民法 問題56
Aは、Bに対し、売主をC、買主をBとする売買契約に基づくCの目的物引渡債務を保証することを約し、Bは、売買代金を前払いした。ところが、履行期が到来したにもかかわらず、Cは目的物を引き渡さない。
1(1) Bは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。
(2) Aが死亡し、D及びEが相続をした場合には、Bは、D及びEに対し、どのような請求をすることができるか。
2 BがCの債務不履行を理由として売買契約を解除した場合には、Bは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。
司法試験 平成元年度 第2問
1 問1(1)
Bは、Aに対して、保証契約(446条)に基づき、保証債務の履行を求めることが考えられる。
(1) CB間の売買契約(555条)の目的物が、物の個性に着目しない不特定物である場合、これはAでも調達しうるため、当該目的物の引渡しを請求することができる。
(2) 目的物が、物の個性に着目した特定物の場合、これは売主Cしか調達し得ないと考えられるので、Bは、Aに対して目的物の引渡請求をすることができない。
もっとも、当事者の合理的意思解釈として、目的物が特定物の場合、保証人は、売主の債務不履行の際には損害賠償をする旨を契約内容として締結したと考えられる。したがって、Bは、Aに対して損害賠償請求をすることができる。
2 問1(2)
DEがAを相続しているため、Aの保証債務もDEに包括承継(896条本文)される。したがって、Bは、DEに保証債務の履行を請求することができる。
(1) 保証債務の内容が不特定物の引渡債務の場合、性質上不可分であるので、Bは、DE両者に履行を請求することができる。
(2) これに対し特定物の場合は、前述のとおり損害賠償を保証としたと考えられるため、損害賠償債務をDEは負う。そして、金銭債務は性質上可分であるため、Bは、DEに対して、相続分に従ってのみ請求することができる。
2 問2
BがCの債務不履行を理由して解除(545条)した場合、Bは、Aに対して、原状回復義務としてCに支払った金員の返還請求(545条1項本文)及び損害賠償請求(545条4項)をすることが考えられる。
(1) 損害賠償請求については、前述のとおり認められる。
(2) これに対し、原状回復義務については不当利得(703条)を本質とするものであり、保証契約から生じるものとは別個独立の債務だとして、AはBの上記請求を拒むことが考えられる。
この点、解除の効果は、契約の遡及的消滅である。そうすると、保証契約の対象となる債務も消滅するため、原状回復義務は主たる債務とは別個独立した債務とも思える。
しかし、当事者の合理的意思解釈としては、売主の不履行によって生じる一切の債務を負担するものと考える。そうすると、原状回復義務も保証債務の内容となっていると解釈できるため、買主は保証人に対してこれを請求することができると解する。
したがって、Bは、原状回復義務についても、Cに請求することができる。
(3) よって、Bの上記請求は認められる。
以上