探偵としての才能の芽生え
わたしが初めて真剣に付き合ったオス1号の話。
出会いはバイト先の居酒屋。
わたしは高校3年生。
彼は大学4年生で就活をしており、当時バイト内でフリーターとして働く年上のお局と交際していた。
そのころ私は大学にも専門学校にも行く気がなくフラフラ×2。
もちろん親子関係も悪く、留年危機もあるちょっとカワイイだけの処女女子高生。貴重。
小さい頃からモーニング娘。になりたかったわたし。
「アイドルになりたい。」
そんなバカげた夢は親に言い出せず、放課後に友だちとカラオケで歌って踊りまくる。
そうしてその気持ちを発散していた。
居酒屋バイトの他に、週に何度かアイドルカフェ(現在のコンカフェ)というところで、おじさんたちにお給仕をする。アイドルごっこでライブの真似事をして働く。
小中高と彼氏がいたことがなく、「わたし以外にだれが本当にアイドルになれるか。」と本気で思っているバカチンでした。
そんな日々の中、年末頃から例の彼から
「ホクちゃん、バイト終わったら送ってあげるよ」と言われることが増え、何度も彼に送迎してもらうことに。
「あれ?彼女さんいいんですか?」
「別れたんだよね〜」
あろうことか、彼は期限切れ間近の女子高生に手を出し始めたのだ。
その頃から無頓着で男っ気のない私はただ「へ〜〜」というだけ。大の雪嫌いのわたしは車に乗って帰宅することの楽さに甘え、のほほんとしていた。
しかし、
・バイト先の男
・年上の男
・社会人になる男
・男の運転(親の車)
の条件下で繰り返し送迎をされると、無頓着だった私にも恋心が芽生える。
そうしてとうとう彼からの「付き合ってほしい」という発言にのうのうとyesと返事するのである。
今の私ならキッパリと止められる。
「バイト先で女コロコロ変えるような、しかも女子高生を狙うだなんてろくなオスじゃない。やめなさい。」
交際はバイト内で秘密で行われた。
しかし何度も送迎場面を見られると周りも勘づくものである。
お局にバレた。
そうして元カノのお局に嫌味を言われる日々。
悲劇のヒロインになりきるわたし。
間で仲裁するいいオトコぶる彼。
茶番です。
高校卒業も間近になり、調子の良い彼は、
「卒業したら一緒に住もうよ。」
と言い出すのである。しかも、生活費は全て彼持ちとのこと。気前のいい彼。
そこはアッパレを出します!
一応わたしの両親とも顔を合わせ話をしてくれた。
その当時、不仲すぎる親子関係を引き裂いてもらうために、わたしも彼を利用したということになる。
父親からのイジワルな質問にも、
「苦労はさせません」と男らしい発言。
彼を信じきっていた。
同棲生活が始まり、アイドルカフェにも通うが「アイドルは恋愛禁止」という固定観念があるわたしには徐々に罪悪感が芽生え、早々に辞めることになる。
そこからは飲食バイトやパチンコバイトをして、稼いだ金は自分に全部使っていた。
「わたし結婚するんだ〜♡」なんて頭の中はお花畑。結婚ごっこにウットリしていた。
幸せな生活は長く続くわけもなく、だんだん彼に違和感を覚え始める。
営業職のためなんせ飲み会が多い。
そして、酒癖が悪い。
わたしが仕事でいない日の休みはパチンコに行っている。
わたしが休みの日も少し仕事があると行って私服で抜け出す。
極めつけは「お金たりないから、生活費少しだしてくれない?社内旅行でラフティングするんだよね〜。」と言い出す彼。
不信感が芽生える。
なんでわたしがお前の川下りのために金を出さなきゃいけねーんだ。
探偵活動の始まり。
クレカの明細を見る。
【オイランドウチユウ 〜〜〜円】
「すすきの 花魁道中」で検索。
ハードなセクキャバがでてきた。
チューしてオッパイさわって、ダウンタイムにはスカートの中に頭を入れることができるらしい。
未知の世界との遭遇。
スマホもみる。他人のスマホなんて見るの、
これが初めて。どきどき。
中身は真っ黒。
わたしが休みで「ちょっと仕事がある」と言って出かけていた日は元カノのお局と密会していた。
もうこれは、
「iPhoneをさがす」しかない。
あの手この手で彼のiPhoneのパスワードを知り、彼のiPhoneを四六時中探すようになった。
これがわたしの探偵能力の目覚め。
すべての証拠が揃ったある日、わたしは彼を問い詰めた。
わたしも生意気なのでイジワルな詰め方をして彼を本気で怒らせ、殴る蹴るの嵐。
DVはそこから始まり、長期間耐える。
ここで別れれば良かったものの、彼の弱みを握っているので生活費は出してくれるし、わたしも悲劇のヒロインに酔ってしまっていた。
ダラダラと2年間も無駄にしてしまうのである。
しかし親にバレる。
そんな彼のおかげでわたしは実家に連れ戻され、仮面良好な母親との生活に戻っていくのであった。
この彼との出会いがなければ、探偵能力は開花しなかった。
「iPhoneをさがす」がなければ、オスのだらしなさを知ることもなかった。
ありがとう。スティーブ・ジョブズ。
わたしは生きてます。
〜番外編〜
彼の母親は保育園の園長をしていた。
当時メガネ屋だったわたしに、
「ホクさんは資格も取らずにダラダラと仕事を続けるの〜?」
というイジワル発言にメラメラして、保育士の資格を取得するのであった。