他人の麻雀研究に対するコメントについて
先日、とある場所で、麻雀数理研究者としての私に対し、他人の具体的な麻雀研究成果に関する意見を求められたことがあった。
なかなか答えにくい問いである。
その際には、
他人の麻雀研究については、自分が再現していない限りコメントできない。
そして、その人の研究については私は再現していない。
したがって、コメントすることはできない。
とだけ回答した(うーむ、見事な三段論法)。
今回のNOTEではこの返答について少し整理してみようと思う。
まず、上で述べた通り、私は他人の研究についてコメントすることは原則としてないと言ってよい。
なぜなら、「どう評価すればいいか分からないから」である。
この点、自分の研究は自分のしたことなので、何をしたか理解している。
例えば、牌譜解析結果なら「『一定の手法で実測値を調べた』ら、このような事実に関する結果が得られた」ということが分かっている。
また、計算結果・シミュレーション結果であれば、「『こういうモデルを作り、それに基づいて計算した』ら、このような計算結果・シミュレーション結果が得られた」ということが分かっている。
ここで大事なのは「一定の手法」、「こういうモデル」の中身である。
もっと抽象的に言えば、過程である。
結果ではない。
その過程が分からなければ、その手法について評価できない。
そして、手法については「結果の部分」をいくらにらめっこしても分からない。
この点、「データについては『何の結果か』という形で過程について書いてあるではないか」と思うかもしれない。
しかし、研究者から見た場合、そこに書かれている内容だけでは過程に関する情報が全然足りない。
「その足らない情報だけで判断できるか」というのが私の本音である。
自分の本から例を出そう。
サンプルは次の本である。
上記書籍の11ページ・12ページによると、
「先制・中巡・親のピンフドラドラ(リャンメン)テンパイは立直すべき」
という戦術論があり、その根拠として「先制・8巡目・同状況における、立直とダマの局収支と和了率」が書かれている。
具体的な数値も引用しておこう。
リーチ・局収支6800点 和了率57%
ダマ・局収支4100点 和了率73%
この点、データ(局収支と和了率)については15ページに説明がある。
これによると、局収支は和了率などの牌譜解析結果を用いた計算結果であることが分かる。
また、和了率は実測値をそのまま使っていることが分かる。
しかし、分かるのはそれだけである。
研究者としてみた場合、これだけでは全然足らないと言わざるを得ない。
では、どれくらい必要か。
私が「これくらい必要だろう」と思い、その情報を掲載した書籍がある。
『「統計学」のマージャン戦術』と『データで勝つ三人麻雀』である。
正直、これだけでも足りるのかは分からない。
だが、これくらいの過程は最低限必要である(とは判断している)。
というわけで、公開されている情報だけでは研究者としては基本的に何も言えない、ということを述べた。
ただ、例外もある。
一つ目は自分で再現している場合である。
自分でその研究を再現していれば、その研究の過程を理解していることになる。
その場合、他人の研究についても適切な評価を下すことが可能であろう。
だから、この場合は他人の研究に対してコメントすることがある。
この点、私はとつげき東北の研究についてコメントすることが少なくないが、これができるもの凸理論局収支シミュレータや凸理論疑似麻雀シミュレータを自力で再現しているからである。
次に、その人に色々と過程についての質問をぶつけている場合がある。
別に、研究の過程を知るには自分で再現しなくても、その人に質問を片っ端からぶつければよい。
というわけで、その質問(私は「反対尋問」と呼んでいる)の過程を経ている場合は他人の麻雀研究についてもコメントすることがある。
ただ、この場合、相手が私の質問に応じてくださるという条件があるので、かなり限定的だと思う。
具体例としては、nisiさんの研究に対して私がコメントするときがこれにあたるか。
以上、私が他人の麻雀研究成果についてどう考えているのかということを整理してみた。
何かの参考にしていただければ幸いである。
では、今回はこの辺で。
もし気が向いたら、サポートしていただければありがたいです。 なお、サポートしていただいた分は、麻雀研究費用に充てさせていただきます。