民法 問題13
Aは、その所有する甲土地にBのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後、Cに対し、甲士地を建物所有H的で期間を30年と定めて賃貸した。Cは、甲土地上に乙建物を建艇し、乙建物にDのために抵当権を設定して、その旨の登記をした。その後、Cは、甲士地上の庭先に自家用車のカーポート(屋根とその支柱だけから成り、コンクリートで土地に固定された駐車設備)を設置した。右の事案について、次の問いに答えよ。(なお、各問いは、独立した問いである)
一. Bの抵当権が実行され、Eが競落した場合、乙建物及びカーポートをめぐるEC間の法律関係について論ぜよ。
二. Dの抵当権が実行され、Fが競落した場合、乙建物及びカーポートをめぐるFA間の法律関係について論ぜよ
第1 問一
1 Eは、落札した甲土地の所有権(206条)に基づき、Cに対して、乙建物の明渡しを請求することが考えられる。
この点、乙建物の賃借権は抵当権設定後のものであり、その登記また抵当権者の承諾がないため、競落人であるEに対抗できない(387条)。
したがって、Eは、Cに対して乙建物の明渡しを請求することができる。
2 次に、同様に、カーポートの収去請求をすることが考えられる。そこで、カーポートの所有権の帰属が問題となるところ、カーポートが甲土地に付合(242条本文)しているかが問題となる。
(1) 242条の趣旨は、社会経済上と法律関係簡明化の観点から、付属させられた物につき1個の物として単独所有に服させる点にある。そこで、「付合」とは、付属させられた物が分離復旧することが事実上不可能ないし社会経済上著しく不利益な状態をいうと解する。
(2) 本問では、カーポートは土地に固定されているものの、支柱だけがコンクリートで固定されただけである。また、カーポートの構造もその支柱と屋根だけで成り立っており、これらの撤去は建物などに比べると比較的容易である。だとすると、分離復旧が事実上不可能または社会経済上著しく不利益とはいない。
したがって、カーポートは土地に付合されていないと解する。
(3) よって、カーポートの所有権はいまだCに帰属するため、Eは、Cに対して、甲土地所有権に基づく収去請求をすることができる。
第2 問二
1 Fは競落によって乙建物の所有権を取得したところ、Fは、Aに対して乙建物の賃借権を対抗できるか。対抗できないとなると、Aは、甲土地所有権に基づき乙建物の明渡し請求をすることが考えられる。そこで、乙建物の抵当権の効力が賃借権にも及んでいるのかが問題となる。
(1) この点、370条の「付加して一体となっている物」とは、242条の付合物と同義であるところ、賃借権は物にあたらないため370条の適用はない。
もっとも、87条2項の「処分」には抵当権の設定も含まれるところ、同条項の趣旨は、従物は主物の法律的運命を共にし主物の効用を高める点にある。そして、従たる権利にもこの理はあてはまるため、同条項を類推適用できると解する。
したがって、87条2項類推適用により、賃借権も抵当権の効力が及んでいると解する。
(2) よって、Fは、Aに対して乙建物の賃借権を対抗することができる。
2 もっとも、賃借権の承継については賃貸人たるAの承諾が必要となるところ、承諾を得られない場合は、裁判所に承諾に代わる許可を求めることができる(借地借家法20条)。
3 次に、カーポートにも抵当権の効力が及んでいるか問題となるが、カーポートも主物たる乙建物の効用を高める物であるため、87条2項直接適用により抵当権の効力が及んでいると解する。
したがって、カーポートもFが所有権を取得するため、Aは、Fに対してカーポートの収去請求をなし得ない。
以上
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