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CCTV虫の目レンズのススメ        ~巻ノ弐~セットアップ実践編~

 本記事シリーズはCCTV虫の目レンズのセットアップについてご紹介していきます。

 本記事は前記事の続きとしてCCTV虫の目レンズのセットアップの方法をご紹介していきます。
 前記事を読んで頂いてからの方がセットアップのイメージをつかみやすいかと思いますので、読んで頂けていない場合は、先に巻ノ壱を読んでいただくことを推奨します。

CCTV虫の目レンズのススメシリーズ

 私自身、光学に関しては素人であるため、用語・知識等間違っている箇所等あると思いますので、ご指摘頂けると幸いです。

 拙い文章ではありますが、お手すきの際に耳でもほじりながら流し読んで頂き、虫の目レンズに少しでも興味を抱いて頂ければ幸いです。

 ご意見・ご質問はTwitterで受け付けております。

※記事中で紹介するパーツに関してはページ最下部にまとめてリンク含めて掲載させていただきます。

※当記事を参考に改造等を行って機材の故障等があった場合、此方は一切の責任を負いませんので自己責任にてお願いします。

拡大系の構築

 CCTVレンズ像をケラれなく撮影するのに必要とされる倍率はセンサーサイズとCCTVレンズによって異なりますが、目安としては以下のようになります。
・マイクロフォーサーズ:約2.3倍~
・APS-C:約3.1倍~
・フルサイズ:約4.6倍~
※フルサイズ換算ではなく、センサーサイズに対しての倍率です。

 この倍率を踏まえた上で拡大系を構築していく必要があります。
 ただし、後述するピント合わせの手法をどうするかにもよりますが、上記の倍率は最低限の倍率として考えてください。

 マイクロフォーサーズ判やAPS-C判を使用するのであれば、拡大系を構築すること自体はそれ程難しくないかと思います。
 特に日頃、超高倍率撮影を嗜んでいる方であればすでに手持ちで賄える場合もありますし、デジタルズームやトリミングを許容できるのあれば、敷居はぐっと下がります。

 拡大系の候補としては以下のものがあげられ、この選択によって後述するピント合わせの手法も変わっていきます。

・Laowa25mm F2.8 x2.5-x5
・中望遠マクロレンズ(インナーフォーカス推奨)
 +高倍率クローズアップレンズ(MSN-202、CM-3500 24x 等)  
  or
 +対物レンズ
  (+エクステンションチューブ)
・望遠レンズ
 +クローズアップレンズ
・リバースレンズ
・対物レンズ

拡大系とCCTVレンズの接続

 拡大系を構築したら、CCTVレンズを接続するためのアダプターを用意する必要があります。
 基本的には各種変換リングを用いてM42径を介してCマウント化していきます。
 事前知識としてM42径はネジピッチが2種類あることを理解しておくと構築を考えやすくなります。

・M42P1.0(42mm径、ネジピッチ1.0mm)
所謂M42スクリューマウントと呼ばれています。
Tマウントと相互に変換することができます。
・M42P0.75(42mm径、ネジピッチ0.75mm)
Tマウント(T2マウント)と同径です。Tマウントは主に望遠鏡に使われるマウントです。
M42P1.0を無理矢理接続することもできますが、変換した方が無難です。

海外通販サイトではどちらもM42と表記されているので、ピッチ表記を確認して購入する必要があります。

・フィルタースレッドがある場合

拡大系にフィルタースレッドがある場合はそれに応じた変換リングを用意していきます。

Cマウント化フローチャート

 上段から推奨順となります。
 パーツは国内・国外からそれぞれ購入することになります。
 図でも注釈をしていますが、M25は中間リングによってはしっかりとハマりません。ただ国内で気軽に手に入りやすく、現状M49以下からでもステップアップせずにCマウント化することができます。
 現在私が使用しているセッティングは最下段のもので”M46 to M42P0.75”の変換リングを使用していますが、現状国内・国外共に該当するリングが見当たらず、再現性がありません。
 再販の予定等はわからないため、M52を介した変換が推奨となります。

