角田真吾氏の偉大さ
今回と次回、2回に分けて天鳳の偉大さについて述べる。
といっても、「天鳳というゲームはすごい、みんなやろう」という主張をしたいわけではない。
「角田真吾様のおかげで、天鳳民のおかげで、麻雀研究はここまで成長しました。ありがとうございます」、これが私の主張の要旨である。
前編(今回)は角田真吾について、後編(次回)は天鳳民について述べる。
そういうのが苦手な人は回れ右をしてほしい。
天鳳の管理人、角田真吾氏は偉大である。
何故か。
それは、鳳凰卓という選抜されたフィールドの「総ての牌譜」を「無償」で公開したからである。
何故、これが偉大なことになるのか。
鳳凰卓の牌譜の公開が麻雀戦術研究・麻雀AI研究を進歩させたからである。
これなくして、麻雀シミュレーション研究・麻雀牌譜解析研究・麻雀AI研究も発展していないと言っても過言ではない。
角田真吾氏の英断が麻雀研究を加速させたと言ってもよい。
以下、鳳凰卓の牌譜が公開されなかったらどうなるかを仮定を置いて考えてみる。
まず、角田真吾氏が鳳凰卓の全牌譜を公開せず、天鳳位のみの牌譜(しかも、天鳳位就任前のもので下記URLでしか公開されていないもの)しか公開しなかったならばどうなっていたか。
この場合、公開されている牌譜の絶対数が減ったことであろう。
例えば、私の所持している鳳凰卓の牌譜(クイタン赤アリの東風戦東南戦)は実数約150万試合、約1400万局である。
しかし、天鳳位の牌譜として公開されている分のみに限定すると、鳳凰卓の牌譜は実数約4万試合、約41万局にしかならない。
つまり、鳳凰卓の牌譜がなければ、今ある牌譜の30分の1程度の牌譜しか得られないことになる。
機械学習を使ったアプローチはかなり難しいことになる。
その結果、AI研究はかなりの困難を強いられたことだろう。
ちなみに、大量の牌譜を要する牌譜解析アプローチもかなり苦戦することだろう。
次に、天鳳位の牌譜さえ公開されなかったと仮定する。
こうなるとどうなるか。
麻雀強者に頼んで牌譜をひたすらもらうしかない、ということになる。
とつげき東北は『科学する麻雀』を書く際、下記URLの「『科学する麻雀』についての質疑対応」にあるように、当時の東風荘の強豪から牌譜を集め、その牌譜を用いて牌譜解析を行ったりシミュレータを作ったりした。
しかし、その際に集まった牌譜の数は実数約16000試合(延べ65000試合、実数約10万局(延べ40万局)である。
「牌譜を集める」という作業がいかに大変かが分かる。
というわけで、牌譜を集めるという作業をショートカットさせたつのの功績は偉大である。
あと、「無償」というのも大きい。
仮に、1試合1円だとしても、鳳凰卓の牌譜は全部で約150万試合あるので(秋刀魚を加えれば約200万試合になる)、全牌譜を提供してもらうとなると100万円以上のお金がかかる。
こうなった場合、私は最初から麻雀研究できなかっただろうし、在野の研究者は誰一人麻雀研究できなかったことだろう(一般人が、うまく行くか分からない研究のために初期資本としていきなり100万の大金をポンと出せるだろうか)。
その結果、データの普及自体も大いに損なわれていたであろう。
そういう環境にあれば、私もタダでデータを公開することはなかっただろうから。
角田真吾氏は麻雀研究を加速させたが、もっと言えば、データの普及にも大いに貢献していると言える。
ところで、私は下記書籍にあとがきが掲載しているが、あとがきを起案する場合、謝辞において、必ず角田真吾氏の名前に言及している。
当然、次に出す秋刀魚本でも角田真吾氏への謝辞を明記する予定である。
それは、彼の牌譜を公開するという功績は他の研究者に匹敵すると思っているからである。
今日は、麻雀研究における角田真吾氏の功績について書いてみたくなったので、それについて言及した。
私の牌譜解析を見る際には、角田真吾氏の英断に思いをはせていただければ幸いである。
では。
次回は天鳳民について。
(追記)
なお、角田真吾氏が天鳳のブランドを考えて牌譜を無償で公開したとしても私の彼への感謝の念は消えることはない。
その動機がどうであれ、つのの牌譜の無償公開によって麻雀研究が加速したことは事実であるから。
もし気が向いたら、サポートしていただければありがたいです。 なお、サポートしていただいた分は、麻雀研究費用に充てさせていただきます。