流体力学 自由渦の2次元流れのグラフ
皆様おはこんばんちは。そして,お疲れ様です。
最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
第15回目は,第14回目で予告した通り,「自由渦のグラフ」について紹介していきます。
2週間ほど投稿をしておりませんでしたが,翼理論にはまってしまって,投稿をおこたりました。この場を借りてお詫び申し上げます。最近,Twitterを開設しましたので,「何かと戦っているのかな?」と思わせる投稿をしています。興味のある方だけ,ご覧ください。
(1)綺麗なグラフから自分で描けるグラフへ
さて,前回取り上げた「自由渦」の続きで「グラフ」について取り上げていきます。前回の「自由渦」の参考となるグラフを図1に示します。図がいわゆる教科書的なグラフ,いわゆる綺麗なグラフです。グラフを覚えることを筆者は頑固拒否していますが,グラフを描くには綺麗な必要もありません。但し,描き方が分からなければどうしようもありません。
以前に「わき出しと吸込み」のグラフを取り扱ったときに極座標から直交座標に描く変換作業を行いました。
今回取り上げる「自由渦」も「わき出しと吸込み」と同様に直交座標を極座標へ変換しているだけですから,極座標も同様に直交座標へ変換できれば,今まで扱ってきた2次元にグラフを描くことができます。
図1 自由渦の2次元流れ
「わき出しと吸込み」のグラフの記事を読んでいいない方・分からない方は,以下から確認してみてください。
(2)自由渦の場合
(2-1)速度ポテンシャルと流れ関数
では,式(1),式(2)に自由渦の速度ポテンシャル及び流れ関数をそれぞれ示します。
ここで思い出していただきたいのは,直交座標と極座標の関係です。いわゆる単位円を考えることで,2次元流れの極座標を直交座標にかくことができます。登場するのは,原点から任意の点までの距離(半径r)とx軸とのなす角θの2つで,半径rとx軸とのなす角θは,式(3)のように表せます。
つまり,半径rとx軸とのなす角θが分かれば,2次元流れの直交座標(x ,y)に描くことができます。よって,式(1),式(2)にある半径rとx軸とのなす角θが主役になる形に式変形すればよいので,式(4),式(5)のように表せます。
これでグラフを描く準備は整いました。たったこれだけなのですが,意外とここまで解説している教科書はありません(筆者は,上記の解説をしている流体力学の書籍は1個しか知りません…)。ちなみに,速度ポテンシャルφと流れ関数ψについては,一定値であることから適当な値を代入して問題ないのです。
あとは,グラフを描くときのテクニックになります。続けて,グラフの描画をしてみましょう。
(2-2)Excelによるグラフ描画
では,式(4)と式(5)を使って「自由渦のグラフ」を描画しましょう。そのために,表を早速作っていきましょう。そこで,今回はこのような仮定のもとでグラフを描画していきます。
【仮定】渦の強さΓ=2π[cm^2/s]
仮定は以上です。たったこれだけでグラフ描画できるのです。また,速度ポテンシャルφと流れ関数ψはそれぞれ-2.0~2.0まで0.2刻みで行います。
それでは,表の作成を行います。Γ,φ,ψをそれぞれ設定できたので,式(4)及び式(5)を使って計算を行います。注意としては,式(5)のθがラジアン表示になるので,わかりやすくするため,今回は度数法表示も併せてかいています(表1参照)。これを使って,その他の直線(等ポテンシャル線線)と円(流線)を描くのに使っていきます。
表1 自由渦の半径rとx軸とのなす角θの計算結果
(2-3)流線の描画
はじめに,流線の描画を行います。表1の計算結果をもとに円を描く準備としてx, yを算出するために,式(3)を利用します。ここで決まっている値と変数の値を整理します。まず,決まっている値は半径rです。表1の計算結果から21通りあることが分かります。一方で,変数の値はx軸のなす角θです。そして,流線を描く,すなわち円を描くためには原点を中心に一周しなければならないので,θの範囲は,-π≦θ≦π(-180°≦θ≦180°)が必要になります。
以上のことを踏まえ,表2に流線の計算結果を示し,図2には,流線に加えて流線の2次元流れをそれぞれ示します。
表2 流線の計算結果
図2 流線の2次元流れ(赤実線で描画)
これで,流線が描画できました。ここで,前回の記事では,半径rを途中で描画していない箇所がありましたが,今回はすべて描画しました。近くで見ると,点に見えると思いますがご了承ください(そう思うのは,筆者だけかもしれませんが…)。
(2-4)等ポテンシャル線の描画
では,次に直線,いわゆる等ポテンシャル線の描画をしてみます。直線を描画するには少し頭を使う必要があります。考えるべきポイントは2点です。
1点目は,直線の描画です。前回同様に,原点を通過する場合なら傾きの算出をするために,タンジェントθ(tanθ)を使います。つまり,式(5)で算出したx軸とのなす角θを使って,tanθを算出すれば「傾き」は表せます。
2点目は,傾きに必要な変数の設定です。前回取り上げた「わき出しや吸込み」のグラフと同様に,x:―20~20(1刻み)で行いました(表3参照)。
表3 等ポテンシャル線の計算結果
表3を使うと,等ポテンシャル線(青点線)が描画できます(図3参照)。前回のわき出しと吸込みのグラフでは,記入していない等ポテンシャル線がありましたが,今回はすべて描画しています(見辛いのは,ご了承ください)。
図3 等ポテンシャル線の2次元流れ(青点線で描画)
(2-5)等ポテンシャル線と流線の交点
最後に,等ポテンシャル線と流線の描画を行った結果に,それぞれの交点を描画します。そのためには,表1の計算結果を使います。半径rとx軸とのなす角θが既に算出できているので,これを2次元の直交座標(x, y)に描くために式(3)を用いて,xとyをそれぞれ算出します。図4及び図5には等ポテンシャル線と流線の交点を等ポテンシャル線と流線上に描画したものと交点のみをそれぞれ示します。
図4 自由渦の2次元流れ(等ポテンシャル線と流線あり)
図5 自由渦の2次元流れ(等ポテンシャル線と流線なし)
これで「自由渦のグラフ」が描けました。わき出しと吸込みのグラフでも解説しましたが,グラフを描くための解説は,教科書には載っていないことが多いのです。だからこそ,ここに目を付けて,時間をかけても知っておく必要があると筆者は考えております。
(4)まとめ
今回の記事のまとめを以下に示します。
(1)グラフを描くためには,わき出しと吸込みと同様に,自由渦も速度ポテンシャルと流れ関数を半径rとx軸とのなす角θが主役になる形に式変形する必要がある。
(2)「自由渦」のグラフは「等ポテンシャル線と流線」は,「わき出しと吸込み」のグラフの逆である。
以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。
※次回は,渦のポテンシャル流れの合成について扱う予定です。
(5)おまけ
図6に自由渦の2次元流れのグラフを方眼紙に描いたものを示します。しかし,この描画は間違えています。
見辛いですが,速度ポテンシャルφと流れ関数ψの値の取り方が無茶苦茶になっていることから,等ポテンシャル線と流線の交点が意味不明な交点になっているのです。グラフがExcel上で描けない場合の最終手段は「手書き」かもしれませんが,変数の取り方を誤ると残念なことになるので,皆様も気を付けてください(汗)。
図6 自由渦の2次元流れ(方眼紙による描画)
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