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流体力学 カルマン渦列(その2)

 皆様おはこんばんちは。
 
 流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 第45回目は,「カルマン渦列(その2)」について紹介していきます。なお,カルマン渦列は連載企画となので,その1をご覧になっていない方は是非,記事を参照してください。
 そして,筆者MEの復帰作となるので,予めご了承ください。
 

(1)カルマン渦列の復習

 先ほども触れましたが,カルマン渦列(その1)を以下に参照します。

 では,「カルマン渦列」についての復習です。カルマン渦は,図1のように静止している液体中に円柱のような物体を動かすとき,物体の背後に2列になって渦が発生し,渦列となります。その特徴は,一方の列の渦はすべて同じ方向に回転しているのに対し,他の列はすべて反対方向に回転していることでした。

図1 カルマン渦列のモデル

 そして,カルマン渦列全体のx,y軸方向の速度成分はそれぞれ式(1)のように表せます。


では,2列の渦列がどう動くかで速度成分がどのように変化するかを追っていきましょう。

(2)2列の渦列がx軸方向のみに動く場合

 ここでは,カルマン渦列の全体のx,y軸方向の速度成分を使って,渦列の速度を求めてみましょう。但し,2列の渦列がx軸方向のみに動く場合は,2パターン考えることが出来ます。
 1つ目は,2列の渦列が同じ位置で軸対称となる,いわゆる「対称型渦列」です。一方,2つ目は,2列の渦列が異なる位置になる「非対称型渦列」です。今回はいずれのパターンにおける速度成分を考えていきます。
 

(2-1)対称型渦列の速度

 では,対称型渦列を考えましょう。前提条件として,2列の渦列がx軸方向のみに動くことを考えるので,必然的にy軸方向の速度成分vは「ゼロ」になります。めっちゃ簡単にするためにこんなことを考えるとは…。考えた人は絶対暇人かつ狂っています。ちなみに,カルマン渦列の様子は,図2のように表せます。

図2 対称型渦列のカルマン渦列

 図2に示す通り,y軸方向の速度成分vはゼロとなり,渦列のズレx0も原点と同じ位置となりますので,x0 = 0となります。よって,この条件を式(1)へ代入すると,式(2)のように表せます。


  式(2)のように,ハイパボリックが出てくる式(1)からかなり優しくなったのではないでしょうか。特に多項式から単項式になったことでどの因子が影響を及ぼすかが分かりやすくなります。
 ここで,式(2)を考察します。循環Γが大きくなると,速度uも比例関係なので大きくなります。これは,そもそも循環Γの定義と合致するので,予想通りの結果と言えるでしょう。
 そして,渦列のx軸方向の間隔aが大きくなると,速度uは小さくなります。カルマン渦列の速度uは,隣同士の渦列の間隔が近いと渦の循環(渦の回転速度)が大きくなる方向に影響を及ぼすのでしょう。
 これに対して,渦列のy軸方向の間隔bが大きくなると,速度uは大きくなります。そのため,渦の速度を大きくするには,流線上の渦列の間隔は小さく,渦列の間隔は遠ざけるように配置することが必要になります。対して,渦の速度を小さくするには,逆のことをする必要があると言えます。
 

(2-2)非対称型渦列の速度

 次に,非対称型渦列を考えましょう。カルマン渦列の様子は,図3のように表せます。

図3 非対称型渦列のカルマン渦列

 図3に示す通り,y軸方向の速度成分vはゼロとなります。渦列のズレx0は,簡単にするために±a/2の位置に配置するので,x0 = ±a/2となります。よって,この条件を式(1)へ代入すると,式(3)のように表せます。


 式(3)は,式(2)と異なり,ハイパボリックコタンジェントからハイパボリックタンジェントとなりますが,実は影響因子による変化は式(2)のときとまったく同様です。つまり,対称であっても非対称であっても,速度を変化させる影響因子の振る舞いは同様なのです。カルマンさんの功績はマジですごいですね。

(3)まとめ

 今回の記事のまとめを以下に示します。
(1)カルマン渦の一方向の速度成分に限定して考えると,対称型渦列と非対称型渦列に場合分けができる,
(2)カルマン渦列の速度成分に影響を及ぼす因子は,対称型渦列でも非対称型渦列でも同様の変化となる。

  以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。
  次回は,「カルマン渦列(その3)」について,解説する予定です。


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