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CCTV虫の目レンズのススメ ~巻ノ壱~セットアップ概要編~
はじめまして、枯草泥舟と申します。
本記事シリーズではCCTV虫の目レンズのセットアップについて簡単に紹介していきます。
一通り読んで頂ければ虫の目レンズを組むことができるかと思います。
巻ノ壱では虫の目レンズの簡単な概要とこれまで私が組んだセットアップについてご紹介します。
CCTV虫の目レンズのススメシリーズ。
私自身、光学に関しては素人であるため、用語・知識等間違っている箇所等あると思いますので、ご指摘頂けると幸いです。
拙い文章ではありますが、お手すきの際に鼻でもほじりながら流し読んで頂き、虫の目レンズに少しでも興味を抱いて頂ければ幸いです。
ご意見・ご質問はTwitterでも受け付けております。
※当記事を参考に改造等を行って機材の故障等があった場合、此方は一切の責任を負いませんので自己責任にてお願いします。
虫の目レンズとは
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虫の目レンズの定義とはなんなのか……私も知りません。
私の中の定義としては超~準広角マクロ撮影を可能とする先端が細径になっているレンズシステムとしています。
有名なところではM13マウントのCCTVレンズ”G1.9”を用いたもの、
Fit社の魚露目8号を使ったものがあります。
正直、ハーフマクロ程度で広角マクロを撮影するのであればマイクロフォーサーズ用レンズ等を使用する方が楽な面が多いですし、超広角等倍マクロではLaowa15/4.0と言った選択肢があります。
それらと比して違うのは、
先端が細径であるため、被写体に警戒心を与えにくく、近づきやすい。
先端が細径であるため、ライティングがしやすい
ローアングル等、撮影アングルの自由が効く。
組み合わせにもよるが等倍以上の撮影が可能
実焦点距離が短いため、同じ画角の撮影でも被写界深度が深い
といったところでしょうか。反面、画質に関しては純粋なレンズには敵わないので、その辺りは取捨選択になります。
○魚露目8号
ドアスコープを元にした所謂ワイドコンバージョンレンズ。OM SYSTEM社のTGと組み合わせて使用されることが多い。
単体では結像せず、カメラレンズにて結像させる。ワイコンであるため明るさは落ちづらい。
個人的所感として、背景描写はいまいち。色収差も起きやすい。
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○CCTVレンズ
監視カメラやアクションカメラ等に使用される、小型のイメージセンサー(1インチ~1/4インチセンサー)に対応するレンズのことで、M12マウント(Sマウント)やC(CS)マウントが主流。
単体で結像させることができる。CCTV虫の目レンズはCCTVの空中像を拡大撮影するという方式。
撮影時は常に高倍率撮影になり、露出倍数がかかるため暗い。
使用するレンズにより画角や歪み、色収差は様々。
個人的所感として、遠景解像性能はいまいち。背景描写はまずまず。
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本記事ではCCTVレンズを用いた”CCTV虫の目レンズ”について解説していきます。
CCTV虫の目レンズの構造
簡単にCCTV虫の目レンズの構造をご紹介します。
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上図の通り、CCTVレンズの結像した像は肉眼では捉えることのできない、空中像として存在しています。
この空中像の径は小さく(レンズによって異なり、私の所有するレンズではΦ9mm~Φ3mm程度)、これを拡大系により使用するカメラのイメージセンサーサイズまで拡大撮影していきます。
得られる像は(プリズム等を介さない限り)倒立像になりますので撮影のクセはすごいです。
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CCTV虫の目レンズセットアップ例
CCTV虫の目レンズセットアップのイメージを掴みやすくするため、これまで私が組んだものを例として紹介していきます。
Ⅰ~ⅤはAF撮影可能な虫の目レンズです。
ただし、OLYMPUS(OMsystem)機は開放測距という挙動の関係で各種調整が必要でので後述します。
下記以外にも虫の目レンズの組み方は多様にありますので、後の記事を参考にしながら色々と検討してみて下さい。
尚、V以外は撮影用に形だけ組んだのでCCTVレンズ側の中間リング長は適当です。
Ⅰ.OLYMPUS EM1-MkⅡ+ MC-14 + Custom Ext.tube 16mm +M.Z 60mm + DCR-250
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初めて組んだ虫の目レンズ。
当時はCマウントの方が画質が良いという根拠のない思い込みで、Cマウントを使用。
Ext.tubeを改造することにより、テレコン(MC-14)を本来接続できないレンズへ接続しています。
テレコンは気軽に倍率が伸ばせる反面、画質の劣化が目立ち(本来適応でないレンズへ装着しているせいもあると思います)、早々に次のタイプへと移行しました。
Ⅱ.OLYMPUS EM1-MkⅡ+ Ext.tube 26mm + M.Z 60/2.8 + DCR-250+DCR-250
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DCR-250の重ね付けとExt.tubeにより倍率を稼いでいます。
最大撮影倍率約3.15倍(画幅5.5mm)。この倍率だと使用できるCCTVレンズが限られるのとCCTVレンズのフォーカス調整が難しかったため、次のタイプへと移行しました。
Ⅲ.OLYMPUS EM1-MkⅡ(or OM-1)+ Ext.tube 32mm + M.Z 60/2.8 + MSN-202
