民法 問題24
Aは、自己所有の土地(以下「本件土地」という。)をBに売却し、同土地をBに引き渡したが、まだ登記はされていない。その後、Bは、Cに対して本件土地を転売して引き渡したが、BC間でも登記はされていない。ところが、その後、Bがいつまで経ってもAに代金を支払わないので、AはBに催告した上、Bとの契約を解除し、本件土地をDに売却した。ただし、本件土地の登記は、いまだにA名義のままである。
CD間の法律関係について、論じなさい。
Dは、Cに対し、本件土地の所有権に基づき引渡し請求をすることが考えられる。かかる請求が認められるためには、本件土地ついてDが所有権を有し、Cが占有していることが必要である。
1 Cは、本件土地をBから引渡しを受けていることから、占有しているといえる。
2 では、Dは、本件土地の所有権を取得したことをCに対抗できるか。
(1) 本件土地は、Cが、Aより購入したBから売買契約(555条)にて取得しているものの、AB間の売買が解除(541条)により遡及的に無効になっている。そのため、BC間の売買も遡及的に他人物売買(561条)となることから、解除後にAから本件土地を購入したDの上記請求が認められるのが原則である。
これに対し、Cは、自己が「第三者」(545条1項ただし書)にあたるとして、本件土地の所有権が自己に帰属していることを主張すると考えられる。
そこで、同条項ただし書の「第三者」の意義が問題となる。
ア この点、「第三者」とは、解除の遡及効により害されるものを保護するとの同条項ただし書の趣旨から、解除された契約を基礎として、解除前に新たに権利を取得した者をいうと解する。
そして、「第三者」として保護されるための要件を検討するに、解除されるか否かは定かでない以上は善意・悪意の問題とすることはできないが、何ら帰責性のない者を犠牲にして保護を受ける以上、権利保護要件としての登記が必要であると解する。
イ 本件では、Cは、解除の意思表示前に本件土地を譲り受けているため、解除された契約を基礎として解除前に新たに権利を取得した者といい得るものの、登記はいまだAの下にある。したがって、「第三者」として保護されない。
ウ よって、Cは、「第三者」にあたるとして本件土地の所有権が自己に帰属することを主張できない。
(2) そうだとしても、Dは、Cが177条の「第三者」にあたるのであれば自己に所有権が帰属していることをCに対抗することができない。
そこで、同条の「第三者」の意義が問題となる。
ア そもそも、177条の趣旨は、登記を基準とした画一的処理により不動産取引の安全を図る点にある。かかる趣旨からすれば、「第三者」とは、取引安全を図るに値する者、すなわち当事者及び包括承継人以外の者であって、不動産登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいうと解する。
イ Cは、本件土地の所有権を取得し得ず無権利者であるため、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者とはいえない。
ウ したがって、Cは、177条のいう「第三者」にあたらない。
3 よって、Dは、本件土地の所有権取得をCに対抗できるため、Dの上記請求は認められる。
以上