見出し画像

秋刀魚本出版前の絶望的な思い

 福地先生が『データで勝つ三人麻雀』の宣伝記事を書いている。

 しかし、なんだな。
 上記ブログでは、

(以下、上記ブログより引用)
 全ドラとか、東天紅とか、麻雀格闘倶楽部についてもシミュレーションしてみるかって案もあったのだが、それじゃなくても内容爆発なので、それは止めた。
(引用終了)

と書いてあるが、そもそもこの本で「シミュレーションを用いたデータ」は存在しない。
 私が出したデータは、

局収支(計算結果)
和了率など計算のパラメータとなるる数値(統計)
牌譜解析結果から得られた牌の危険度
(統計)

であって、凸やnisiさんが作ったような局変化モデルを考案・実現しているわけではない。
「この本に記載したものはシミュレーション結果である」などと言ったら、とつげき東北やnisiさんなどの麻雀研究者から「虚偽広告だ」、「シミュレーションをなめるな」などと突っ込みを食らうこと必至である。
「編者として名を連ねる福地先生ですら、この差異(牌譜解析・計算・シミュレーションの違い)が理解・認識していないのか」と思うと、絶望的な気分になる。


 さて、福地先生によると、

(以下、上記ブログより引用)
でも、基礎データが整備されるって、その業界にとってすごい前進だよな。
基礎データすら不明って、分野として恥ずかしくね?って思うわ。
(引用)

と述べているが、この意見はこの本のデータに(麻雀業界にとって)公共的価値があるという話であって、プレーヤーにとって価値があるかどうかとは関係ない。
 その辺、福地先生は取り違えているのではないか、公共的価値に目を向けすぎではないか、と思う。
 つか、福地先生ってそういうことに価値を見出す人でしたっけ。
 なんか違うような。


 さて、せっかくなので、私から見たこの本の価値を述べておこうと思う。

 まず、この本は研究書であって、戦術書ではない。
 もちろん、

「先制リャンメン聴牌はリーチせよ」
「立直の放銃素点の半分程度の打点があるならば、追いかけリャンメンリーチをかけよ」
「立直の放銃素点と同程度の打点があるならば、追いかけ愚形待ちリーチ立直をかけよ」
「先制リーチをかけられたら原則としてベタオリ」


みたいなことは書いてあるが、私の感覚ではこれらの戦術論は全部おまけに近い。
 以前、私は『「統計学」のマージャン戦術』の評価について、

 新しい戦術は何もないが、根拠となるデータを知りたい人には役に立つ

という趣旨のことを述べたらしいが、この本も大差ない。
 秋刀魚打ちが妥当と考えている戦術と本書の戦術はそれほど差はないと思われる。
 つか、私が諸々の計算などをして思ったことは、「煮詰まった場面においては秋刀魚も四麻も大差ない」であった。
 というわけで、新しい戦術にしか興味がない人、戦術の根拠に興味がない人にとって、この本は無用の長物であろう。

 買ってから「騙された~」と言って、私を批判してくる人間を出現させないためにもこの点は強調しておきたい。


 あと、福地先生は少し前の記事(URLは以下)で

(以下、上記URLより引用)
 10年以上通用する本になるんじゃないかと。
(引用終了)

と述べている。
 しかし、この本がベストセラーになることはないだろう。
 ベストセラーになるのは、この本ではなく「この本からデータの部分を全部消しさった本」である。
 
福地先生か、平澤か、ウザクか、ネマタか、あるいはとつげき東北か、誰かが私の本の内容を理解し、データの部分を消しさって、戦術部分だけを抽出して(わかりやすくなった)本を書けば、その瞬間にその本がベストセラーになり、私の本の価値は麻雀界にとってゼロになる。
『データで勝つ三人麻雀』の価値はその程度のものだと考えている。

 ちなみに、「ならば私が書けばいいではないか」と言うかもしれないが、「麻雀数理研究会の許可が下りないので、私は出版できないだろう」と思う。
 よって、麻雀の本を書いて成りあがってやろうと思う、秋刀魚の実績がある人はぜひご検討いただきたい。
 ベストセラー本を作ることができますぞ。


 最後にちょっとだけ。
 私がこんな研究書を書いたのは『科学する麻雀』において書かれている、次のような理想の世界を夢見たからである。

(以下、『科学する麻雀』のあとがきより引用、強調は私の手による)
 本書を読まずして麻雀は語れない、そんな日がいつか来るだろう。それだけの内容にできたと自負している。他の麻雀本や雑誌記事への引用も歓迎する。本書はあくまで入門編という位置づけである。今後この世界に、数理科学のスキルを身に付けたポストとつげき東北がたくさん現れ、筆者よりもはるかに高度で優れた理論的研究をこなして、理論同士の競争によって、「麻雀学」が知的に発展していくことを願ってやまない。
(引用終了)

『データで勝つ三人麻雀』もこの理想論の世界を夢見て起案されたものである。
 しかし、『科学する麻雀』出版後、現状はこの理想論にどれだけ近づいたであろうか?
 詳細は、今後、麻雀数理研究会から出版される『科学する麻雀2』で触れるだろうと思うが、15年前と現在とで大差ないように思われる。
 増えたのは量産型デジタルばかり。
 そう思うと、この本を出しても私が夢見た世界は全く達成されないこととなるだろう。


 福地さんの最初の誤解、及び、今後の展開を思うと、出版前から絶望的な思いになる。
 少しでも私の予測がいい方向に裏切られますように。

 では、今回はこの辺で。

もし気が向いたら、サポートしていただければありがたいです。 なお、サポートしていただいた分は、麻雀研究費用に充てさせていただきます。