以下の通りです。
質問内容については、他の部屋の受験者のお話も伺ったところ、部屋によってかなりまちまちというところでした。
志望理由も特に聞かれなかった人もいたので、各部屋の試験官に裁量が任されているものと推察されます。
ただし、総じて事前に提出した小論文についての内容は深掘りされるものと考えられますので、改めてご自身が書いた小論文の内容と整合性のある受け答えができるように準備する必要があると思います。
[対策・準備]
【発表/グループディスカッション】
まず、医療関連の時事ネタにはアンテナをはり、ある程度、下調べや情報収集はしておくに越したことはないと考えます。
50分という発表資料作成の時間は、下書きを時間も含めて考えると、けして余裕のある時間ではありません。
どんなテーマが出ても、ご自身の知っている知識と絡めて、速やかに資料作成をしていくことが求められます。
筆者が集団討論用に目を通した書籍は、以下の通りです。
KALS生の方であれば、KALS主催の大分大学集団討論対策(筆記試験合格者が無料で参加できる)に参加することを強くオススメいたします。
メリットとしては、
・過去の集団討論や個人面接についての資料が手に入る。
・実践形式で発表資料作成+討論を経験でき、合格者からフィードバックももらえる。
・KALS渾身の予想テーマを知ることができる。(R4年度のテーマはKALS予想のものとドンピシャでした。)
・他の筆記試験通過者と顔見知りになれる。(30名の筆記試験合格者のうち、20名ほどが参加していました。)
※KALSの事前対策で同じグループであった人が実際の試験でも同じグループであった人もいらしたようで、試験の安心感が違ったと、皆様おっしゃっていました。
また、明らかにKALSの事前対策を行なった人は発表用資料のクオリティが高かったように感じます。これは単純に情報量の差であると思います。
もし、可能であればKALSの対策とは別に、SNS/KALS/受験会場などで知り合った有志で集団討論対策を行うといいかもしれません。筆者もZOOMを利用して実際の試験まで4回ほど集団討論対策を行いました。
発表用資料作成についての注意点は以下の通りです。
グループディスカッションについての注意点は以下の通りです。
【個人面接】
一般的な面接で聞かれる内容については、事前に受け答えを準備していくといいと思います。また、大分大学の過去の面接での質問内容についての情報を持っていらっしゃる方は各質問に対して自分なりの答えを考えておくといいと思います。
個人的には一語一句覚えていくよりも、ざっくりとこんなこと話そうかなとキーワードぐらいを想定していた方が話しやすいと感じました。
筆者は、想定質問とそれに対する応答をankiというアプリに入れて、質問をランダムに表示させて、何度も声に出して練習しました。
筆者が事前に回答を用意した想定質問は以下の通りです。
大分大学におけるご自身の希望診療科は、しっかりリサーチしておくといいと思います。どんな先生がいらっしゃるか、どんな研究がなされているか、自分の興味のあるテーマはあるか、などです。
地域医療について関心のある方は、大分県の医療政策や統計データについてもしっかり目を通しておくといいと思います。
[その他、試験の感想など]
・面接の雰囲気
→終始とても穏やかに進み、真摯に向き合って、受験者のことを知ろうとしてくださっている印象を受けました。
・面接がどれくらい最終合格に寄与しているか
→最終合格者10名うちのほぼ全員が、すでに鹿児島大学や富山大学などの他大学の筆記試験も通過している人でしたので、筆記試験に重きが置かれている印象を受けました。
実際、合格者については男女比やバッググラウンドなどを考慮せずに合格しているように感じ、1点でも多く筆記試験で点数を取ることが最重要であると考えます。
もちろん、皆様、集団討論や個人面接なども卒なくこなしている方々ですので、筆記試験で良い点をとった上で、討論や面接も軽視せず、できる限りの準備を行うことが必要であると考えます。
4. 受験に際してのおまけ情報
・羽田からの場合、格安航空会社がございません。
→少し航空券が割高でANAかJALを利用することになると思います。片道2万円〜3万円ぐらいです。
・大分駅前のJRホテルの宿泊がおすすめです。
→大分の夜景を一望できる屋上温泉付きのホテルです。試験前に心をリフレッシュするには最高でした。また、朝もすぐにバスやタクシーにアクセスできるため、利便性も高いです。筆者は最終試験の際に利用しました。
・大分駅周辺に2個スタバがあるため、直前の勉強はここでできます。また、大学病院内にもスタバがございます。
・大分空港から大分駅までのバスは40分から50分程度かかった気がします。
→筆者はいずれも試験翌日に仕事があったので、試験後すぐに羽田に向かう飛行機で帰りましたが、大分駅から大分空港までもそれなりの時間がかかるので、スケジュールを詰めて入れていらっしゃる方は要注意です。
5. 最後に
医学部学士編入試験は、情報がなかなか出回らない試験であるため、情報収集に苦労されている方も多くいらっしゃると思います。また、そうした情報を手に入れようとしてもそれなりのコストを強いられ、ただでさえ受験のために色々な部分で切り詰めている受験生に負担がかかってしまうことを心苦しく思っておりました。
個人的な思いとしましては、なるべく情報格差を埋めて、フェアな環境で公正な選抜が実施され、その中で志高い方々が医学部編入への権利を勝ち取っていかれることを望んでおります。
少しでも皆様のお役に立てますと幸いでございます。
そうした背景もあり、今後も無料で情報提供を行わせていただきますが、noteには「サポート」という金銭的支援の機能があるようですので、もしこちらをご覧いただいた方の中で、「役立った」、「応援したい」と思ってくださる方がいらっしゃいましたら、サポート機能を活用してご支援いただけますと大変嬉しく思います。
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