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RAYNOX社のMSN-202を使用することで撮影倍率を稼いでいます。
Ext.tubeは倍率確保のためというよりも後述するAF駆動時におけるピント位置調整の意義が強いです。
軽量・コンパクトで使い勝手は良かったのですが、高感度耐性の限界、魚眼CCTVレンズをAFで利用することが困難(ピントのずれが大きい)であったことから次のタイプへと移行しました。
Ⅳ.SONY α7RV(APS-C crop)+ SIGMA DG DN 105/2.8 + MSN-202
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Ⅲ同様、MSN-202を使用することで撮影倍率を稼いでいます。
フルサイズ判で使用するとなると更に撮影倍率を高くする必要があり、無理な高倍率による画質の劣化、露出倍数によって像が暗くなることを回避するためAPS-C判での運用を選択しました。
レンズ側に絞りリングがあり、これにより実絞り駆動での測距が可能なため撮影時のピントのズレはありません。
マイクロフォーサーズよりも高感度耐性が高く、センサー画質は良好です。
ただ、MSN-202と使用レンズの相性が良くないのか、無理な高倍率が祟ったのか、周辺の像が流れやすく、F16まで絞ると像はいくらか安定しますが、今度は回折の影響を受けるという光学的な画質の悪化を避けられず、総合的に見てマイクロフォーサーズ運用の方が画質が良いと感じ、一旦Ⅲに戻りました。
Ⅴ.OM SYSTEM OM-1 + M.ZD 90/3.5 + DCR-250
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レンズ単体での撮影倍率が高く、またマイクロフォーサーズ判ではそれほどの高倍率は必要ないため、DCR-250を使用しています。
S-MACROモードになると開放がF5.0となるため、開放測距でも撮影時のピントズレがM.ZD 60/2.8程ではないため、Ext.tubeを使用せず、カメラ内設定のみで補正することができます。
F11未満で撮影すると霞んだ描写になるため、それ以上の絞りで運用しています。
光学的に無理が少ないため、画質はこれまで組んだ虫の目では一番良好です。
高感度耐性に関してはDxO Purerawを使用する形で割り切っています。
Ext.tubeを使用していないため、虫の目レンズパーツを外すだけでシームレスにレンズ単体への撮影に移行できるため、利便性も高いです。
クローズアップレンズを使用せず、テレコンのみでの運用も可能と考えられるため、今後MC-14を使用して組むことも検討しています。
Ex.OLYMPUS EM1-MkⅡ+ Panasonic Lumix PZ 45-175 + MSN-202
現在、レンズが手元にないため画像は割愛させていただきます。
望遠レンズとMSN-202の組み合わせで撮影倍率を上げているモデルです。
DCR-250、DCR-150を併用することでも可能だと思います。
軽量コンパクトなのですが、望遠レンズ+クローズアップレンズでは拡大系側でのピント調整がほとんどできず、画質もあまり良くなかったため、運用はしませんでした。
Ex.SONY α7RV(APS-C crop)+ Laowa 85/5.6 x2 + MSN-202
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Laowaの二倍レンズとMSN-202の組み合わせで撮影倍率を上げています。
Laowa 85/5.6 は前玉径が小さく、MSN-202と相性が良いかと思ったのですが、SIGMA 100/2.8 で組んだもの同様に周辺の流れが出やすく、あまり満足な結果は得られませんでした。そもそもMFでの運用が避けたかったので、組んでみただけという感じです。
Ex.SONY α7RV + Laowa 25/2.8 x2.5-x5 MSN-202
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Laowa 25/2.8 x2.5-x5 のレンズキャップを改造し、CCTVレンズを接続できるようにしました。
レンズ単体でも高倍率を得ることができ、様々なイメージセンサーフォーマットに対応させることができます。とはいえ、高倍率時は露出倍数がかかることもあり、APS-C判までの運用の方が使い勝手は良いです。
画像ではレンズのフランジバックを伸ばすことで撮影倍率を上げていますが、レンズ単体で倍率を上げる形でも問題ありません。
※OLYMPUS(OMsystem)機でのAF撮影時の調整
CCTV虫の目レンズはCCTVレンズとクローズアップレンズの球面収差により、絞り開放時と絞り駆動時で大きくピント位置がずれます。
これはAF時だけでなく、MF時も同様ですので、もし電磁絞りのレンズでMF撮影をする場合には絞りプレビュー状態でピントを合わせてください。
OLYMPUS(OMsystem)機は絞り開放測距のため、当然撮影前と撮影時ではピント位置が後ろにズレ、所謂後ピンになります。
よってAF撮影を行う際には以下の補正を行う必要があります。
・カメラ内設定”AF微調整”
位相差AF時のAF位置を微調整する項目で、こちらをマイナス調整(前ピン寄り)していきます。組み合わせによってマイナス調整量は変わりますので撮影像を確認しながら行います。
なお、この設定はAF-Cの位相差AF時にしか適用されませんので、撮影の際はAF-C設定にしてください。
※OM-1とEM1MkⅡでは設定画面が異なり、OM-1は全面を一括で調整できるのに対し、EM1MkⅡでは区域が分割されており、調整する場合は区域全面を調整した方が良いです。MkⅢは触ったことがないのでわかりません。
・Ext.tubeの挿入
上記のカメラ内設定でも後ピンを補正できなかった場合はExt.tubeを挿入することで補正することができます。場合によっては複数個必要な場合もあるため、こちらも撮影像を確認しながら長さを調整していきます。