M25とCマウントの接続。
ハマることにはハマります。ガタツキはないです。

・MSN-202、CM-3500を使用する場合

 MSN-202やCM-3500はフィルタースレッドを備えていないので、DIYする必要があります。
 用意するものはM42P1.0両メスリングです。
 そのままでは微妙に狭くてハマらないので、少し削ります。

皆さんのご家庭にあるルーター等でサイズ合わせをしながら、片側だけ削っていきます。

 削ってハマるようになったらガッチャンコします。

画像はMSN-505。あまりにテキトーな固定

私はMSN-202と接着剤で固定するという、不可逆的・破壊的な改造を行っています。メリットも一応あり、多少の防水性能が得られるため、虫の目を水中に突っ込んでの撮影がしやすいです。

・Laowa25mm F2.8 x2.5-x5

 レンズキャップを改造し、フィルタースレッドを作成します。

観察が大事

 レンズキャップ裏面の隙間に精密マイナスドライバーを差し込み、分解します。割らないように注意してください。

白くならない接着剤がイイゾ

 分解した内枠とM46両メスリングをガッチャンコします。

塞ぐの忘れてガッチャンコした図

 切り欠け部分が隙間になってしまうので、ガッチャンコする前か後に適当に塞いでください。

違和感

 完成したものを通常のレンズキャップ同様取り付ければM46フィルタースレッドとして利用できます。
 M46用レンズキャップを装着すれば引き続きレンズキャップとして利用できます

※接着剤が完全に乾くまではレンズに取り付けないでください。
 接着剤の気化成分がレンズについてしまう恐れがあります。

・リバースレンズ

 EFマウントやEマウント、Fマウントではリバースレンズ時に保護フィルターを装着するためのアダプターが販売されています。
 EF、EマウントではM58、FマウントではM52のフィルタースレッドを備えていますので、そちらを利用して接続していきます。

その他にもとある利用法が……

※対物レンズを使用した構築に関しては検証ができていないので割愛させていただきます。ちなみに対物レンズを使用してる方々はご自身でアダプターを作成しているようです。

ピント合わせ

 拡大系をCマウント化したところで、今度はCCTV空中像を撮影するためにCCTVレンズの位置を中間リング等にて大まかに拡大系のフォーカス位置へ合わせていきます。
 撮影時のピント合わせについては拡大系もしくはCCTVレンズ側で微調整を行います。

 大まかな調整とは言っても、中間リング長の調整は数mm単位で行う必要があり、虫の目レンズを組む上で肝の部分となります。

左上:Cマウントレンズ用スペーサー、右上端:M12マウント用中間リング
その他:Cマウント用中間リング

 また、CCTVレンズによってもバックフォーカス(back focal distance)の位置が異なっていますので、それを踏まえて設計していくと結果が得られやすいです。

CCTVレンズの焦点距離とバックフォーカス長の関係

 上図の様に焦点距離が長い方がバックフォーカス長も長くなり、中間リングも長くする必要があります。

 ピント合わせの手法は使用する拡大系によっても異なります。
 虫の目レンズは被写界深度が深いと言われていますが、実際マクロ撮影時のシャープなピント面と言うのは薄く、案外シビアなピント合わせが必要になります。どのようにピント合わせを行うかで虫の目レンズ撮影の難易度は大きく変わります。

○拡大系側での調整

 こちらの手法が利用できるのは基本的にフォーカシング可能なマクロレンズを拡大系に使用した場合のみです。

ピント合わせイメージ図

 上図のように拡大系のピント調整機能を用いることで、拡大系フォーカスを適宜CCTVレンズのバックフォーカスの任意の位置に合わせ、CCTVレンズのピント位置を無限遠~WD0cmまで調整することができます。
 こちらの方式であれば、比較的楽にピント調整をすることができ、レンズによってはAFでの撮影も可能です。

 ただし、フォーカス位置によって撮影倍率が変わるため、撮影倍率に余裕のある拡大系を構築していく必要があります。
 また、近接撮影時には見かけ上は高倍率に見えますが、CCTVレンズ像をクロップしていることになるため、画角が狭まってしまう、解像度が下がりやすいといった欠点があります。

