設計とCAD

突然だが、設計の流れは「工学設計―体系的アプローチ(ポール&バイツ)」にある通り、トップダウンである。

ここで言うトップダウンとは、設計の大まかな部分をはじめに決めて、詳細に降りてゆくことを意味している。

対義語としてはボトムアップという言葉があり、これは逆に詳細から決めていき、結果として全体が決まるというものである。

例として自動車を挙げると、

自動車の全体像、いわゆるデザインを決めてから、タイヤやエンジンを配置し、エンジンに許された容積内にエンジンを作り込んで行く。
このようにどんどん大まかな部分から細かい部分に設計が進んでゆく。
大してボトムアップというのは、例えば、使いたいエンジンがあるからそれが乗る車体を作ろう。と言った具合に設計が進む。
エンジンありきで車体をデザインして、残りのユニット、部品たちはトップダウンで設計する。ということもあるかもしれない。

ただし、ほとんどすべての部品がボトムアップで設計されるとなると、一度決めた部品を寄せ集めて、バランスの良い整品を作ることは困難である。
理由はすべてを理解して同時並行で食い違いの無い設計をすることは一人でも難しいし、大勢ならなおさら難しいからだ。

だから、想像してみてほしいが、新しいものを開発する場合、どちらが有利か。
答えは明らかにトップダウン設計だ。

何らかの学校などで設計を学んだ諸君はいわゆる「設計製図」といった授業では最初に学ぶのは部品図の描き方ではないだろうか?
想像するに、単体の簡単な部品で図面の基礎を理解するためだと思う。
組図の描き方も学ぶが、教科書にあるような手本の図面をコピーして図面の描き方を練習する。ばかりではなかったか。
結局、学生は設計の流れを学ばずに「設計製図」の授業を履修することになっている可能性がある。

さて、話をCADに戻す。
現在は3DCADが様々な企業で採用されている。
多くはミドルレンジ以上のCADだと思う。
ミドルレンジの代表格はSolidWorksやSolidEdgeなどで、
ハイエンドはCatia、NX、Creoの3つに集約されている。

それぞれの詳細な違いを示すことはできないが、
ミドルレンジとハイエンドの大きな差の一つはトップダウン設計が可能かどうか?であると私は考えている。

1ライセンスあたり、ミドルレンジCADは100万円~、ハイエンドCADは300万円~と言われてる。ちなみにローエンドCADは20万円程度から存在するように思う。
かなかな高価である。

では機能的な違いはどこにあるか。
大まかにいうと、トップダウン設計が可能かどうかであると思う。
実は私はミドルレンジCADを業務で使用しているので、ハイエンドCADについては素人であるが・・・

トップダウン設計で大事になることは、まずはじめに大きな形を決め、そこからどんどん詳細を決めていくわけなので、大きな塊を小さい塊に分割することが必要である。
分割ができるかどうかが肝心である。

近年ミドルレンジCADも1つのファイルに複数のボディを持つことが可能になっているが、あくまでも補助的な役割である。
そのため、パーツファイルを組み合わせてアセンブリファイルを作る必要がある。これらは拡張子が異なる。
パーツファイルに別のパーツファイルと入れることは基本的には困難である。

対してハイエンドCADは(NXは)アセンブリファイルという概念がそもそもなく、ファイルにファイルを入れて組み立てればアセンブリモデルになるし、逆に元々1つのパーツを分解することでアセンブリファイルにすることも可能である。
これが最も異なる部分で、トップダウン設計を可能にする機能となる。

繰り返しになるが、大まかな形状を決め、それを任意の部分に分割することで部品を形作り、その過程で組み立てられたモデルもできるわけである。
つまり、上から下にきれいに流れができている。

対してミドルレンジCADでは大まかな形状を決めたら、それとは別のパーツファイルを用意して、その中で個々の部品をそれぞれモデリングする。
できたら、パーツファイルを寄せ集めてアセンブリファイルを作る。
各パーツは記憶を頼りに「こんな感じ」で作るため、最初のアセンブリファイルは整合が取れていない。
これを修正するために非常に時間がかかっている。
設計自体はトップダウンにしたいのにやっていることがボトムアップとなっており、流れが悪い。

CADソフトの価格の差と機能の差を単純に比較することは私にはできないが、財布が許すなら断然ハイエンドCADだ。
特にスピード感を必要とされる実設計の業務ではなおさら。

設計とCADの種類についてはこのくらいにします。
元々この記事を書こうと思った動機が「トップダウン設計がしたい!」という気持ちでしたので、共感いただけると幸いです。

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