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流体力学 渦周りのポテンシャル流れ(その2)

 皆様おはこんばんちは。そして,お疲れ様です。

  最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 第38回目は,前回の予告通り「渦周りのポテンシャル流れ」について紹介していきます。

 (1)渦周りのポテンシャル流れについて

   では,「渦周りのポテンシャル流れ」について,解説していく訳ですが,連載企画となります。最近の筆者自身の流行りという訳でもありませんが,以下に解説していく順番を示します。

(ⅰ)強制渦
(ⅱ)自由渦
(ⅲ)原点より半径における圧力変化
(ⅳ)2次元流れにおける中心静圧p
(ⅴ)渦周りの複素ポテンシャル
(ⅵ)渦周りのポテンシャル流れの応用例(ビオ・サバールの法則)

  渦については,過去の記事にて紹介していますので,気になる方はチェックしてみて下さい。今回以降の記事は,数学的な議論がメインとなります。そして,「渦周りのポテンシャル流れ(その2)」では,(ⅲ)原点より半径における圧力変化,と(ⅳ)2次元流れにおける中心静圧を取り上げていきます。

  

(2)原点より半径における圧力変化

  では,早速上記の問題を証明していきましょう。主題は,「原点を中心に円運動する定常流の2次元流れにおいて,原点より半径における静圧を証明せよ」です。今回は,2通りのやり方で求めます。そこで必要となるモデルと式をそれぞれ確認します。

  まず,モデルについては,流体微小要素を使います。そして,原点より半径における静圧を知りたいので,極座標形式を用います。

 次に,式については,流体の一般式であるナビエ・ストークス方程式(N-S方程式)を使用します。但し,定常流および2次元流れであることを利用し,かつ新たに非圧縮性流体(密度一定)であることを仮定した場合は,N-S方程式より簡単なオイラーの運動方程式が利用できます。

 

(2-1)オイラーの運動方程式による証明

  これらのことを理解したうえで証明していきましょう。最初に,極座標のN-S方程式(オイラーの運動方程式)は式(1)のように表せます。

 ここで,定常流であることから,時間変化における半径の速度成分や半径の速度成分はゼロとなるため,式(2)のように書き換えられます。

 これにより,静圧pは,半径rのみの関数として表せます。つまり,式(2)から分かるように半径rが小さいと,半径における静圧変化は大きくなり,半径rが大きいと,半径における静圧変化は小さくなるため,原点に近いほど静圧変化が大きくなるという直観通りの結果となるのではないでしょうか。

 

(2-2)極座標モデルによる証明

  図1に示すような流体微小要素を極座標系で考えたものを示します。ここで,微小表素が受ける力をそれぞれ考えます。以下に,流体微小要素が受ける力をそれぞれ箇条書きに示します。

図1 微小要素が受ける力

(ⅰ)半径rの面に生じる力(赤線)
(ⅱ)半径r+drの面に生じる力(青線)
(ⅲ)側面に生じる力(緑線)
(ⅳ)遠心力(橙線)

  以上の力が生じている場合は,式(3)のような力のつり合い式が成立します。

 このつり合い式を解くと,式(4)のように表せます。これは,オイラーの運動方程式による証明で得られた式(2)と同一のものであり,静圧pが半径rのみの関数として表せます。

 

(3)2次元流れにおける中心静圧

  この証明は,先ほどの式(2)及び式(4)で得られた静圧と半径における関数を用いるため,「原点より半径における圧力変化」が分かることではじめて証明ができます。主題は,「角速度ωの1本の無限に長い直線の渦管(半径a)がある場合,これに垂直の2次元流れにおける中心静圧を証明せよ」です。

  この証明に入る前に大事なことがあります。それは,渦管の内側と外側で渦の流れが異なることです。これは,過去の記事で紹介していますので,確認してみて下さい。


 結論から言えば,渦管の内側では「強制渦」,渦管の外側では「自由渦」となります。よって,周速度vθが両者の間で異なるため,それに伴って中心静圧も異なる可能性が十分にあることから,図2のように半径rが渦管の半径aより大きいか小さいかで2つの場合分けを考える必要があるということになります。

図2 渦管の内側と外側におけるモデル

 

(3-1)r≦aの場合

  それでは,証明していきましょう。式(2)または式(4)の半径における静圧変化と渦管内部で発生する強制渦の周速度を用いて証明します。
 半径における静圧変化の式(1階線形微分方程式)に強制渦の周速度を代入すると,式(5)のように表せます。

 ここで,境界条件を設定します。渦管の内側で起こっている現象のため,半径r<aの中で圧力pがどのように変化するかを考える必要があります。半径rがゼロのとき(r=0),圧力は大気圧と同様になる(p=p0)と仮定します。この強引ともいえるべき仮定ですが,台風の目と呼ばれる場所が最も圧力変化のないポイントであることからも,実際に起きている現象と仮定に相違がないものとしています。
 よって,この境界条件から積分定数Cを求め,微分方程式の一般解から特殊解にすると,式(6)のように表せます。

 

(3-2)r>aの場合

  (3-1)と同様に証明を行います。今度は,半径における静圧変化の式(1階線形微分方程式)に自由渦の周速度を代入すると,式(7)のように表せます。

 ここで,境界条件を設定します。今度は,渦管の外側で起こっている現象のため,半径r>aの中で圧力pがどのように変化するかを考える必要があります。半径rが渦管の半径aと同一になったとき,圧力pが式(6)になると考えます。
 よって,この境界条件から積分定数Cを求め,微分方程式の一般解から特殊解にすると,式(8)のように表せます。

 これにより,渦管の内側と外側で圧力が大気圧を基準にしているものの微妙に異なることが分かりました。

 

(4)まとめ

  今回の記事のまとめを以下に示します。
(1)静圧pは,半径rのみの関数として表せ,半径rが小さいと静圧変化は大きくなり,半径rが大きいと半径における静圧変化は小さくなる。
(2)2次元流れにおける中心静圧は,渦管の内側と外側で異なる圧力を示す。

 以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。

 ※次回は,「渦周りのポテンシャル流れ(その3)」を取り扱う予定です。


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