伝統工芸品を現代に 岩澤硝子
東京スカイツリータウン・ソラマチの5階に墨田区の産業、文化、歴史などを紹介し、実際に商品を購入することができる「産業観光プラザ すみだまち処」をご存じだろうか。先日実際に訪れた際に見つけた硝子のスマホスタンドに惹かれて今回このスマホスタンドの製造元である岩澤硝子株式会社を調べてみようと思う。
墨田区立花にある「岩澤硝子株式会社」
はじめに、江戸川区に隣接している立花にある「岩澤硝子株式会社」について紹介したいと思う。
岩澤硝子は、大正6年より江東区猿江裏町にてガラス製造を開始しました。戦中は企業合同により一時中断しましたが、戦後に現在の墨田区立花にて新たに昭和26年5月に創業を開始致しました。
創業当初はレンズ(車やバイクのヘッドライトなど)や醤油注ぎ(ネジ口)を主に製造しておりましたが、ソーダガラスの他にも色ガラスや硬質ガラス(耐熱ガラス)、無鉛クリスタルガラス、リサイクルガラスなども溶融し、またガラスパウダーなども使用することで、食器(皿・鉢)、醤油注ぎ(すり口・ネジ口)などの調味料入れ、花器、灰皿、ペーパーウエイト、近年ではトロフィー、表札、雑貨品など多色多品種に渡るガラスを製作しております。
大正6年に創業してから103年間、絶えず技術が受け継がれていることに感動した。さらに、現代にも馴染むような商品を生み出す力があるからこそ令和の時代にも生き残っていけるのだなと納得した。
硝子の伝統工芸品というと祖父が使っている原色の青や赤一色の江戸切子のイメージしかなかったが、若い子にも受けそうな淡い色合いの硝子や食器だけではなく表札などもあり、筆者の中の硝子の伝統工芸品のイメージがガラッと変わった。
ストリートビューで見学してみた
現在、新型コロナウイルス感染防止のため現地に赴いて調査することができないため、今回Googleのストリートビューを使い工場や工場周辺の様子を見てみようと思う。
工場の周辺を見てみると住宅地の中に突然工場が現れる。さらに、工場の目の前には小学校もあり、住宅地に工場が馴染んでおり歩いて通ったら恐らく一度は素通りしてしまうだろう。
岩澤硝子はストリートビューで工場内まで見学することができる。工場内を探索することができるのでぜひ見てみてほしい。硝子を溶かす機械や製品にするための型やプレスする機械など素人の筆者には難しくてわからないがマニアには興味深いものになっているのではないかと思う。
5つの製法
岩澤硝子ではプレス成形法、圧迫成形法、スピンドル成形法、引き延ばし成形法、流し込み成形法5つの製法を製品の構造にあわせて使用している。
プレス成形法
溶けたガラス種を凹型(胴型)に入れ、凸型(矢型)で押して成形する方法。
型から取り出した器等は加熱表面処理をして滑らかさと輝きを増します。
皿鉢類のほか灰皿、正油さしやドレッシング容器の口栓などもこの方法で作られる。
圧迫成形法
特定の型の中で圧搾空気を入れながら成形する方法。
びん類や一輪挿し、とっくり等はこの方法で作られる。
スピンドル成形法
ガラス種を入れた金型を回転させ、遠心力を利用してガラス型に沿った形に広げて成形する方法。製品内面が型に触れないため、円滑な表面が得られ、柔らかな感覚を表現できる。ボール、プレート、タンブラー、ぐい呑みなどはこの方法で作られる。
引き延ばし成形法
凹型の金型の中に溶けたガラスを流し込んで成形する方法。
ガラスをヘラを使い、型通りに作り上げる技法です。
押し型とは異なり味わいのあるものを作り出すことが出来るので和食器等の平らな皿類をつくることに適しています。
流し込み成形法
ガラスを金型(枠型)へ流し込み成形する方法。
金型のデザインによっては隅々までガラスが流れ込まない場合はその部分をヘラなどで延ばして型通りに作り上げる技法です。
ペーパーウエイトやトロフィーなどを製作することに適しています。
公式サイトに製造過程の写真が載っているので是非見ていただきたい。よくテレビで見る棒状のものにガラス種を付けて空気を吹き入れて膨らます方法しか知らずこんなにも多くの製造方法があることに驚いた。これだけの製造方法を使い分け、淡い色に色付けるのにも熟練の技術が必要なのかなと思った。
イチオシは醤油注ぎ!
公式サイトを見るとなんと7種類もの醤油注ぎが販売されている。カラーバリエーションも豊富で花の柄やスカイツリーがデザインされているものもある。この醤油注ぎは60年間で累計2千万本も製造され長く愛されている商品であり、液だれしないタイプを新たに開発したところ6万本の大ヒット商品に!形も丸みが帯びているので柔らかい雰囲気であり、手に持ちやすいデザインもあるのが人気の秘密だと考える。
さらに、岩澤硝子の醤油注ぎは「すみだモダン」にも認定されている。428事業者の応募の中から137商品が「すみだモダン」のブランド認定されており、この醤油注ぎもそのうちの1つとなっている。「すみだモダン」が選ばれる基準は以下の通りである。
すみだブランド価値規定(=すみだモダン宣言)との合致度
・すみだの産業の歴史や伝統、文化や技術を受け継いでいる。
・人々の生活への新しい提案や革新性がある。
すみだのブランド力向上への貢献度
・すみだブランドの知名度、イメージアップへの貢献が期待できる。
・消費者ニーズに合致しており、市場性が高い。
独自性
・同業他社の商品より利便性、快適性、デザイン、味等の面で優位性がある。
信頼性・品質
・高い信頼性を持った商品等である。
・質の高さを維持、向上するための取組や裏付けがある。
理念・姿勢・背景
・すみだでものづくりをすることへの想いを持つ事業者である。
・すみだの地域活性化に意欲を持つ事業者である。
おわりに
事業者自身がこれからの時代に生き残っていくために新たな商品を開発したりカラーバリエーションを増やしたりなどの工夫をしているが、それを支え、広めていく墨田区の発信力にも感心した。しかし、今回この授業を受けなければ墨田区の工場の実態や「すみだまち処」、「すみだモダン」のことも知らずに終わっていたと思う。まだまだ墨田区の伝統工芸品の素晴らしさに気づいていない人も多いはずなので、このnoteをきっかけに広まっていけばいいなと感じた。
余談だが、スカイツリータウンにある「すみだまち処」では墨田区を紹介する様々なパンフレットや歴史や文化を知ることができるコーナー、職人による伝統工芸品作成の実演などがあり、カフェも併設されていた。カフェでは他の店舗とは違いパフェなどが格安で食べることができるのでおすすめだ。
↑左 抹茶パフェ380円 右 抹茶クリーム白玉あんみつ550円(少し食べちゃいました💦)