 私の場合は基本的に下図のように調整しています。

CCTV無限遠時にケラレがないように調整。
そのぐらいに調整しておかないと、5cm程度離れただけでもケラレが生ずることがある。

○CCTVレンズ側での調整

 Laowa25mm F2.8 x2.5-x5や対物レンズ、望遠レンズ+クローズアップレンズ等の拡大系側でフォーカス調整ができない場合にはこの手法になります。
 
 拡大系側で調整する場合と比べて、手間がかかること、フォーカス域が狭いことが欠点ですが、利点としては拡大系の撮影倍率がギリギリでも運用できること、画角が変わりにくいことが挙げられます。

 こちらの手法の場合、更にいくつかの方法に細分化されます。
 どの手法でも共通することとして、近接撮影をする場合はCCTVレンズを伸ばす形になります。

・M12マウントの繰り出し量を適宜変える。

M12マウントのねじ込み機構を利用。
伸ばすと近接側、縮めると遠景側にピントが
繰り出し量は微調整できる。ワッシャーナットを締めると固定できる。

・Cマウントレンズのフォーカス調整機構を利用する。

 Cマウントレンズは単体である程度フォーカス調整ができる。
 調整機構にはグリースが塗布されているおり、ガタツキなく滑らかに調整できる。
 付属のネジを締めればフォーカス位置の固定もできる。

・M42ヘリコイドを使用する。

 M42ヘリコイドを挟むことでヘリコイドにて調整できる。
 ガタツキなく、調整もスムーズにできるが、組み合わせによっては径が太くなってしまう。
 ヘリコイドの調整幅は超広角レンズであれば12mm-19mm等の小型のもので対応できる。

・Cマウント焦点距離微調整バレルを使用する方法。

 グリース等もなく、ガタツキやすいため、ある程度長さを決めたら側面のロックネジを締めて固定する必要がある。
 調整幅が比較的広く、径も太くなりすぎないため、ロックネジを改造すれば使い勝手は良さそう。

 拡大系側とCCTVレンズ側のどちらでピント合わせを行うにしても、それぞれメリット・デメリットはありますのでそれらを踏まえて併せて調整していくという手法もあります。

※リバースレンズの場合は私自身があまり触ったことがなく、レンズ側でどの程度フォーカス調整ができるかわからないため、上記のどちらに分類されるかはわかりません。

パーツ購入先

 AliExpressという海外通販サイトやAmazonを主に利用してパーツを購入できます。
 AliExpressと同じものをAmazonで扱っている場合もありますが、基本的に中国発送(配送日が1~4週間後のもの)で価格もAliExpressより高いのでそちらで買うメリットはあまり無いかと思います。
 中には下記に記したページより安いものもあると思いますので、飽くまでこれらは参考とし、ご自由なところでご購入ください。

○アダプター系

八仙堂ステップアップリング
現状、M42P1.0に変換できるリングがM52しかないため、場合によってはステップアップリングを使用する必要があります。他の商品でも構いません。
八仙堂ステップダウンリング
”M49 to M28”など特殊な径の物も購入できます。”M62 to M46”など一気にステップダウンさせたい場合もこちらのリングがおすすめです。
アリエク M52 to M42P1.0
アリエク M42P1.0 to C
 BORG ボーグ7527という選択肢もあります。
アリエク M42P0.75 to M42P1.0 
星見屋 T2 to C
 両サイドの穴は何かしらで塞ぐ必要があります。
アリエク M42P1.0 両メス
 MSN-202等を改造する際に使用
AseiwaA M46両メス
 Laowa 25/2.8 x2.5-x5のレンズキャップを改造する際に使用。

○Cマウント・M12マウントアクセサリ

アリエク Cマウント中間リング
 5mmのものを多めに購入しておくと調整しやすいです。
香取製作所 Cマウントスペーサー
アリエク C to M12
アリエク M12マウント中間リング 

八洲光学工業 Cマウント倒立鏡筒
 どうしても倒立像が嫌な人用。中々良い値段します。
 光路長が長くなるため、WDを長く保ちつつ、撮影倍率を稼げるような拡大系が必要です。トリミングやデジタルテレコンを許容できるならそれでも可。

○ピント合わせパーツ

八洲光学工業 Cマウント焦点距離微調整バレル
M42ヘリコイド12-19
M42ヘリコイド17-31 


~巻ノ参~CCTVレンズ選定~に続く


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